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サンドボックス ガーデン  作者: さんまぐ
第1章 南の「時のタマゴ」
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月明かりの下で君の微笑みを。

41回目の時間。

僕が跳んだのはリーンの家の前でリーンを待つところだった。

トキタマはこの時間に来ると同時にまた飛んで離れてくれた。


今回も少しして扉が開いた。


「行ってらっしゃい」

「楽しんでおいで」


リーンのお父さんとお母さんの声がして今回も「行ってきます」と言ってリーンが出てきた。


「お待たせ。お父さんたちに2回目だって気づかれないようにするの大変だったわよ」

リーンが笑いながら僕に言う。


「リーン、綺麗だよ。似合っているよ」

「もう、恥ずかしいから何回も言わないでよ」


「ごめん、家から出てきたとき、最初は家明かりで見えないのだけど徐々に見えてくるリーンが凄く綺麗だったから、また見たくてこのタイミングに跳んだんだ。

僕は未熟だから着地の正確なタイミングがつかめなくて心配だったけど、無事にリーンが家から出てきてくれる所が見られて良かった」

僕は恥ずかしげもなくそう言ってしまった。


「ありがとう」

リーンが泣きそうになる。


「ああ、ごめん。泣くとまたやり直しになっちゃうね」

「本当だよ。キョロも何回も跳ぶと疲れちゃうわよ」


「僕は平気だし、トキタマも喜んで跳ぶから問題はないかな。

リーンこそ疲れちゃうんじゃない?」

「私は平気、何度でも何度でも平気。今がずっと続いてもいいくらいよ。」


「お腹すいてるのに?」

「それはそれよ」


今度は南の方に歩く、この時間なら誰かしら風呂に行っていて会うかと思ったが不思議と誰にも会わなかった。


「ねえ、キョロ」

「何?」


「私がお風呂に入っていたの知っていたでしょ?」

…マズい。さっきの話でバレていたか…。


「顔に知ってますって書いてあるわよ。覗いたの?」


僕は覚悟を決めて夕方のやり取りを柔らかく伝えた。


「そう、ナックがね。ナックも同じことを考えていたのか…」

「同じこと?」


「キョロが帰ってきたいと思えるように楽しい思い出を作るって事」

そうか、リーンがこの姿を僕に見せてくれたのはそういう意味があったのか。


「で、その時の私はキョロに何か言っていた?」


僕はあの時のリーンが「でも、ナックが言う通り、お風呂を覗くのが楽しくて、またバカしたくて帰ってきてくれるなら我慢する」と言ってくれたことを伝えた。


「私、そんなに恥ずかしいことを言っていたの?」

リーンが照れて顔を赤くしている。


「その後、きっと私なら「今の無し」って言ったでしょ?」

「うん、そう言われたよ」


この話が終わるとリーンが泣き始めてしまった。


「やっぱり行かないでほしい。3人で一緒に居たい」

楽しさから寂しさを感じてリーンがまた泣いてしまった。

リーンは胸にしがみついて泣いている。


僕は何が出来る訳でもなく、ただ、頭に手を添えてセットされた髪型が台無しにならないように泣き止むのを待った。


「キョロ、もう一回跳んで。今度こそちゃんと私の目的を果たすから!」

泣き止んだリーンがもう一回跳ぶと言い出した。


…今晩は長くなりそうだ。

全部受け止めると決めたからリーンの気の済むまで跳ぼう。


「トキタマ!」

「はいはーい」



42回目の時間。

「行ってらっしゃい」

「楽しんでおいで」


リーンのお父さんとお母さんの声がして今回も「行ってきます」と言ってリーンが出てきた。


「またここ?」

リーンが笑いながら僕に言う。


「やっぱり綺麗だよ。似合ってる」


「また泣かせる気?また泣くと跳んでやり直しにするわよ」


「いいよ、何度でも跳ぶよ」

「え?」


「それでリーンが納得してくれるならそれでいいよ」

「今は駄目、泣いちゃうから。泣いたらやり直しになっちゃうから」


リーンが必死になって涙を我慢している。

「じゃあ、歩こう」

今回は僕がリーンを誘う。


「何処に行きたいの?」

「月が綺麗に見えて私たちの顔が良く見えるところかな」


「そうなると広場かな?」

「じゃあ広場に行きましょう」


一緒に広場まで向かう。

話題は広場で起きた思い出話だ。


あっという間に広場に着く。

広場に着くと、リーンが月を背にして僕の方を向く。


「キョロ」

「なに?」


「私綺麗?」

「うん、凄く綺麗だよ。よく似合っている。」

僕は思ったままに返事をした。


「ありがとう」

リーンも素直に喜んでくれている。


「ねえ、キョロ。私可愛い?」

「え?」


「どう?可愛い?」

「とても可愛いよ」


「本当?」

「本当だよ」


「お化粧した顔はどう?」

「凄く綺麗だよ、大人の女の人みたいだ。いつものリーンと別人に見えて驚いてしまうよ」


「似合ってないかな?」

「そんな事ないよ。特別な感じがして、月の光も相まって凄く似合っていて綺麗だよ」


「…」

「…」


リーンが黙り込んでしまった。

今回は泣く気配はないが、何かを考えこんでいる様子だ。


「キョロはこの格好の私ををまた見たい?」

「うん、とても綺麗だからまた見たいよ」

考えこんだリーンの質問は「また見たい」だった。これがリーンの目的。

確かに泣いて化粧が崩れてしまっていては出来ない質問だ。


「じゃあ、キョロが帰ってくるまで誰にも見せないから、ちゃんと帰ってきてくれる?」

「うん、帰ってくるよ」


「本当に?約束してくれる?」

「約束するよ」


「待っていていい?」

「大丈夫、15日くらいで帰ってくるよ」


「うん、それはわかっているの。でも帰ってきた後にキョロが居なくなりそうな気がするの」

これは参った、リーンも十分に勘が鋭い気がする。

村長から何も聞いていないと思うので余計な事は言わずに「大丈夫だよ。僕の帰る村はここなんだからさ」と言った。


「信じるからね」

そう言ってリーンが抱き着いてきた。

そしてまた泣いた。


「今回は言い切った後の涙だから大丈夫」

「そう、良かった。ありがとう」


「え?」

「準備してくれたこととか色々なことにありがとう」


「ううん、どういたしまして。こちらこそありがとう。」


広場の長いすに2人で座る。リーンが寂し気に寄り添ってくる。

「どの道順で城に向かうの?」

「その道は安全なの?」

「どうしてその道なの?」

そんな事を心配したリーンは僕に何べんも聞いてくる。

そうしているうちに夜も更けてきた。


「さあ、そろそろ帰ろうか?」

僕がリーンに言う。


「やだ、もう一回」


「はいはーい!」

呼んでも居ないのにトキタマが飛んできた


「トキタマ!」

「はいはーい」

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