もう一度成人の儀を。
92回目の時間。
[1日目]
「キヨロス、何回目ですか?」
目の前で神の使いがそう尋ねる。
そう、僕はこの時間に跳んできた。
トキタマはタマゴのままだが、中にちゃんと居るのが僕にはわかる。
「92回目です」
僕が答えると、神の使いが悲し気な表情で僕を見る。
「そんなに跳んだのですか」
「はい、どれも仕方のない事です」
まあ、覗きとかはどうでもいい気もするけど…
「それで、なぜ貴方はここに?」
「もう一度<成人の儀>をさせてください」
「それは出来ません」
「何故ですか?」
「普通の人間にアーティファクトの複数持ちが出来ないからです」
「でも、僕は今三つのアーティファクトと一つの擬似アーティファクトを持っています」
そう言って僕は剣と指輪と鎧を見せる。
「何があったのか教えてくれますね」
「私にも聞かせて」
振り返るとそこにはリーンが居た。
「リーン…」
「ちゃんと跳ばしてくれたね。キョロ、ありがとう」
「それで戻ってきた訳ですか」
神の使いはリーンもある程度知っているのであればこのまま話しましょうと言った。
僕は約8日間の出来事を話した。
最初の3日はリーンも知っていたが、残りの5日間はリーンも知らない事だったので僕の横で驚いていた。勿論、不死の呪いの事は避けて話をした。
「あの時、何回も跳んだのはそういう事だったのね」
「そんなに跳んで大丈夫なの?」
リーンは表情をコロコロと変えながら驚いている。
「「時のタマゴ」の事は「紫水晶の盾」から聞いたのですね」
「はい」
「それは概ね正解です。私も神の使いとしての権限ギリギリの部分まで話す必要がありますね」
そう言って神の使いが話し始めた。
トキタマとムラサキさん、S級のアーティファクトには<解脱>と呼ばれる最終形態を目指すように神によって作られていて、無意識にそこへ目指すようにトキタマなら「跳ぶ」事を求めてくると言う。ムラサキさんに関しては僕のアーティファクトではないので教えて貰えなかった。
ちなみに解脱後の話は権限外と言う事で話してくれなかった。
王の持つ「龍の顎」は神の使いが授けたアーティファクトではない。
何者かが王に献上をしてしまったのだろうと言う事だ。
ちなみに王には「晴れの玉」と言うA級のアーティファクトが授けられていて、能力は天気を晴れにすると言うものらしい。
「龍の顎」はムラサキさんが言った通り、外法のアーティファクトで中々顕現しないもので、出てしまった時には「知らせる者」が対応をする事になっていると言う。
知らせる者…神の使いは6人居てそれぞれが「記す者」「見守る者」「知らせる者」「授ける者」「道を示す者」「与える者」と呼ばれている。
この神の使いは「授ける者」で主にアーティファクトを授ける事が仕事だと言う。
「本来なら、「龍の顎」が現れた時に「見守る者」が「知らせる者」に通達し、「知らせる者」が神に通達を出すのです。だが今それが機能していない。何かあったのかも知れません」
「それじゃあ、神様は助けてくださらないのですか?」
リーンが泣きそうな顔をしている。
「なので私が権限ギリギリの範囲までキヨロスに協力をします」
神がダメでも神の使いがどうにかなるのであればまだ心強い。
「では<成人の儀>をお願いします」
「それはわかりました。その前に王の話をもう少ししましょう」
「王の生い立ちとかは…」
「いりません。変に重い過去で同情心が芽生えると困るので…」
「そうですね。では戦った時の話を先にしましょう。
結論ですが、王はダメージを受けています。
ただ、取り込んだ兵隊のアーティファクトを使って即時回復を行っているのです。
あなたが言う、足を切り落としても次の瞬間にまた足が生えていると言う事は普通では考えられません。
悪魔の姿の時もアーティファクトの攻撃が通用したと言う事は、身体が人間から魔物に変化をしたことで基本的な防御力が上がったのでしょうが、攻撃自体は通用するのです」
「なら、さっきの時間でも戦い続けていれば…」
「はい、倒せたと思います。ただ、何人分取り込んだのかは知りませんが、おそらく2~3日くらいは攻撃を続けないと倒せないと思います」
現実的ではない。
「なので、キヨロス。あなたの考え、<成人の儀>で再度新しいアーティファクトを手に入れるのは、理論上は間違っていないと思います。ただ、「時のタマゴ」と同時に装備が出来ればの話ですが」
「それは大丈夫だと思っています」
「そうですか」
「一つ、聞いてもいいですか?」
「何でしょう?」
「僕に「今何回目?」と聞いたのは何故ですか?」
「私は、「時のタマゴ」との離れ方を知りたくて私の元に跳んできたのだと思ったのです」
「確かに少し前はそれも知りたかったですね。あるんですか?」
「…解脱させるしか方法はありません」
何となくそんな気はしていた。
僕は無言になる。
神の使いはそれを察してくれた。
「さあ、それでは<成人の儀>を再度執り行いましょう」
「はい」
「キョロ、気を付けてね」
リーンが僕に心配そうな目を向ける。
「ありがとう。行ってくるよ」
「キヨロス、今回も後戻りをしてはいけませんよ」
「わかりました」
そうして僕は光に吸い込まれて行った…。




