準備と誤算。
母さんを落ち着かせている父さんがこちらを見た。
「キヨロス、私も村の守りを固める準備をしたい。ここは任せていいか?家の準備を母さんと始めてくれ」
「わかったよ父さん」
では行ってくるとパンを3個持って父さんは出かけた。
「母さん、少し落ち着いた?」
「ええ、でも本当にあなたがまた戦うの?怖くないの?みんなの為に無理なんてすることないのよ?村の人は誰もあなたを悪く言わないわよ」
まだ落ち着いてないな。
「怖いけどやらなきゃ。僕はこのアーティファクトで村の皆を幸せにしたいんだ」
そうだ、僕がみんなを守るんだ。
「母さん、朝ご飯を食べたら準備をしよう」
「ええ、そうね。わかったわ」
しばらくするとリーンとナックが来た。
事情はお父さんたち経由で聞いたそうだ。
「戦うって聞いたぞ」
「うん」
「キョロ、あなたそれを見越していたの?」
「フードの男を逃がした時から嫌な予感はしていたんだよね」
「それでアーティファクトを試したのかよ…」
「それもあるけど、それだけじゃないんだけどね」
「出来るだけ戦うからさ。大丈夫とか安心しては言えないけど、僕頑張るからさ」
「俺も戦うぜ!」
「私も!その為に練習したんだから」
「2人ともありがとう。もしもの時があるから万一に備えて逃げ出す準備もしておいてね」
「お前がそんなに弱気でどうするんだよ」
「この前みたいにうまく行くわよ!」
「そうだね。頑張るよ」
納得すると2人は帰って行った。
「もしもの時はこの2人に頼る事になると思う。そのための準備はしてきたつもりだ。後はフードの男が現れてからだ」
2人と入れ替えで父さんが帰ってきた。
今日の準備は切り上げて、ご飯にしてもらおう。
父さんと母さんはあまり村の話をしなくなった。
あくまで僕の日常が壊れないように気を使ってくれているみたいだ。
4日目
夜明け前
「お父さん!起きてください!起きてください!!」
トキタマがうるさく僕を起こす。
「どうしたのトキタマ?」
「敵です。敵が来ましたよ!!」
寝ぼけた頭に一気に血が巡る。
「どうして!!?まだ4日目だ、後4日あるんじゃないのか?」
「僕にはわかりません。でも沢山のアーティファクトが村の周りに集まっています」
…集まっている?
「トキタマ、非常事態だから簡単に聞くけど、どこにどれだけ居るとかわかるのかい?」
「はい、村のアーティファクトの数は把握しているのでそれ以外のアーティファクトの数を数えました!」
また胸を張ってえっへんとやっている。
「はぁ…聞けばよかった。どこら辺の場所までわかるんだい?」
「大体村はずれくらいまでです」
トキタマにわかったと言い、僕は急いで父さんと母さんを起こす。
父さんと母さんも突然の事に驚いている。
急いで身支度を済ませて貰い、父さんと母さんには順番に村人を起こしてもらって避難誘導をしてもらう事にする。
僕はトキタマに一番近いアーティファクトの反応を聞く。
「家の裏に2つ、そこから少し離れた所にもう1つありますー」
「後は総数だ、全部でいくつある」
「1…2…3…26ですー」
この前より10も多い…。無傷で勝てるのか?
おっと忘れものだ、僕は部屋のテーブルに火の指輪を置いておいた。
屁理屈かもしれないが「2個目のアーティファクトを持って跳べない」のなら跳ぶ前と後は手から離しておくことにした。
火の指輪はひもを通して首にかけている。
これで準備は出来た。
僕は家の裏手に回ってみる。
まだ暗くてよくわからない。
トキタマに距離を聞く。
「ちょっと先、茂みの中に隠れているです」
よし、ここは僕が生まれ育った村だ、暗くても何とかなる。
ソッコーで3人を倒して次に行く。少しでも数を減らすんだ!!
「【アーティファクト】!」
僕は「兵士の剣」に能力を込めて斬りかかる。
不意打ちだったので1人の兵隊は切り殺せた。
次だ!2人目に斬りかかる。
「【アーティファクト】」
2人目の兵隊が僕の剣を防いだ。
物凄く重い一撃に思わず吹き飛ばされそうになる。
相手の武器も剣。
正直、僕の剣は我流、兵隊はきちんと訓練を受けているので正面から向き合うのは少し自信がない。
前回は15回もやり直したから動きを覚えてしまっていたことも大きい。
「これは何回跳ぶ事になるんだろうな…」
僕は思わず呟いていた。
「何回でも跳んでくださいね」
トキタマが明るく言い放つ。
3回かかってようやく兵隊2人を満足のいく形で殺せた。
前回の兵隊とは明らかに動きが違っていて、僕は翻弄され続けた。
1回目と2回目は、戦いの音と時間が経った事で村の皆が異変に気付きザワついた事で一斉攻撃が始まってしまった。
今回も火のアーティファクト使いが居て次々に火を放ってきたことで村が焼けて手詰まりになってしまい僕は2人を倒した所で跳ぶ事にした。
あのまま居ても火にまかれてしまって戦闘どころではなかった。
出来る事なら全員の装備を見たかったのだがそんな余裕は何処にもなかった。
今回はほとんど音を出さずに倒すことができた。
火の指輪がかなり役に立ち、相手の顔に火の玉を発生させて苦しんでいるうちに喉か心臓を突く戦法にした。
「トキタマ、次の1人の位置!」
「左斜め前木の裏です」
よし、一気に距離を詰めて倒す!
僕は気づかれないように歩く、奇襲をかけるためだ。
木の裏に気配がする。
木の左側に火の玉を放って右に飛び出してきたところを斬りつけることにした。
後一歩で届く範囲まできた。
息を整える。
急に虫の音が気になってきた。
何だろうこのプレッシャーは…
なんでもいい、時間が惜しい。
意を決して、攻撃をしようとした時。
「よくやるものだ」
木の裏から声がした。
この声はフードの男!?
こんな序盤から遭遇することになるとは思っていなかった僕は攻撃のタイミングを失ってしまった。




