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神聖具と厄災の力を持つ怪物  作者: 志一 ゆもも
三体目のディザスター 襲来
61/102

六十





 ミレイとシングは森林から出て、皆の前に姿を現す。すると、「ミライさーん、シングさーん!」とリアが駆け寄って来た。

 ミレイに近付き、「その様子だと上手くいったようなのですね」と抱き付く。

 「良かったのです~!」


 「あんたのお蔭よ、リア······」

 ミレイは、彼女の頭を優しく撫でる。

 「ミレイさん······」

 リアの目尻に涙が溢れていた。




 ──時が過ぎ、アジ・ダハーカとの戦いが始まろうとしていた。

 北の上空から近付いてくる、らしき影。

 王国軍の指揮官は、ヴェルストに近付くと、声を掛ける。

 「では、お願いします、ヴェルスト殿」

 ヴェルストは不満そうに舌打ちする。

 「なんで、オレが······」

 「仕方無いじゃない。あんたしか、無理だからよ」

 「頼むよ、ヴェルスト」

 そう言うのは、シング。

 「ファイト! なのです! リアは応援してますよ!」


 その言葉の数々に、ヴェルストは呟く。「だりぃ······」

 すると、アイリスが発言する。

 「あら、ヴェルストさんは、恐れているのでしょうか? もし······ディザスターの気を引けなかったら、自分の魔法じゃ無理だったら······とでも思っているのですか?」

 「今、なんっつった? 見てろ、今からやってやるからよ」


 ヴェルストは、片足を前に踏み出した。次に、右腕を引き、拳を前斜め上へ向けて構える。

 「ウィンド・エンチャント······」

 魔法名と共に、右拳に風が纏われていく。

 「トルネード・ランス」

 更なる言葉で、風が勢いを増す。次第に大きくなっていき、巨大な竜巻の槍と化していた。

 「見てやがれ!」

 ヴェルストは拳を突きだしていく。

 「リベレイション!」

 その叫びと同時に、巨大な竜巻の槍が放たれ、上空にいるディザスターへ怒濤の勢いで進む。


 その竜巻の槍は、飛行している標的に命中しそうだと、誰もが思った。

 「おお······!」と、兵士の間から声が洩れでた程だ。


 だが現実は甘くなかった。


 竜巻の槍は、ディザスターを貫きそうという所で、その標的が飛行の軌道を横に反らしたのだ。

 それが原因で、ヴェルストの魔法は更に上空へ、消えていく。


 傷を負わせられなかったが、気を引く事には成功したらしい。

 ディザスターは、ミレイ達に向けて滑空してきた。

 その速度は物凄い勢い。

 みるみる、ディザスターの姿が小さくなくなっていき、あっという間に全身の形が顕になる。

 その災厄の怪物は、地上からある程度の距離を保つため、翼をはためかせる。


 その風が一同へ吹きつける。

 誰もが、言葉を失っていた。そのディザスターの姿に。

 「······あれが、アジ・ダハーカって訳ね」ミレイは緊張感を滲ませた表情をしていた。

 「うん······。只、昔読んだ文献だとアジ・ダハーカは他のディザスターとは違うらしいよ。なんでも、魔法を使うらしい」

 シングがそう説明した。

 「あの図体で、魔法を使ってくる訳? 反則じゃない······」


 ミレイの言う通りアジ・ダハーカは、キマイラの時より、巨大な体躯をしている。


 その外見は、三つの頭部を持ち、翼がある竜。

 それと、赤色に光る瞳が威圧感を放っていた。


 「魔法使団、魔法を放て!」

 その声で、既に詠唱を終えていた魔法使団は、魔法を発動する。

 放たれた様々な魔法は、アジ・ダハーカに命中した。

 神聖具による攻撃ではないので、すぐに再生するが。

 それでも、目眩ましにはなっただろう。


 「あたし達も行くわよ!」

 ミレイは一番に駆け出した。

 二番手にヴェルスト。

 その次に、シングも続いた。



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