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神聖具と厄災の力を持つ怪物  作者: 志野ゆもも
ディザスターとその力と神聖具
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 シングは、ミノタウロス目掛けて駆け出す。ミレイも、一瞬遅らせて後を追う。

 距離を詰めながらシングは、左腰の鞘から剣を抜く。

 その右手に握られているのは、九十センチ程あるロングソードだった。


 シングは距離を詰めきると、斜めの軌道を描いて剣を振り下ろす。

 すると、剣は脚を捉え、斬りつけた。

 ミノタウロスは反撃しようと、シングに向き直り、大斧を振り下ろしていく。


 その斧の一撃を、ミレイが前に進み出て、左前腕の盾で防ぐ。だが、衝撃を殺しきれず、後ろへ飛ばされる。

 シングを巻き込んで。

 「きゃっ!」「うわ!」


 シングは地面に、ミレイはそのシングの上に倒れ込んだ。

 「痛いじゃない!」ミレイは不平をもらす。

 「もっと、痛いのは僕だけど······」

 「何か言った?」

 「何も言ってないさ。それより、どいてくれると助かるよ」

 「分かってるわよ!」ミレイは、体を起こす。


 やっと解放されたシングも、続けて起き上がった。

 「ふぅ、それにしてもどうするかな······。ミレイの盾じゃ防ぎきれないし」

 「悪かったわね。戦力にならなくて」

 「まあ、まともに戦える方法はあるよ。ミレイには、サポートに回ってほしい。でも、前に出て盾で防ぐことはしないで」


 「分かったわよ」

 「それじゃ!」シングは再び、ミノタウロスへと全速力で近付いていく。ミレイも後に続く。

 すぐさま、距離は詰め終った。シングは、剣を水平に振るう。

 もう一度脚に命中し、傷を付けた。

 だが、瞬時に再生していく。


 ミノタウロスは、大斧を構えて身体を軽く捻る。

 「あれは!? 前衛総員、攻撃が来るぞ!」指揮官が警戒を促した。

 「まずい!」シングは咄嗟に、剣を前で構えて防ごうとする。

 ミノタウロスは、身体を捻った反動を利用して、大斧で円を描くように、強力な下段攻撃をかました。


 シングを含めた前衛の複数が、攻撃で飛ばされて地面に倒れ込む。

 「しっかりしなさい!」

 ミレイが近付いてきて、シングの上体を起こす。

 「いててっ」

 「あんた、胸から血がっ!」

 「傷は思ったより深くないさ。それより······」シングは手元の剣を見る。


 剣は、見事なまでに折れていた。

 周りの者達も、鎧が砕けて傷を負っていたり、武器を破損している。

 「止めなきゃいけないんだ······!」

 シングは思い詰めた表情をしていた。

 ミレイは、そんな彼を見て溜め息を吐く。「仕方ないわね。あたしの剣を貸してあげる。あんたの剣と違って、少し短いけどね」


 ミレイは、左腰の鞘から剣を抜いてシングに渡す。

 「······ミレイ、ありがとな」

 「お礼なんていらないわ。あたしもサポートするから、結果で見せて」

 「ああ、言われなくても」

 シングとミレイは、ミノタウロス目掛けて駆け出した。


 距離を詰めると、ミノタウロスは大斧を斜めに振るってくる。

 「ミレイ!」

 シングは、宙に跳ぶ。同時にミレイは中腰になって、盾を構えた。

 シングは、その盾を台に更に跳んで、大斧の振り下ろしを回避する。

 そのまま、剣をミノタウロスの右手首に振り下ろしていく。


 シングの振り下ろした剣は、右手首を斬りつけるが、切断するに至らない。

 「浅いかっ!」シングが地面に着地した時、斧でミノタウロスの右手首を切りつける者がいた。他の冒険者だ。

 「そうゆーことなら、協力するぜ!」

 右手首は見事に、その冒険者の斧によって切断され、ミノタウロスの武器の大斧ごと飛んでいく。


 「良し、ミノタウロスは武器を失った! 後衛は魔法の詠唱を、前衛は時間を稼げ!」指揮官が指示を出すと、魔法使い達は呪文を唱え、前衛の者達は武器で攻撃していく。

 シングも剣で、ミノタウロスの脚を斬りつけていく。


 そして、後衛の詠唱が終ると指揮官が「前衛、距離を取れ!」と促す。

 ミレイとシング含めた前衛が、ミノタウロスから距離を取っていく。

 「魔法、放て!」指揮官の合図で、様々な魔法が放たれミノタウロスに被弾する。


 だが、再生能力を持つディザスター、ミノタウロスの傷はみるみる治っていく。ミノタウロスは咆哮を上げると、突如、宙に跳ぶ。

 跳んだ先は、己の武器、大斧が落ちている方。着地するとミノタウロスは、すぐさま右手で大斧を取る。

 次の瞬間、指揮官と魔法使い達等がいる後衛へ突撃していく。


 「なっ! 後衛、退け、退け!」指揮官が指示を出す前に、後衛の者達は逃げようとする。が、ミノタウロスの走る速度が尋常じゃなく、間に合いそうにない。

 「くっ、間に合わない!」

 既にシングは、助けようと駆け出していた。間に合うはずもなく、ミノタウロスは後衛に近付いて、大斧を横薙ぎに振るう。

 大斧は、指揮官の上半身と下半身を断ち、複数の魔法使いや神官をも切って、血にまみれさせていた。


 シングは、その光景を見て足を止めてしまう。

 「いっ······いやっ! 助けてっ!」

 一人の、神官服を着た女性が泣きわめいている。ミノタウロスは、神官の女性を切ると、後衛でまだ生きている者達に近付いていく。

 「逃げるんだ、早く!」シングが必死に促すが、「駄目です······足が震えて······」と一人の魔法使いが恐怖で動けずにいた。


 他の後衛の者達も同様で、動けずにいる。ミノタウロスは、大斧を左横に構えていき、水平に振るおうとした。その時。

 「止めろ!」

 シングの必死な叫び声が響いた。


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