七十九
シングとライアットは、互いに武器を構えたまま、硬直していた。いや、タイミングを窺っている。
風の吹く音がやけに響く。
シングは頬に汗を滲ませながら、まだ動かない。
相手も同様だ。只、ライアットは、余裕の表情を見せていた。
ふと、リアの鼻先を葉が掠める。
すると、彼女はくしゃみをした。
「おおおおお!」
シングは、くしゃみを合図にするように、相手目掛け走り出す。
距離を詰めると、鋭光の槍で薙ぎ払う。
ライアットは屈みつつかわすと、横に回り込んだ。すかさず、右手に持つ長剣で斬ろうとする。
シングは、槍の柄で剣を受け止め、押し返していく。
剣を押されて、無防備になったライアット。
シングは、斬り返すように槍の先端で薙ぎ払う。
だが、相手は剣で受け止めた。
「まだだ、咲け!」
シングがそう叫ぶと、槍の刃から幾重にもなって、光の棘が生えていった。
ライアットは、後方へ跳んで回避する。
ザァッと着地音をさせると、微かに笑った。「シング王子、成長しましたね······これなら、もう······」
最後の言葉は良く聞き取れない声量だった。
「······なんて?」
シングの問いに答える事もなく、再びライアットは、長剣を構える。
「さあ、決着をつけましょう」
「望むところです」
ライアットは素早く駆け出すと、シングの右側に向かっていく。
シングは槍で迎え撃とうとする。
だが相手は、途中で軌道を変えた。
シングの左側目掛け、距離を詰めていく。
そのまま、擦れ違い様に剣で、肩を斬り付けた。僅かな血液が地面に飛び散る。
「くっ」
すかさずライアットは振り返り、次の行動に移っていた。再び、シングに向かっていく。
シングも振り返ると、槍の突きをかます。相手は紙一重で、横に逸れてかわすと、同じく突きを繰り出す。
「ぐぅっ!」
その突きは、シングの左肩を貫いたのだった。
ライアットは、剣を肩から抜くと、付着した赤い液体をビュッと振って払う。
シングは、膝をついた。
ライアットは、剣を振り上げる。
「終わりです······もしかしたらと······思いましたが」
彼は、剣を振り下ろしていった。




