表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サンドボックス ガーデン  作者: さんまぐ
第1章 南の「時のタマゴ」
35/307

ナックの思い出作り。

別れてしばらくすると家にナックがやってきた。

思い切り走ってきたようで、かなり息を切らしている。


「お前、今大丈夫か!?」

「うん…別に、用意は済ましたから夕飯までの時間と夜にリーンに会う以外は時間あるよ」


「よしわかった!じゃあこい!!」

物凄い剣幕だ。

これは何だろう?

僕は殴られるのか?


まあ、これもナックとの思い出の1つだ、受け入れよう。


ナックは南の山側に向かって歩く。

この時間は人なんか来ない場所だ…


ああ、やはり殴られるのか…

そう思った時にナックが恐ろしく小声で「物音を立てるな、慎重に歩け」と言い出した。


まさかもう兵隊がいるのか?

この前の襲撃の時には気付かなかった場所だ。

しまった、剣は家に置いてきてしまった。

一度跳ぶか?


「ナック、剣を置いてきてしまった…取りに戻りたい。ダメなら跳んで戻ってくる」

「バカ、武器なんて邪魔なだけだ」


確かにナックを見ると、肌身離さず持っている「大地の槍斧」を持っていないことに気づく。ますます訳がわからない。


少し進むと、確かに人の気配がする。

トキタマに確認をするとアーティファクトの反応があると言う。


どういうことだ?

心なしかトキタマからは緊張感はなく、笑っているような感じがする。


「集中しろ!一瞬のミスが命取りだ!」

ナックが怖い顔をしながら小声でそう言ってきた。


もう、訳がわからない。

僕はナックの言葉に従って後ろをついて行く事にした。



……

………


僕は呆れてモノが言えなかった。

リーンが湯浴みをしていたのだった。

この季節は暖かいし、お湯を沸かすのも手間なので水浴びの方が主流なのだが、リーンは「万能の柄」で松明の火を使ったのか器用にお湯を作ったらしい。


お湯を張った湯船でリーンが伸びをしている。

普段、湯浴みの時間は人に見られたくない思いからみんな夜に行う。

もう少し遅い時間に男の人、それが終わると、男性陣の最後と思われる人が湯船の水を抜いて新しい湯や水を張る。

夕飯の片付けが終わった頃に女の人が湯浴びや水浴びを行いにくる。

これが村の習慣で、今みたいな中途半端な時間にお風呂を使う事は珍しい。


おそらくリーンは夜に僕と会うから今風呂に入っているのだろう。

僕達がいる事に気付いていないリーンは無防備に湯船に浸かっている。


「ナック…まさか…」

ナックが僕の方を向いて真顔で

「話しかけんな!話は後だ!」

と言ってきた。


…本当にコレのために僕は呼び出されたのか…


ナックが視線をリーンから外さないままに僕に向かって言い始めた。

「お前、帰ってこいよな。なんかもう帰ってこない感じがしてさ…。こう言う楽しい事とかあるのを覚えていれば全部片付いた時に帰ってきたくなるだろ?また一緒にこうやって覗こうぜ?」


どこまでが本心かはわからないが、僕のためにナックなりの励ましをしてくれているんだろうと思いたい。




…思いたい。

ナックがハアハアとうるさくて、本心はリーンの裸を見る事なのでは無いかと僕は疑ってしまう。


「ナック、リーンに悪いよ。そろそろ戻ろう…」

返事がない。


「ナック?」

僕はもう一度声をかける。


「お前はそれで良いのか!!もっとここに居たい、もっと見たいとお前は思わないのか!?なんでお前はそんなに余裕があるんだ!?どうかしちまったのかよ!!」

ナックは頭に血が上ってしまったのか歯止めがかからないで興奮している。


「声、声が大きいよ!!」



「誰!?」

リーンに気付かれた。

我に返ったナックが僕を見る。

「跳べキョロ!逃げるんだ!!俺を連れて跳ぶんだ!キョロー!!」


名前を叫ばないでほしい。

リーンが「え?ナック?キョロ?」とか言っている。


ひとまず跳ぼう。

こんな情けない理由で跳ぶなんて…

「トキタマ…」

「はいはーい!跳ぶよー」


34回目の時間。(34回目)

こんな事にアーティファクトを使うなんてとても思わなかった。

僕が戻ったのはナックが迎えに来てからリーンの所に向かうまでの間だった、一応武士の情けと言うか約束だったのでナックの記憶も連れてきた。


「助かった!ありがとうなキョロ!」

「こんな事に僕の力を使うなんて…」


「何やってんだキョロ?」

「え?ナックこそ何やってんの?」


「2回目だよ2回目!」

ナックが当たり前のことと言う顔で僕を見ている。


「え?また行くの?」

僕は呆れながら前を歩くナックを見た。


「当たり前だろ?お前の力でチャラになったんだぜ!

そう!これは2回目なんかではない!むしろ1回目だ!!」

ナックは自分で2回目と言った事を捻じ曲げて1回目とまで言い出した。


呆れて何も言えない僕にナックがなよなよと縋り付いてくる。

「頼むよキョロー、俺はお前との楽しい時間を共有する事でお前が帰ってきたくなるようにだなー」


どちらが本心かわからないが、そう言われると無碍にできなくなる。


仕方なく付いていく。

到着までの間にナックと話した関係だろう。

今回のリーンは湯船に浮いていた。


ナックには学習能力が無いのだろうか?

今回も興奮したナックの息遣いをイノシシか何かと勘違いしたリーンに見つかった。

もう、嫌だったのでナックの記憶は置き去りにしてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