プロローグ
人生とは、あっけなく終わる物だ。寿命が尽きるまで元気に生きられるとは限らない。病気に苦しみながら死ぬかもしれないし、下校途中に後からナイフで刺される事もあるかもしれない。川に溺れる事もあれば、山で遭難する事もある。他には……トラックに轢かれるとか。
トラック。そう、今まさに俺は、トラックに轢かれようとしている。信じられるか?マンションの4階にある24歳サラリーマンの部屋に、トラックが突っ込んできたのだ。普通に考えてあり得ない。それに、なんだかやけに周りがゆっくりに見える。こうしてあれこれ考えていても、まだトラックは俺にぶつかっていない。だが、家の壁を突き破ってくるだけのエネルギーがあれば、俺なんて容易く殺せるだろう。
さて、この世界には異世界小説と言うものがある。内容については賛否両論あるが、少なくとも俺はこのジャンルの小説が好きだった。そして、異世界小説のお決まりといえば、トラックに轢かれること。
ああ、どうせ死ぬんだから、神様が異世界に連れていってくれたりはしないだろうか。できれば、ケモミミッ娘に嫌われないようにの顔と性格を作り変えてほしいな。それさえ叶えば、神様の奴隷になったっていい。
そうして俺はトラックに轢かれて、死んだ。
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目が覚めると、俺の前にはどこまでも続く草原が広がっていた。トラックに轢かれ、目が覚めたら見慣れない草原。これはもう、100%異世界転生だろう。いや、むしろそうでなければ、ただの妄想オジサンになってしまう。異世界転生であってくれ。
そこまで考えたところで、俺は自分の体の変に気づく。
「なんか声が高いし……、周りの草が大きく見える……?というか、俺スカート履いてるじゃん!」
26の成人男性が、こんな高い声を出せるはずがない。まあ、ボイストレーニングなんかをしたときもあったけど、それとはぜんぜん声の質が違う。
「それに、このスカート……。俺こんなの履いてないぞ?」
ほっぺをむにむに。腕をぷにぷに。そして…………ない。
「うん。多分あの女の子の体だ。」
いや、どうするんだこれ……。