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神聖具と厄災の力を持つ怪物  作者: 志野 ゆもも
神聖グラシア国編
51/102

五十





 通路を歩く二つの足音が響いている。

 聖女ソフィーとアイリスは、シェインのいる寝室に向かっていた。




 少しして、一つの扉の前で二人は足を止める。聖女ソフィーは、静かに扉を開け、中に入っていく。

 アイリスも入っていき、最後に扉を閉めた。

 二人は、シェインが眠っている寝具に近付く。

 目の前で止まると、聖女ソフィーは憂いのある表情をして、自身の弟を見る。

 「シェイン······」

 そんな聖女を見て、アイリスはいたたまれない気持ちになった。

 「聖女様······」


 それから場が静寂に包まれる。


 少し時が経過した。


 すると、聖女ソフィーが口を開く。

 「ねぇ、覚えてる? あなたが侍女として私と一緒にいた頃のことを······」

 「はい、覚えています······」

 「私が十の時で、アイリスが十二でしたね。あなたは、私にとって姉のような存在でした」

 そこで聖女ソフィーは微笑む。

 「あなたがいた頃は楽しかったですよ。そこに、途中からシェインも加わり本当に幸せでした」


 「聖女様······」

 アイリスは、何故か複雑そうな表情を見せた。

 「アイリス······『聖女様······』なんて堅苦しいですよ。今は他の人達はいないのですから······昔のように······」

 「昔の様にはいきません······」

 「アイリス、どうしたのですか······?」

 「貴方は、聖女様で······私は一介の司教なのです······昔と同じ様にはいきません」

 「アイリス······貴方だけは違うと思ったのですが······」

 聖女ソフィーは寂しそうな顔を見せた。

 しかし次の瞬間、上目遣いに懇願する。


 「本当に駄目ですか······?」


 「その表情はずるいです······」

 アイリスは、溜め息を吐く。

 「仕方無いです······」

 それからアイリスは、言いづらそうに、だが口を開く。

 「ソ······ソフィー······。これで······宜しいですか?」

 「ええ。なんか嬉しいですね」

 聖女ソフィーは、満面の笑みを浮かべた。

 対して、アイリスも微かだが笑みを浮かべる。


 程無くして、聖女は表情を改める。

 「······シェインの笑顔を又、前のように見れるんでしょうか?」

 聖女ソフィーのその表情は、不安と闘っているように見えた。

 アイリスは言葉を返す。

 「はい、シェイン様は······いえ、シェインはきっと、ソフィーに又笑顔をみせてくれます······」

 聖女ソフィーは、言葉ではなく柔らかな笑顔で反応した。

 まるで······アイリスに感謝している様に。







 それから時が過ぎ、朝日が二度、宮殿を照らした。その日の昼食をとっている頃合いに、事は起きる。


 いきなり、シングの背後から何かが現れていく。何も無い空間にだ。

 やがて、完全に現れて姿が明らかになる。

 それは一匹の白い鳥だった。


 一同は席を立ち、警戒態勢を取る。



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