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神聖具と厄災の力を持つ怪物  作者: 志野 ゆもも
神聖グラシア国編
52/102

五十一





 「一体、(なん)な訳!?」

 ミレイはその白い鳥を睨み付ける。

 「あれは、恐らく使い魔で間違いないでしょう······」

 アイリスはそう説明した。

 「使い魔? だったら、どっかの魔法使いの仕業って訳ね」

 「あの~······」ミレイに何か言いたそうに、リアは口を開いた。

 「リア、下がってなさい! 危ないわよ!」

 だが、ミレイは気付かない。


 「あの~ミライさん~······」


 程無くして、場の緊張感を破る声が、突如響く。

 「久し振りですね。シング殿にミレイ嬢······リアは相変わらずといった所ですか。それに珍しい者がいたものですね······ヴェルスト・ハーディ」

 どうやら声は、白い鳥から響いているみたいだ。

 「そうだが······誰だ、てめぇは?」

 ヴェルストは、鋭い眼光で睨む。

 「覚えていないですか? 何年も前ですが少しだけ、王宮内で面識があったのですが。レナード・J・グリウォンという者です」


 「レナードだぁ? 知らねぇな······」

 「そうですか······」

 そこで暫し、間が空く。


 「やっぱり、師匠だったのです!」

 突然、リアは声を上げた。

 「リアは本当に相変わらずですね」

 「師匠、聞いてください! 二体目のディザスターを倒したのですよ!」

 リアは腰に手を付いて、何処か自慢気だ。

 「リア、その報告は要りませんよ。この使い魔を通して見ていましたから。それより······挨拶が遅れて申し訳ありません。教皇ニコラス様、聖女様······」


 「お気になさらないで下さい」

 「儂は構わんよ。それより······この様にコンタクトを取ってきたのじゃから、何かあるのではないか?」

 教皇ニコラスは白い顎髭を撫でている。

 「······我が国の······神聖具······救済の杯が盗まれてしまいました······」

 レナードから告げられた事実に、一同は驚きの表情を浮かべた。

 「急ではありますが、今すぐにシング殿達には戻ってきてほしいのです」

 「でも、レナードさん。僕達は今、神聖グラシア国にいて······」

 シングのその言葉に、即、返答するレナード。

 「それも分かっていてです。大丈夫、準備は出来ていますから」


 何の準備だろうと一同は疑問に思う。だがリアが、手の平にぽんっと拳を打ち付ける。

 「分かったのです! 皆、荷物を取ってくるのですよ!」

 リアはそう言うが、やっぱり疑問に思うミレイ、シング、ヴェルストであった。

 「良いから取りに行ってくるのです~!」

 リアはそう言うと足早に退室していく。他の者達も、自室に向かうのだった。




 それから。


 再び集まった四人は、神聖具の武器や装備品等を身に付けていた。

 「こっちの準備は大丈夫よ。一体、何が始まる訳?」

 ミレイは、手の甲を腰において訊ねた。

 「それでは······この使い魔の周りに集まってくれますか?」

 その時、これから起こる事を察した聖女ソフィーが声を上げる。

 「ちょっと、お待ち下さい!」

 「これは聖女様······どうされましたか?」

 「司教アイリスも······良いでしょうか?」

 「勿論で御座います」

 レナードの了解を得た聖女ソフィーは、アイリスに近付く。


 「アイリス、これを······」

 聖女ソフィーは両手で、アイリスの手を握って何かを渡す。

 「これは······!」

 アイリスは手を開き、僅かに驚いた。

 何故なら、返したはずの神聖具、神罰の十字架があったからだ。

 「アイリス······この神聖具はあなたに必要です。······無事に帰ってくるのですよ」

 その言葉を聞いて、アイリスは微笑む。

 「はい、聖女様······必ず帰ってきます」言葉こそ丁寧だが、何処か仲の良い身内への接し方だった。


 アイリスは、カッカッと確かな足取りで、ミレイ達に近付くとその輪の中へ加わる。

 「始めて頂けますか?」

 「承りました。それでは始めましょう」

 レナードの呼吸を整える音がする。程無くして。


 「()の者らを呼ぶ光の舞······」

 詠唱が使い魔ごしに始まった。すると、ミレイ達を包むように光がゆらゆらと踊る。

 「光の舞は、架け橋となりて······我の元へと召還せん······コール・リターン」


 魔法名まで言葉にすると、輝きは最高潮に達し、ミレイ達は腕で目を覆う。

 次の瞬間五人の姿は、その場から消えていた。



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