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神聖具と厄災の力を持つ怪物  作者: 志一 ゆもも
神聖グラシア国編
43/102

四十二





 暫くすると、シェインの額から汗が流れ出す。更に時が経過するにつれて、銀色の指輪の一部分が黒く変色しだした。


 その変色は、時が進むと共に広がっていき、半分程で止まる。

 そこでシェインの息が荒くなっていく。「まだ······!」

 指輪の変化は、止まったかと思ったが間違いだった。

 まだ変化していく。

 次は、残りの部分が徐々に金色へ変わりだす。




 かなり時が経って、ようやく指輪の輝きが収まった。

 シェインは、たった一つの神聖具を創っただけで、かなり苦しそうな表情を見せている。

 「この······新しい神聖具の名は······光魔(こうま)の指輪だよ······この神聖具の力は······」

 シェインは、ヴェルストに光魔の指輪の力について語っていく。

 「そうか······」

 ヴェルストは、創り変えられた指輪を受け取った。


 「さて······残りはミレイの姉ちゃんのだね······」

 シェインは突如、「あれ······?」と声を上げる。その直後、ふらつき横に倒れてしまう。

 「シェイン!」

 姉のソフィーは近付いて抱き抱えた。

 すぐさま、彼女の聖女の力で、シェインは光に包まれていく。

 すると、シェインは地面に手をつき、自分の力で上体を起こしていった。

 「まだだよ······ボクはやり遂げるんだ」


 シェインのその真剣な表情、覚悟に、ソフィーも唇を引き締める。

 「分かりました······シェイン。あなたの体が持つよう、私も協力しますね」

 姉のソフィーは、シェインの両肩を手で支え、聖女の力を使う。

 するとシェインの体が輝きに包まれていく。

 少年はというと······いや彼は、地面に置かれた大斧に両手をかざす。

 大斧は、眩く光だした。


 少しして、又もシェインの額から汗が流れる。

 先程より、その表情は苦しそうに見えないが。それは、姉のソフィーの力によるものだろう。

 やがて、大斧に変化が表れ出した。

 それは僅かだが。大斧の柄の部分に、紋様がうっすらと浮かび上がっている。

 更に柄の下から、紋様が濃くなっていく。

 どの位経過しただろうか?

 そんなに長い時は、経っていないと思われるが。


 紋様が色濃く変わるのが、柄の半分程まできた時、シェインは辛そうな表情を見せ始めた。

 姉のソフィーは、聖女の力を使いつつ、弟が倒れないよう両手で支えている。




 次第に、紋様が柄の上に向かって、色濃く進んでいき、完全に浮かび上がった。

 直後、大斧の輝きが収束していく。

 光は消え、同時にシェインは、姉のソフィーにもたれ掛かる。

 「シェイン!」

 姉のソフィーは、抱き締めて受け止めた。

 「ボク、やり遂げたんだね······」

 「そうですよ······シェイン、あなたは神聖具を創りきったんです······」

 ソフィーの目尻には涙が溜まっていた。


 「······ミレイの姉ちゃん。この神聖具は断罪の大斧······力は······」

 シェインは途切れ途切れに、断罪の大斧の力について話していく。

 それらを伝えきった時、シェインは目をすっと閉じた。


 「シェイン!?」ソフィーは、弟の様子を見て、動揺する。

 だが、すぐにシェインから、息も絶え絶えな呼吸音が聴こえてきた。

 「良かった······シェインは私が絶対に死なせません」

 ソフィーは、シェインを地面に寝かせて、両手をかざす。


 「シェインは頼んだわよ······」

 ミレイは、地面に置かれた断罪の大斧を手に取った。

 「あたし達は行くわ······キマイラを倒しに」

 「ご武運を······シェインの、弟の意思をあなた達に託します」

 ソフィーの言葉に、ミレイは答える。

 「そうね。シェインの為にも、キマイラは絶対に倒すわ······」


 ミレイはディザスター、キマイラのいる所へ向かう為、生い茂る樹木の中に消えていった。

 その後をリア、ヴェルスト、司教アイリスも追っていく。


 「頼みましたよ······」

 ソフィーは、戦いの場へ向かっていったミレイ達にそう呟いた。



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