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サンドボックス ガーデン  作者: さんまぐ
第1章 南の「時のタマゴ」
22/307

また明日。

16回目の時間。

かろうじてだがようやく成功と言える結果になった。

それには1つの理由が大きく関わっていた。


行動を始めてすぐに、あの兵士から奪った剣の能力を使った時の威力が跳ね上がったのだ。

今までは弓や剣のアーティファクト使いが粘った時などには二回くらい攻撃しないと倒せなかったのだが、威力が上がってからは全て一撃で倒せたのだった。

戦闘後、トキタマに何が起こったのかを聞いてみるとアーティファクトは使えば使っただけ成長をするそうで、この剣の成長条件は一定数の人間を斬る事だったようだ。

この時間の中でこの剣で切った人数が一定数に届いたのだろう。

それで剣が成長をしたらしい。

今まで苦戦した兵隊相手でもあっという間に斬り伏せられるので相当な時間短縮になった。


そして意外だったのがリーンの力だ。

リーンの避難誘導とナックへの戦闘指示は的確だった。

お陰で大きな怪我をしたものは居なかった。

小さな怪我で言えば、ナックのお父さんが飛んで来た矢で肩に傷を負っていた。


正直、僕はその小さな怪我も許せなくなっていたので、もう一度完璧を目指して跳ぶことを決意していたのだがリーンに止められてしまった。


リーンは村のみんなに僕のアーティファクトの話をした。

そして今まで僕が僕だけしか知らない世界で何回も時間を跳び直してみんなの為にやり直していた事も説明してくれた。


最初は冗談だと思っていた皆も僕の手にある剣のアーティファクトと広場の周りに横たわる兵隊の死体を見て察してくれた。

そして、みんなが誰も死ななかった結果を大喜びしてくれた。

僕はこの歓声を聞きながら笑顔がずっと見たかったのだ。本当に今ようやく願いが成就した。


少し、心が軽くなった。


ただ、やはりナックのお父さんには申し訳ない事をしたと思い謝りに行くことにした。

謝罪の中で万一跳んだ方がいいと判断した時にはリーンにお願いをして、もう一度跳ぼうと思っていた。


ナックのお父さんの所に謝りに行った。


「おう!ありがとうなS級アーティファクト使いさん」

嫌味なんかではなく、本心で感謝をしてくれている。


「ごめんなさい」

「ん?何がだ?もしかしてこの肩の怪我の事か?」


「はい、僕は誰も傷つけないで明日を迎えたかったから、それなのにナックのお父さんが怪我を負ってしまいました」

「はっはっはっは!こんなの死ぬことに比べれば文字通りかすり傷だろ?謝るんじゃねぇよ」

本当だろうか?本当に僕に対して「S級なんだからあいつがもっとしっかりしていれば」と思わないだろうか?やはり跳ぶべきなのではないか?そう思い始めていた時、ナックのお父さんが続けた。

「お前さんが何べんもやり直してくれた世界の中で村の奴らはお前さんを責めたか?俺はその場を知らないが誰もお前を責めたりなんかしなかったんじゃないのか?それどころか仮に1人、2人が救えないで居たとしても、皆お前に感謝もしただろう。自分を追い込むものじゃないと言うだろう。違うか?」


その通りだった、僕が捨て回や練習回にしてしまった時もみんな僕を責めなかった。


僕は何を考えていたんだ?


「はい。誰も僕を責めませんでした。みんなありがとうと言ってくれました。」

「そうだろう、お前も、うちのナックもリーンちゃんもみんな自分の子供のように思っているんだ、その子供が頑張ってくれていたら感謝しかしない。いや感謝しか出来ない。お前が観たという地獄、一度目のお前以外が皆死んだときですら、俺たちは自身が助かる事よりもお前達を優先したはずだ」


「はい」

「だから胸を張れ。お前が皆を救った英雄だ」


「はい」

僕は泣いた。成人の儀を終えて大人になったはずなのに泣いてしまった。


「父さん!キョロを泣かすなよ。別に肩の傷くらいで責めるなって!!」

ナックがこちらに飛んできてくれた。

先ほど戦いたくないと泣いていたナックとは同じだけど違う存在。

今。目の前のナックは僕が良く知るナックだ。


「皆のモノ、今日はもう遅い。詳しい相談は明日にしよう。万が一に備えて今晩はナック、キヨロス、リーンの家族以外で交代して寝ずの番と片付けをする。男どもは兵隊の亡骸を東の麓まで運んでくれ。埋葬は明日以降に執り行おう」

村長が皆に声をかける。


滅茶苦茶になった広場を片付けていた父さんと母さんが村長に自分たちも手伝うと言っているのだろう、怒られている。

「今日の晴れ舞台で大活躍した子供も労わないのかお前たちは!!さっさと家に帰って親子水入らずで息子を安心させてやれ!!」

村長の声がここまで聞こえてきた。


「だってさ、俺たちはゆっくり休ませてもらおうぜ」

ナックが僕を見て笑う。


「キョロはゆっくりできないかもね」

リーンも僕を見て笑う。

このリーンはさっきの時間から一緒に来たリーンだ、あの僕とナックを見てしまっていて今の状況の変化に戸惑ったりはしないのだろうか?


「リーン、あのさ…」

そう言おうとしていると


「キヨロス君、娘を本当にありがとう」

リーンのお父さんとお母さんが僕の所に来てありがとうと言って頭を下げてくれている。

「いえ、僕も何回もリーンとリーンのアーティファクトに救われていますから。僕の方こそお礼を言わないといけません。ナックにも本当に大変な役目を負ってもらっていましたし、僕だけの力じゃないんです。だから頭を上げてください。困ってしまいます」


「それでもリーンから聞いたよ。君はリーンや私たちを助けられなかった後悔から今までずっと戦ってきたんだろう?15歳なのにそんな大変な事をしてくれて…本当にありがとう。」

参ったな、僕はお礼を言われるのはあまり得意ではない方なんだ。


「キヨロス、さあ帰ろう」

父さんと母さんがいいタイミングで迎えに来てくれた。

あ、実際はいいタイミングではないのかもしれない。

リーンの言う通り僕は家に帰ってもゆっくりできないかもしれない。


まあ、今日は確かに疲れた。

さっきまでは疲れを感じていなかったのだが、戦闘が終わったからか疲れた気がしてきた。

さっさと家に帰って身体の血の臭いも取りたい。


明日があるんだからリーンとの話は明日でも出来る。

続きはまた明日。


「リーン、ナック」

僕は2人に声をかける。


「また明日」

また明日、なんて素敵な言葉なんだろう。

「またね」

「おう!また明日!」

2人が僕の声掛けに応えてくれた。


さあ、家に帰ろう。

父さんと母さんと並んで歩く。

家に入る時にはトキタマも呼んで僕の部屋で寝かせてやろう。

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