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神聖具と厄災の力を持つ怪物  作者: 志一 ゆもも
神聖グラシア国編
29/102

二十八





 若い女性のその言葉に、聖女とニコラス教皇は顔色を変えた。

 「シェインがいなく······!?」

 聖女は、口を両手で覆う。

 「シェインがじゃと! ······宮殿内をくまなく捜すのじゃ! それと、神道兵にも通達して街中もじゃ!」

 ニコラス教皇は、そう指示を出した。


 「了承致しました! 失礼します!」

 若い女性は、慌てて広間を出ていく。

 「私もシェインを捜します!」

 聖女は、走って広間を出ていこうとする。と、ニコラス教皇が「なりませぬぞ! 聖女様、貴方もシェインと同様、大事なのですからな······何かあっては困るのです」と止めた。

 その言葉に対して、聖女は力強く言う。

 「それでも······。シェインの姉として、大人しくしている事は出来ません。私は捜しに行きます」

 「聖女様、お待ち下され!」

 ニコラス教皇は声を上げて止めようとするが、聖女は広間を出ていった。


 「ふぅ······困りましたな······」

 ニコラス教皇は、目を閉じてこめかみに指を当てる。

 「······あの、教皇様」

 シングが何かを言おうとする。

 「ああ······シング殿達をお忘れしておったのじゃ。今、部屋にお通しするので······」

 「あの、僕達も捜すのをお手伝いして良いでしょうか?」

 シングがそう言うと、ニコラス教皇はにこやかに笑う。

 「いえ、これはこちらの問題ゆえ、シング殿達の手を煩わせる訳には······。長旅でお疲れじゃろうから、部屋でおくつろぎ下され」


 シングはまだ何か言いたそうだったが、ミレイが発言する。

 「そうしますわ」

 ミレイにしては丁寧な口調だが。公的な場だからだろう。

 「それでは、そこの神道兵。シング殿達を部屋にお通しするのじゃ」

 ニコラス教皇の指示に、神道兵が答える。

 「はい、了承しました!」


 その神道兵によって、ミレイ、シング、リア、ヴェルスト、指揮官は宮殿内を案内される。




 案内されている途中。

 通路を駆ける足音が響いてくる。

 その足音は、一行の背後から近寄ってきていた。

 突如、少年らしき声が響く。

 「危ない! どいて、どいて!」

 一行は振り返る。

 次の瞬間、その少年はミレイにぶつかってしまう。

 「いたっ!」

 「うわっ!」


 少年は、ミレイの腹に乗っかる形で、倒れ込んだ。

 「だから、危ないって言ったのに······」

 少年はそう言うと、起き上がる。

 「シェイン様ではないですか!」

 神道兵は驚きの表情で声を上げた。

 「げっ! まずっ!」

 シェインと呼ばれた少年は、立ち去ろうとする。

 すると、立ち上がっていたミレイは、シェインの腕を掴んだ。

 「あんた、何か言うことあるんじゃない?」

 シェインは平然とした様子で謝る。

 「ああ、ごめんごめん。ちょっと急いでるから又ね」


 シェインはミレイの手を振り払おうとする。だが、微動だにしなかった。

 「離してよ」

 「いいえ、離さないわよ。あんたの謝り方に誠意を感じないわ!」

 「どんだけ、馬鹿力なんだよ······」

 シェインの言葉に、ミレイはかちんとくる。

 「ばっ、馬鹿力······ですって?」


 ヴェルストは「クククッ」と笑っている。

 「まあまあ······相手は少年だしさ」

 シングは、ミレイをなだめようとそう言った。

 「そうなのですよ、ミライさん! 落ち着くのです!」

 リアも落ち着かせようとする。

 「分かってるわよ」

 ミレイはそう言うが、表情は怒ったままだった。

 「だったら、ねえ、ちゃんと謝るから離してくれない?」

 シェインの言葉に対して、ミレイは「どうやら、あんた······今、この宮殿内の人達が捜してるシェイン様って奴じゃない。離すわけには、いかないわ」と断る。


 「ボクは······様なんて呼ばれる大層な人間じゃない······!」

 シェインは急に声を荒げた。その表情は、先程とは違って悲観的なものだった。

 「どうゆう事よ?」

 ミレイは、疑問に思って問う。

 「······」

 その質問にシェインは、押し黙ってしまった。

 次の瞬間、少年は膝を突いて苦しそうに胸を押さえる。

 「ぐっ······」

 ミレイは、様子がおかしいと思い、手を離して呼び掛けた。

 「あんた、大丈夫!?」

 神道兵が血相を変える。と、叫んだ。

 「これはいけない! 誰か、神官は御出(おいで)か!」


 「神官など呼ばなくても、私がいます!」

 柔らかでいて強さを感じる女性の声が響く。

