動かないマリー。
これで欲しい話は終わった。
ただ、トキタマはまだ跳べるとは言わない。
まだ何か必要なのか?
ガミガミ爺さんが部屋に戻ってくる。
「マリーが目を覚ましたぜ」
ペック爺さんが駆け出す。
「お前たちも着いてこい。もう見られて困るものはないからな」
奥の部屋には亡霊騎士の鎧やアーティファクト砲が何個か置かれていた。
そして奥にはベッドが三つあり、一番右のベッドには樽が併設されていた。
「あの樽が雷の力を溜め込むもので、雷の力で人形兵士は動いている。
俺が来ない間、雷の力が切れたマリーはここでずっと寝ていた」
僕はマリーがマリオンである事を知っていると伝えた。
「そうか…、ならマリオンはずっと寝ていた。さっき動いたのは2ヶ月ぶりの事だ。
さっき、カムカに回復の力を使っただろう?
あれでもマリオンの力は減ってしまうんだ。
それでペックは一度マリオンをここに寝かせて再度力を蓄えさせたんだ」
「マリー!!」
「お爺…ちゃん?」
マリーがペック爺さんを見て話し始めた。
「私、怖かったの。ずっと怖いオバケから逃げるのだけど気がつくと目の前に色んなオバケが来て、無我夢中で追い払うの。
「やめて、こないで」って声を出すけどオバケには聞こえないの。
でも怖いオバケはそんなに強くないから手で払うと居なくなるの」
「「悪夢の兜」の効果だ…多分暴走状態になると周りが全て敵や怖いものに見えるのだろう」
ガミガミ爺さんが僕達に話す。
「そういえばよう。亡霊騎士って言うかこの子は一年半も動き詰めていたんだろ?どうやって食事とか摂っていたんだ?」
カムカの質問は最もだ。
「待機状態だ。
あれは正確には休息状態だ。
陽の光をエネルギーに変える事が出来たし、四の村の付近にいる限り「大地の核」の恩恵でエネルギーが補給されるようにしていた。
先に作ったマリオンには着けていない機能だ。
マリオンは本当にただの女の子として作っていたんだ」
そうか、休息と言って僕達が勘ぐらないように「待機」と呼んでいたのか。
「お爺ちゃん、あの人達は?」
「フィルお姉さんとそのお友達だよ。お友達の人がお前を助けてくれたんだよ」
「フィルお姉ちゃん?」
「ええ、そうよ。マリーちゃん久しぶり!」
フィルさんは泣きそうな顔でマリーに話しかける。
「お姉ちゃん、助けてくれてありがとう」
「いいのよ。気にしないで」
フィルさんは本当に女神さまと言った感じだ。
マリーは再び視線をペック爺さんに向ける。
「お爺ちゃん、マリオンは何処?」
「!!?……」
「お爺ちゃん?」
ペック爺さんは何も言わない。
「それよりも、身体の調子はどうだ?変な所は無いか?」
ガミガミ爺さんが割り込んで話をそらす。
「あちこち痺れていてよくわからないの。手も足も動かないし…」
「ようやくあの鎧から助け出せたからまだ身体がビックリしているのかもな。
一度寝てみよう。
起きたら動くようになるかも知れない。
それよりもご飯食べるか?食べさせてやるぞ?」
「ううん、いらない。寝るね」
その声に合わせて僕達は部屋を後にした。
少し後をガミガミ爺さんとペック爺さんが出てきた。
「マリーはダメかも知れない」
第一声がそれだった。
「あの鎧は物理攻撃や一定のアーティファクトには強いが、弱点のアーティファクトがあった」
「雷の力ですね」
「そうだ…。そして今はまだわかっていないが、おそらくさっきの戦闘で雷を当てすぎたんだろう。
鎧と兜を着ていれば身体なんて飾りだ。
言い方を変えれば身体はただ鎧と兜が動くための道具に過ぎない。
本人の意思なんて関係なく身体は無理矢理動かされる。
骨が折れていようが麻痺で動かなかろうが…」
そう言うとガミガミ爺さんは黙ってしまった。
2時間後、やはり目を覚ましたマリーは指一本動かせずにいた。
薬を飲んでみようと薬を飲ませて誤魔化したがその薬は睡眠薬だった。
「マリー…可哀想に…」
ペック爺さんが泣き、ジチさんが肩に手を置いて慰めている。
「小僧…、普段は無理すんななんて言っているクセにこんな事を願うのは間違っていると思う。
それでも俺の願いを聞いてくれないか?」
もう、その願いはマリオンに頼まれている。
「マリーの為に、マリオンの為に跳んでくれ。
そして雷の力を使わずにマリーを助け出してくれ」
「うん。マリオンにも頼まれているから。僕は跳ぶよ」
そう言うとペック爺さんがすがる目で僕を見る。
「本当かい?頼んでしまってもいいのかい?」
僕は快諾をした。
ただ一つ条件を付けさせてもらった。
「マリオンのブローチを貸してください」
「マリオンの?」
「本当はペック爺さんに判断を委ねたいとマリオンは言っていた。
けれど僕は僕の意思でマリオンも助けたい。
だからマリオンのブローチを貸してください」
ペック爺さんはマリーの事があまりにもショックだったのだろう。
意味がわからないと言う顔をしている。
僕はブローチを受け取って時に「後、制御球も借りていきますからね」と言って制御球も受け取る。
「トキタマ、ここに居る全員を今の僕は跳ばすことが出来る?」
「んー、ちょっと難しいですね。あんまり無理をするとお父さんが倒れてしまいます」
やはりそうか。
そんな気はして居た。
「誰なら跳ばせる?」
「村のお姉さんもですよね?そうなると盾のお姉さん、筋肉の人、元気なお姉さんとガミガミの人ですかね」
…それじゃダメだ。
「後1人、僕が無理をしたらなんとかならない?」
「えー?無理ですか?
出来ないことはないですけどー。
いいんですか?」
そう言うトキタマの顔は悪い顔をしていた。
僕の事を心配して居ると言うより、僕が無理をする事で得られる旨味を意識して笑いを堪えられない。そんな感じだ。
もしかすると何回も跳ぶくらいの負担があるのかも知れない。
だが、僕にはマリオンとの約束がある。
「かまわ…」
「かまうわよ!!」
ジチさんだ。
「まーた、キヨロスくんは色々背負い込む!お姉さんは、今回は役に立って居ないんだから置いていきなさい!そうしたら無理しなくていいんでしょう!」
「キョロくん、ジチに感謝して今回はそうして?ね?私とカムカは戦闘になった時の為に跳ばして貰いたい。お爺ちゃん達はお爺ちゃんが居れば何とかなるから」
「お父さん良かったですねー、それなら無理する必要も無くなりますねー」
そう言うトキタマの顔は全然良さそうじゃない。
「じゃあ、僕は跳ぶよ」
「キョロくん、どこに跳ぶの?」
「一度やり過ごしてここに来た時にするよ。マリオンとの約束もあるし」
「そう、わかったわ」
「小僧、済まない。よろしく頼む」
「うん」
「トキタマ!」
「はいはーい……」
トキタマが止まった。
「お父さん、跳べるよー」
何かタイミングがズレた感じだが、トキタマが跳べると言い出した。
恐らく足りなかった最後のコマは、後遺症の話とブローチの話だと思った。




