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サンドボックス ガーデン  作者: さんまぐ
第1章 南の「時のタマゴ」
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赤い口紅。

43回目の時間。

「行ってらっしゃい」

「楽しんでおいで」

リーンのお父さんとお母さんの声がして今回も「行ってきます」と言ってリーンが出てきた。

僕も随分とこの時間が気に入ってしまったようだ。


「またここ?」

リーンが微笑みながら言う。


「本当、僕自身もおどろいているよ。さっきも伝えたけれど気に入ってしまったみたいだ」

「うれしいわ。ありがとう」


今回も一直線に広場に向かい長椅子に座る。


「キョロの力が片道だけじゃなくて往復も出来ればいいのにね」

「往復?」


「そう、明日から城を目指すんだけど、夜になったり辛いことがあったらキョロはここに戻ってくるの。そして私と沢山話をするの。キョロは私の記憶を持って跳んでくれるから私は離れていてもずっと話が出来るの。そして一緒の時間が終わったらキョロは元居た時間に跳ぶの」

いつの日かトキタマならやれそうな気がするけど、今の僕にはその力はない。


「そんな日が来たらいいね」

そう、そうすれば不死になってしまった僕でもいつでも皆に会えるのだから。きっと寂しくはない。


話すことも少なくなってきたのか、リーンはただ僕に寄りかかっている。

僕もリーンの温もりを感じながら時間を過ごしていた。


「もう、いい時間だよ」

「やだ、もう1回」

…何をすれば終わるんだ?

さっきの質問がリーンの目的じゃないのかな?

まだリーンは納得してくれていないのか?


「トキタマー」

「はいはーい」


44回目の時間。

僕もほとほとこの場面が好きなようで、他の場面は思いつかなかった。

「そんなに気に入ってくれたの?」

「うん、出てくる時の、家の眩しさで最初は見えないけど、徐々に見えてきて月明かりに光るリーンはとても綺麗だよ」


「ありがとう」

また広場に向けて歩き始める。


「ねえ?」

「何?」


「あと何回こうして歩いてくれる?」

リーンが僕に聞いてきた。

リーンが後悔の無いように何回でもと伝えた。


「そうしたら明日は来ないね」

冗談だと思いたいが何回も跳んでいる以上、冗談にはとても思えない。


「どうしたらリーンは納得できるの?」

「納得は無理じゃないかな?」


「そうだね。ごめんね」

「私は割り切る事しか出来ないと思う」


僕はこの時間の中でリーンが割り切れる為の事を考えようと思った。


他愛のない昔話、変わらぬ村の景色、綺麗に着飾ったリーン。

僕の眼に映るものからリーンが割り切れる事は何だろう?

僕にはとても難しく思った。


今はまた広場の長椅子に2人で座っている。

しばらくするとリーンが時間切れと僕に言う。

もう一回跳ぶ事を伝える。


「次はもう少し前に跳べる?」

「多分、出来るよ。でもどのくらい?」

「キョロが家を出るあたりかな?」


「わかった」

たったその時間で何が変わるのか僕にはわからなかったけど、リーンが求めた時間に跳ぼう。



45回目の時間。

次に僕が跳べたのは僕が家を出て少しした所だった。

この時間でリーンは許してくれるかな?