 そこにいたのは、聖女だった。

 聖女はシェインに駆け寄ると、その左胸を手でそっと触れる。

 「シェイン、お姉ちゃんが来たからには大丈夫ですからね······」

 聖女がそう言い終わると、その手が輝き出した。

 「ソフィー姉ちゃん······ボク······」

 「今、楽になりますよ······」

 聖女ソフィーの言葉通り、次第に、シェインの顔色が良くなっていく。


 「もう大丈夫だよ······ソフィー姉ちゃん」

 シェインはそう言って、ゆっくり立ち上がる。

 「シェイン、心配したんですよ······。あなたは、体が弱いんですから······」

 「ごめん、ソフィー姉ちゃん。でも、大丈夫だったわけだし······」

 シェインの言葉に、聖女は溜め息を吐く。

 次に聖女ソフィーは、表情を改めるとミレイ達の方を向く。

 「······皆さん、お騒がせして申し訳ありません」

 「聖女様、気にしていませんわ」

 ミレイは、平然な顔でそう言う。

 「僕もです。少し驚いただけでして」

 落ち着いた様子で、シングもそう言葉を発した。

 「リアも大丈夫なのです!」

 「オレも別にだ······」

 リアはいつも通りに、ヴェルストは気だるそうに答える。

 ヴィンランド王国の指揮官も、「とんでもありません」と畏まっていた。


 聖女ソフィーは、「そうですか······」と安心すると、話題を変える。

 「皆さんに伝え忘れた事があるのですが······今この国には、ディザスターが現れているんです」

 「はい、ヴィンランド国王陛下より聞いています。僕達も、そのディザスターを討伐するため、この国に来ましたので」

 シングの言葉に、聖女ソフィーは明るい表情を見せた。

 「では、ディザスターと戦ってくれるのですね」

 「勿論です」

 そこで聖女ソフィーは、暗い表情をする。

 「ですが一つ、悩みがあります。現在、宮殿内に保管されている神聖具だけでは、討伐出来るか分からないのです······」

 「それなら大丈夫ですわ」

 ミレイは会話に入り込み、シングに目配せする。

 「ああ······少しお待ち下さい」

 シングは、背負っていた白布に包まれている長いものを顕にしていく。


 暫くして顕になると、そこには一本の槍があった。

 聖女ソフィーは、口元を押さえて驚く。

 「その槍は······まさか······!?」

 「はい、鋭光の槍です」

 シングは、答える。

 「王都から持ち出していたのですね」

 「先導の騎士の一人······あの人に頼まれましたから······」

 聖女ソフィーは、そう言うシングの表情を見て、先導の騎士なるその人がどうなったのかを察した。


 暫く、沈黙が続く。


 やがて、聖女ソフィーが沈黙を破る。

 「これで戦力の方はなんとかなるでしょう。四日後に増援の部隊を送る予定ですので、その時はお願いしますね」

 「はい、お任せ下さい」

 シングは力強く答えた。

 「では、シェイン。部屋に行きますよ」

 聖女ソフィーは、シェインの背中を押して連れていこうとする。


 「ちょっと待って、ソフィー姉ちゃん!」

 シェインはそう声を上げると、ミレイ達に向き直った。

 「さっきはごめん······あの、お兄さん達に協力したいんだ!」

 ミレイとシングは訝しがる。

 「協力······? あんたみたいな子供に出来る事なんてないわよ」

 「まあまあ、ミレイ。僕達で良ければ聞くよ」


 「実はボク······救世主と呼ばれた人物と同じ力を持ってるんだ」

 シェインの衝撃の告白に、ミレイ達は一瞬顔色を変える。

 だが。

 「あっ? こんなガキがか?」

 ヴェルストは疑いの眼差しで見ている。

 「あたしも同意ね。こんな少年が、救世主と同じ力を持ってるなんて信じられないわ」

 「リアもなのです」


 「救世主っていうと、二七〇〇年前に神聖具を創りだし、仲間と共に五体のディザスターを倒した、あの? ······僕もちょっと信じられないかな」

 「本当なんだよ! なら今、創って見せるから!」

 「シェイン、いけません!」

 聖女ソフィーは、顔色を変えてシェインの行動を止める。


 「ソフィー姉ちゃん、止めないで······」

 「私をあまり、困らせないで······ね?」

 聖女ソフィーが懇願するように言うと、シェインは「······分かったよ」と大人しくした。


 「では、皆さん、失礼しますね」

 聖女ソフィーはそう言い終え、シェインを伴って去ろうとする。

 が、最後に一言、ミレイ達に「皆さん、夕食後にお話があります······」と伝えるのだった。


 今度こそ、聖女ソフィーはシェインを連れて、去っていった。



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