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サンドボックス ガーデン  作者: さんまぐ
第1章 南の「時のタマゴ」
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人間と人形の違い。

結論から書く。

マリーの身体は痺れてはいないが動かなかった。

ペック爺さんは僕の倒し方が乱暴すぎたからだと責め立ててきた。

フィルさんとジチさんが僕は最大限出来る限りの事をしていたと擁護してくれたが、ペック爺さんは冷静な判断が出来ない様子で僕に怒り狂っていた。


カムカが武術の知識で触診をしてみた。

マリーの両手両足の骨が折れていると言っていた。

多分、戦闘以外にも幼い女の子が1年半もあの鎧の中に居たと言う事が問題だったのではないかと言う話だ。僕が滅多打ちにした頭や胴体の骨は折れていなかったのでカムカの見立ては間違いないのかもしれない。

カムカは折れているだけで身動きが取れない理由がわからないと言っていた。


僕は何となくわかっている。

だが、いまはそれを口にはしない。


ペック爺さんは折れているという言葉に過剰に反応をした。

僕のせいだとまた責め立てたが、カムカに胴体は無事なのだからと諭されて反論が出来なくなっただけで納得はいっていない顔をしている。


マリーは話の間にまた眠ってしまった。まだまだ疲労が抜けきらないのだろう。



眠ってしまったマリーを見て頭を抱えたペック爺さんは、マリオンを見てこれしかないと言う顔をした。



「マリオン!!!」

ペック爺さんのあまりの声量にフィルさんが身を強張らせる。


「マリオン、お前なら僕の気持ちがわかってくれるよね?どうかその回復の力でマリーを助けておくれ?」


ああ…やはりだ。

やはりそうなった。

僕の予想通りペック爺さんはマリオンを犠牲にしてマリーを助ける事を思いついてしまった。


カムカがマリオンとペックの間に立ちはだかる。

「何言ってんだ!?回復の力を使うとマリオンは倒れるんだろ?」

「どいてくれ、マリオンは人形兵士だ。倒れても雷の力を使えばまた起き上がる」

ペック爺さんも諦めない。


「ダメだ」

「孫の為に使えるものを使って何が悪い!!」


「マリオンもあんたの孫だろう!」

「だが人形兵士だ!!私が作った存在だ!!」


…思っていても言ってはいけない一言だ。

そう思うのなら心を与えてはいけない。


「それなら俺がやる」

「君は手を抜くかもしれないから駄目だ!マリオンは全力でやってくれる!!」


「ふざけるな!!」


「いいよ、カムカ。ありがとう。お爺ちゃん、私がやればいいんだよね?」


「マリオン、やってくれるか?おお優しい子だ」

ペック爺さんは涙を流しながらうんうんと頷いている。


僕は今までの会話の中でペック爺さんがマリオンをマリーの代替品としか思っていないのではないかと言う事に気が付いた。

そしてマリーは人形兵士だから最悪はどうなっても構わないと思っていると。


ペック爺さんの怒鳴り声でこちらに来ていたのだろう。

ガミガミ爺さんが後ろに居た。


「ペック、限界までマリオンを使ったら記憶も所作も全部消えるんだぞ?それでもマリオンを使うのか?」

「それがどうした!」


「おい爺さん、どういう事だそりゃ?」

「雷の力で活動しているマリオンは雷の力が少なくなると休眠状態になって自身の記憶や見知った所作を守ろうとする。それでも持って数か月だ。それを超えて力を使えばすべての力を失って、記憶もなにもかも失うんだ」


「それでも、それでもマリオンはやってくれると言ってくれたんだ!ドフ、お前にそれを止められるのか!!」


狂気。

そう、これはもはや狂気だ。

多分、普段の物腰の柔らかい老人がペック爺さんなのだ。だが、今は孫を助けたい一心で狂ってしまっているのだろう。


「私がやるよ」

そう言うとマリオンはマリーの腕に手をかざし「【アーティファクト】」と力を使い始めた。

横でペック爺さんは「もっと…もっとだよマリオン」と言っている。

カムカが村長を滅多打ちにした時と同じ怖い顔をしている。


「カムカ」

「あ!!?」

カムカは行き場のない怒りを僕にぶつけてくる。


「マリオンを見ていてくれ。少しでもおかしくなったら樽が付いたベッドに寝かせるんだ。あそこには今さっき雷の力を補充してある。多分それでマリオンは持ち直す」


「本当か!?」


「それでか…」とガミガミ爺さんが合点の行った顔をした。


「ガミガミ爺さん、二回目の雷は」

「もう満タンだよ、鎧のメンテナンスも全部終わっている」


「良かった。それ、今から樽に全部入る?」

「ああ、残らず入るぜ」


「じゃあ、それを入れて。カムカ、マリオンが回復している間にマリーをもう一度診て。骨が治っていたらペック爺さんと僕達に知らせて」


「わかった」

「あ、マリオンが起きてもう一度力を使おうとしたら僕達を呼んで」


「ジチさん」

「なに?」


「ジチさんはペック爺さんが変な事をしないようにカムカと一緒にマリオンを守って」

「わかったよ」


「フィルさん、フィルさんは僕とガミガミ爺さんと来て」

「ええ、わかったわ。キョロくんはここまで考えていたのね」


「うん、ごめんね。説明が難しい気がして、もしかしたらペック爺さんがおかしくならないかもしれなかったし」


ガミガミ爺さんを連れて僕は「悪夢の兜」がある部屋に戻る。

「ガミガミ爺さん暴走状態は外せている?」

「ああ、やってある」


「じゃあ、これを被っても」

「おかしくはならないが、誰が被るんだこんなもん?」


「それは後の話。フィルさん、兜と鎧を奥の部屋に持っていくの手伝って」

「え、うん…。いいけど。本当にどうするの?」


「いいからお願い。そう言って僕は兜と胴体。フィルさんが残りを持って奥の部屋に入った」



奥の部屋に入るとマリオンは樽のあるベッドに寝かされていた。

ペック爺さんが目の色を変えてカムカに詰め寄っている。

カムカもいつものカムカではない怖い表情でペック爺さんを睨みつけながら反論をしている。


「状況は?」


「おい!この男は何で僕の邪魔をするんだ?何でマリーを治すことがいけない事なんだ!」

ペック爺さんが僕にも詰め寄ってきた。


正直煩い。

多分、僕は連続で跳んだからだろう…気が立っている。


「煩いな。このまま見捨ててしまおうか?」

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