「お父さん、ちゃんとお姉さんに付き合ってあげてくださいね」

トキタマが話しかけてくる。

「僕に力を使わせたいだけの癖に」

トキタマが「ふふふ」と笑って飛んでいく。


さて、リーンの家の前だ、ノックからの流れは殆ど変わらない。

リーンのお父さんが僕に家に入る?と言った流れが無くなっていて代わりに外に出てきた。

ここまで流れが変わるとは思っていなかった僕は面食らった。


「キヨロス君。娘が待たせてしまっていて本当にすまないね。もう少しかかりそうだからその間、私と話をしてくれないかな?」

ここまできて断る図太さを僕は持っていない。

それにリーンのお父さんは昔からよくしてくれている人だから断る理由はない。


「はい」


「君の決意、君が私たちの為に選択してくれたことを1人の人間としても、リーンの父親としても本当に感謝しているよ。ありがとう」


「いえ、僕と僕のアーティファクトはその為にありますから」


「君は強いな。そしてたった数日で大きくなったね」

「まだまだです」


「1つ、お願いをしたいのだが聞いてくれないかな?」

「何ですか?」


「娘を、リーンをあまり悲しませないで欲しい。

いや、別に君が何かをしている訳ではないのは知っている。

ただ、男の選択は時に女性には理解不能で悲しませてしまうと言うこと。

そしてわかっている事やわかった事、わかってしまった事からは目を背けないで真摯に向き合ってあげてくれ」


「はい」としか言えなかった。

リーンのお父さんも不死の呪いは知らないのだ、単純に娘を思えばこう言う話にもなるのかもしれない。

リーンは僕に帰ってくるように促してくれている。

それに向き合ってきちんと帰ってくるべきなのだろう。


「勿論、君も私の息子みたいなものだ、君の幸せも私は願っているんだよ」

「はい」


「それにしても済まないね。急に準備が増えたらしい」

「いえ」

多分リーンのお父さんは言いたいことを言ったのだろう、口数が減った気がした。


「所で、今は何回目だい?」

「え!?」

もう、言いたいことは言ったと思っていたので油断した。

僕は慌ててしまいむせた。


「君のアーティファクトの力はリーンから聞いているよ。

それに今さっき、それまで泣きそうな顔で慌てて準備をしていたリーンが急に嬉しそうな顔をしていたらピンとくる。

別にリーンは隠し事が苦手なのではない。

私はリーンの親だからね。少しはわかるんだよ」


「えっと…」


「ああ、言わないでいいよ。

この時間で起きていることは2人の秘密にしておきなさい。

君が1人でこの時間をやり直しているのではなくて、リーンも一緒にこの時間を楽しんでいる。それが嬉しいんだよ。ナック君には少しだけ申し訳ないけどね」


「はい」


「娘を…リーンをよろしく頼むよ。

さて…もういいかな?」

そう言うとリーンのお父さんは家に入っていった。


「おーい、もういいかな?父さんは頑張って時間稼いだよ」


「もう、そう言うこと言わないの」

「恥ずかしいからやめてよ」


「父さん、これ以上一緒にいると、これからリーンを独り占めするキヨロス君にヤキモチ妬いちゃうから早くしてくれよ」


「「やめて!」」

またハモっている。


そして、しばらくしたらリーンが出てきた。

「お待たせ」

「こちらこそごめん。僕が跳んだタイミングが予定より少し後だった」


今回のリーンも綺麗だと思った。

何処が違うのだろう?

つい、僕は先程までのリーンとの違いを見たくて顔をジロジロと見てしまった、


「だから恥ずかしいから」

「ごめんね」


今回のリーンはお化粧が先程までとは変わっていて大人の化粧という感じだった。

濃くはないが、幼くもない。

リーンには少し不向きに感じるが、決して悪くはない。


「化粧を変えたんだね」

「どうかな?あまりジロジロ見ないで欲しいけど、似合っているかな?」


「さっきのも似合っていたけど今のも似合っているよ」

「良かった。跳んできてすぐさまお母さんにお化粧変える!って言ったから大変だったのだけど、キョロが褒めてくれたから報われたかな?」


「特に口紅の赤が綺麗で目立つね」

「うん、お母さんにはまだ早いって言われたけど綺麗だったからつけさせてもらったの」


そう言えば行商人がくると母さんも見に行っていたけれど、化粧品を買っていたのかも知れない。


不死の呪いはあるが、二種類の化粧をしたリーンが見られた事は役得かも知れない。


「どうしたの?」

リーンが聞いてきた。


「いや、どっちのリーンも見られて良かったなと思ってさ」

「もう、恥ずかしいなぁ」

またリーンが頬を染めた。

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