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サンドボックス ガーデン  作者: さんまぐ
第1章 南の「時のタマゴ」
36/307

悪いことは出来ません。

35回目の時間。

僕が戻ってきた事を直感で悟ったナックに詰め寄られた。

なんでわかったのかと聞くと

「俺が記憶を連れて行かないでいいなんて言うはずがない。そしてお前の呆れた顔は全てを知った顔だ。わからないはずがない」

と豪語された。


「何回目だ?」

「え?2回目だよ…」


「嘘だな、キョロの性格から一度は約束を守って俺を連れてくるはずだ。それをしなかったと言うことはおそらくは3回目だと言うことだ」


何という洞察力。

ナックは本気になるとこんなにも手ごわい相手なのか?


「キョロ!お前よくも!!よくも俺の記憶を連れてこなかったな!!」

ナックが涙を浮かべて詰め寄ってくる。


「泣くほどなの!!?」

エロスへの執念に恐怖を感じた僕は諦めてナックの後をついて行った。


今度のリーンは湯船に浮かんで器用にクルクルと仰向けからうつ伏せ、うつ伏せから仰向けにと回っている。


「おぉ…おおぉ…」

ナックは感動のあまり声が出てしまっている。

無意識だろうが、立ち上がってしまっている。


「ナック、そんなに声を出して立つと…」

僕がナックにそう言った時


「何この声?熊!?」

リーンが声に気付いてしまった。


「ナック!?何やってんの!!」

リーンが声の先に見えたナックに向かってそう言っている。

幸い、リーンからは僕が見えていないらしく、ナックに対して怒っている。

このまま放っておいてもいい気がするが…

…また跳ばないと怒られるだろうな。


「…トキタマ」

「はいはーい」


コイツ、ノリノリだな。


36回目の時間。

「おせーよ!!」

戻って早々にナックに怒られた。

「もう少しでリーンの投石器から発射された石が頭に当たる所だったんだぞ!」


当たれば良かったのに。


「いやー、いいもの見させて貰ったよ。ありがとなキョロ」

発言がなんとも言えないので返事に困る。


「でも、確かにいくら良くてもずっとアレは飽きるよなー」


「あ、いや。今のところ毎回違…」

あ、言わなければここで済んだのか?


「毎回違うぅぅっ!?」

ナックの顔が怖い。


「何で!どうして!?」


僕は歩いた歩数やその場所までの積み重ねで状況が変わる事を説明した。


「と言うことは、今の会話があるから今回もまた違うって言うのか!!?」


「可能性だけどね、だから村を守る時は兵隊の動きが毎回違っていて大変だったんだ」


「そんなことはどうでもいい!」


どうでも良くはない。

僕が皆を無傷で助けるためにどれだけ大変な思いをしたと思って居るのだろうか?


「ふふふ…そうか。毎回違うのか…」

ナックがまたロクでもない事を思いついた顔をしている。


4回目のリーンはこちらに背を向ける格好で頭を洗っていた。


普段、背中も殆ど見ないのだからナックはもう少し喜んでもいいと思うのだが、今までの刺激になれてしまったのか、もういいやって顔をしている。

ナックが言葉を発しようとした時、


「誰?」

リーンが反応を示したので僕は慌てて跳んだ。


37回目の時間。

今のはおかしかった。

明らかにリーンは気を張っていた。


何かが変だ…

「くそー、今のはあんまりだったな。さあもう一回行こうぜ!」

ナックにはこの違和感がわからないのか?


「ナック、もう辞めないか?何かが変だ」

「何怖気付いてんだよ。さっきのは行くまでの話が長すぎただけだろ?すぐに行けば、また浮いたりしているよ」


違和感程度ではナックは諦めないし、諦めさせる事は出来ない。

僕は渋々付いて行くことにした。


「くそ、何だこりゃあ?」

ナックが毒づく。


今回のリーンはさっきみたいに背中をこちらに向けて髪を洗っては居なかったが、今回は湯船に体を丸めて深く身を沈め用心深そうに周りを伺っている。


「少し待てばまたのんびりするかも知れないから待つか」

そんなナックを見てトキタマが「僕は枝に止まって待ってます」と飛んで行った。


その羽ばたきでリーンに気付かれてしまった。

何だこの警戒心は?


「トキタマ!」

「はいはーい♪」


38回目の時間。

「バカドリーっ!お前何やってんだよ!!」

「ごめんなさーい」

トキタマが謝るが悪いだなんて思っていない。


「キョロ、今のはなんだったんだ?お前、リーンの記憶も連れて行っているのか!?」

ナックに詰め寄られた。

僕の方こそ何が何だかわからない。


「トキタマ、僕はリーンの記憶を連れて跳んでいるのか?」

「お父さんが連れているのはお友達のこの人だけですよ」


トキタマがそう答える。


「じゃあなんでだ!?たまたまか、たまたまなのか?」

ナックが苛立っている。


「キョロ、もう一回!もう一回だ!もう一回行こう!!」

ナックはいい加減諦めてもいいと思うのだけどなぁ。


もうすぐリーンの所だ。

後ろを離れて歩く僕に、ナックが「試そう」と言い出した。

「何を?」と返す僕にナックが「歩き順だよ歩き順」と言う。


「今まで俺が前だったから今度はお前が前になれば、またリーンもリラックスして風呂に入るかも知れないだろ?」


「それは嫌だ!」

「今更何を言うんだよ!」

僕とナックは屈んだまま横並びになってひそひそ声で言い合いになる。


「僕はナックが連れてきたからここに居るのであって、僕自身が来たくて来ている訳じゃない」

「お前、俺の記憶を置き去りにして、お前の方が二回も多くリーンを見たんだろ!俺だってリラックスしたリーンをだな!」



「へぇ…リラックスした何を?」


前から声が聴こえて僕の背筋は凍った。

「だからリラックスしたリーンの湯浴み姿をだ…な…?」


前を向くと、数歩先に足が見えるのだ…

程よく引き締まった綺麗な足、僕やナックのように傷だらけではない女性の足。


恐る恐る顔を上げる。

そこにはタオルを巻いたリーンが鬼のような笑顔で立っている。

笑顔には見えなくはないが、口元は引きつっている。

とても怖い笑顔というのがピッタリだと思う。


「リーン…」

「リーンさん、年頃の娘さんがそんなはしたない格好で…」

ナックが余計な事を言っている。


「御心配どうもありがとう。でもね。どんなに肌を隠してもまた跳ばれたら意味ないからもういいの」


右手には「万能の柄」で作った乗馬用の鞭がヒュンヒュンと音を立てている。


「キ…キキキ…キョロ?お前、やっぱりリーンの記憶も連れて跳んでいるんじゃないのか?」

「僕は何もしていない。トキタマだってそんな事はしていないって言っていただろう?」


「そうね。キョロは私を連れて跳んではいないわね」


バシッ…バシッ…っとリーンの鞭が音を立てる。

この音が僕の恐怖を駆り立てる。


「キョロ、跳んでくれ!俺の記憶を連れて跳んでくれ!!」

ナックが限界になったのか叫び始める、


「跳べば?次会った時は鞭でぶつからね」

リーンが何か恐ろしい事を言い出す。


「リーン、ごめんなさい!トキタマ…」

「はーい」

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