選択肢は3つです。
乙女ゲームと全く縁のない生活を送っていたリア充系女子が、地雷が多く、バッドエンドも多い詰みゲー世界を攻略していくお話。
異世界。数多く夢女子、腐女子を送り込んできたが、誰一人クリアしたことのない、かのゲームに、1人の女の子が登場した。
「クリアしてくれないなんてつまらないよねえ。」
「もういっそ全く関係ない子入れちゃえばいいんじゃない?」
「その考えいただき!」
「は?」
「うーん。あ、これでいいや。君に決めた!」
こんな暇を持て余した神々の遊びに翻弄される彼女の未来はどっちだ?
目を覚まして驚いた。1LDKの我が城がリアル城になっていたのだから。田舎から念願の東京に出てきて大学生活を送り早3年。就活も無事終えて、遊びに繰り出そうと思っていた。彼氏とは就活が始まり出してから上手くいかなくなって別れた。バイト先にいい感じの後輩がいるし、友達の彼氏の友達も紹介してもらえるような話してたし、残り少ない大学生活エンジョイしようと思っていたのに。別にヨーロッパに来た覚えないんだけど。今日バイトだ。スマホは、どこ?
慌てて起きようとして、気付く。このベットめちゃくちゃふわふわだぞ?え、待ってめっちゃ気持ちいい。うちの○トリのベット(さんきゅっぱ)とは雲泥の差だな?え、気持ちいい。頰でシーツに擦り寄る。これシルクかな。こんな触りごごち初めて…♡幸せ。おやすみなさい。すやあ。
「お嬢さま、起きてください。お嬢さま。」
「うーん……あと5分。」
「いけません。もう起きる時間ですのよ。」
「じゃああと…2時間でいいから。」
「増えてるじゃありませんか。ほら、お嬢さま。」
揺すぶられている。とても優しく。誰かに起こされるのなんて久しぶりだなあ。お母さんにしては手付きが丁寧すぎる。気持ちいい。あと、もう少し。そう思いながら、ふと気付いた。私一人暮らしよ?彼氏も別れて少し経つ。え、不法侵入!?はっと目を開けた。そして、目に入ったのはクラシックメイド服を淑やかに着こなす西洋の美人さん。ふああ。似合いすぎでしょう?
「ごちそうさまです。」
思わず両手を重ねて、頭を下げたのは仕方ないことだろう。しっかり躾されているでしょう?
「お嬢さま、寝ぼけていないで起きてください。」
手を伸ばされて抱き上げられる。待って、お姉さん力持ちすぎない?私身長165cm、体重は、まあ標準くらいはあるんだけど。
ってあれ。窓ガラスに反射されて写った自分と思わしき姿に目を見開く。え、待って。ミルクティー色の髪は光に映えてキラキラと輝き、澄んだ空のような瞳と、ちっちゃなお口、陶器のような肌。どうみても美少女がクラシカルメイドに抱き上げられていた。美少女の驚いたぱっちりおめめがくりくりしてる。めちゃんこかわいいな。こんな睫毛あったらマツエクいらないじゃん。ビューラーだけで余裕だ。うらやま。
(じゃない、どういうことー!?)
かの有名なムンクの叫びの絵のように叫んだ瞬間、辺りは止まった。この表現でいいのかは分からないが、時間が止まったのだ。そうたしかに。え、何これ?ドラえもんとか?ドッキリ?もしかして、モニタリングかな?
現れた神(仮)の話を聞いたけど。異世界とか乙女ゲームとか悪役令嬢とかヒロインとか。よく分からないけどこの人すごいな。めちゃくちゃリアルに話すじゃん。役者志望?こんな顔面偏差値高ければちょー売れるはずだけど、みたことないな。これから売り出すのかな?とりあえずインスタフォローしよ。
「何か質問ある?」
「え、いつベッ○ーは入ってくるんですか?」
「ベッ○ー?」
「モニタリングですよね?すごい。めっちゃ凝ってる。異世界?とか。面白いギャグですね。」
「…は?」
「あの。名前教えてもらってもいいですか?お兄さんめっちゃ演技上手いし、ファンになりたいのでインスタフォローさせてください。あ、インスタやってないですか?そしたら、」
「君話聞いてた…?」
「はい。設定ではこの世界?は中世っぽい雰囲気で、ヒロインがいい男に粉かけまくって、引っかかった男の婚約者が怒ってヒロインを虐めて、その虐めを逆手にとって玉の輿に乗るっていうサクセスストーリーですよね?」
「…ツッコミどころはあるが、とりあえず、分かってくれたみたいだね。で、だね。」
「質問いいですか?」
「よく分かんないけど、虐める暇あったら相手振り向かせるか、見切りつけて他の男ゲットしちゃえばいいんじゃないですか?ヒロインみたいに。」
「ああああ!!君はとりあえず悪役令嬢になってもらうから!彼女に転生したから!」
「転生…?」
「君、最近流行りのラノベ知らないのか?」
「ラノベ…?涼宮ハ○ヒみたいな本ですか?」
「…、そうだ。」
「すみません。あんまりそういうの興味なくて、TikT○kとかY○uTuberとかならわかるんですが…」
「乙女ゲームは???」
「?…太鼓の達人みたいな?」
「それは音ゲー!恋愛ゲームだよ!」
「??…ゲームで恋愛するの?あ、あれか浮気を探すゲーム!やりました!面白かったです。」
「違う!ヒロインになってイケメンと恋する恋愛シュミレーションゲームのことだ。」
「……そうなんですね。」
「君はとりあえず、転生。」
「転生?」
「ああ、もう!あれだ、VRゲームだと思ってくれればいい。このゲームをクリアしてもらいたいんだ。クリア出来たら報酬も用意する。」
「…分かりました。」
「そうか!じゃあ頼むよ。君の簡単な設定と世界観はダウンロードしておくから、よろしくね。」
そそくさと退散していく彼は厄介ごとが済んだといった感じで去っていった。
よく分かんないけど、私はゲームしてクリアすればいいわけね。まあいっか。暇だし。
(でも、ゲームで恋愛して楽しいのかな?)
彼が去ったのと同時に世界は再び動き出す。ここに異色の悪役令嬢が誕生した。
うわ、なんか選択肢でてきた?
よくわかんないけどこれにしよ。
人に会うと頭にプロフィール浮かぶの便利すぎでしょ。
明らかに脈なしじゃん。こういうときは告ったりアピったりしないんだよ。もう少し勝ち目がある時に少しずつアピってくの。てわけで退散。
___イベントを勝手になくしたり。
え?明らかコイツ私のこと意識してんじゃん。なんでこんなクソみたいな選択肢しかないわけ。なけりゃ作るだけよ。
___第4の選択肢を選んだり。
うわ、こいつ女癖悪すぎでしょ。私の友達泣かせるとか何様のつもり?一回シメなきゃ。2本あれば歩けるんだからもう1本の足なんかいらないよね?
___友達のために奮闘したり。ちょっと待ってそれヒロインの攻略対象だから、それちぎんのはやめてええええ!
彼女の異世界珍道生活はまだまだ始まったばかり。
こんなところにルートがあったのか…!
彼女が選んだ最後とは?