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神聖具と厄災の力を持つ怪物  作者: 志一 ゆもも
ディザスターとその力と神聖具
14/102

十三





 翌日。

 朝食をとり終って、街中に出ようとすると、ミレイとシングは呼び止められる。

 丁度、王宮の出入口の門前での事だった。

 「街中にお出掛けですか?」


 二人に声を掛けてきた人は、垂れ目気味の目の美形で男性だった。

 前髪は左に流しており、揉み上げに相当する毛は肩まである。

 後ろ髪は肩甲骨まであり、一つに束ねていた。


 「そうですが······」シングは質問を肯定した。

 「あんた、誰よ?」ミレイは即座に問い返す。

 「これは失礼致しました。(わたくし)は、レナード・ジェイ・グリウォン。一応、王国魔法使団(おうこくまほうしだん)の長をやらせて頂いております」

 レナードは、会釈をしつつ、名乗った。


 「グリウォンさん。それで何か用があるんですよね?」

 シングのその言葉に、レナードは答える。

 「······二方に会わせたい者がいます。昨日(さくじつ)、聞いたと思いますが、二方の仲間になる者です。案内しますのでこちらへ」

 レナードは、ミレイとシングを促すと歩き出した。


 「それで、仲間になる人は、どんな方なんですか?」

 歩きながら、ふと、疑問に思ったシングは質問する。

 レナードは、一瞬の間をおいて答える。「······それは優秀な者ですよ。只······問題はありますが、優秀です」

 「そうですか······」

 シングは、不安そうな表情を微かに見せる。

 ミレイはミレイで、何か考えているような、表情をしていた。

 「もし、······だったら······?」

 何か心配事でもあるのだろうか?




 「そろそろです」

 レナードは、王宮から少し離れた所にある建物を見て、そう言った。




 程無くして、ミレイとシングは、レナードの案内の元、目的地に着いていた。

 「······ここは?」

 シングの疑問に、レナードは答える。

 「ここは見ての通り、魔法使団の者達が訓練を行う場です」

 シングは周囲を見渡す。

 すると確かに、魔法使団の者達が(まと)に向かって魔法を放ち、訓練をしていた。


 「それではこちらへ」

 ミレイとシングは、レナードに促されて後を付いていく。

 レナードの向かった先には、一人の女性がいた。

 声を掛ける前に、向こうからこちらを見てくる。

 「あっ、師匠~!」

 その女性から発せられた声は、間の抜けたものだった。


 女性は、十代後半位に見える。

 髪は艶やかなストロベリーブロンドで、右横で結っているサイドテールだ。

 それと髪は、ウェーブがかっており、前髪は下ろしている。


 瞳は、明るく綺麗な緑の色をしていた。

 服装は、白の衿付きシャツ。

 シャツの中央にはフリルがあしらわれており、刺激が強い桃色だ。

 下は、青紫色のタイトスカートを穿いている。

 白色のブーツは膝丈で、折り返し部分の縁取りが桃色。


 魔法使いに相応しい、白色のフード付きローブも羽織っていて、縁取りが青紫の色味だ。

 左手には、杖を持っていた。


 ゆるんだ雰囲気の女性は、駆けて近付いてくる。

 そして止まると、女性はレナードに声を掛ける。

 「師匠、リアに何か用なのですか?」

 「リア······いつも言ってますが、人前では魔法使団長と呼んで下さい」

 「了解です、魔法使団長!」

 リアは、敬礼しつつ明るい声で言った。


 レナードは、こめかみを指先で押さえて、溜め息を吐く。

 「それはそうと、リア。あなたに紹介したい方がいます」

 「もしかして、リアが仲間になる方ですか?」

 リアはレナードに問う。

 「もしかしなくても、そうですよ。あなたが仲間になるのは、この二方です」

 「シングです、よろしくお願いします」


 シングが自己紹介すると、「あたしは、ミ······」とミレイも名乗ろうとするが。

 「リアは、ビビッときました!」

 リアは、突然そう言って、シングに近寄ると手を握る。

 「シングさん!」

 「何ですか······?」

 「リアとお付き合いしましょう!」

 リアの申し出に、シングだけではなく、ミレイ、レナードも目を丸くする。


 「その、なんていうか······」

 シングは、答えづらそうにしていた。

 「リアじゃ、だめなんですか? どこがだめなのか言ってください!」

 リアは、顔を近付ける。

 「······その······こうゆう事は、初対面では駄目だと思うんですが······」

 「だったら······」

 リアはそう言うと、次の瞬間、表情を明るくさせる。

 「初対面でなければ、良いんですね? 分かりました」


 シングは、すっかりリアのペースに呑まれていた。

 すると、ここまで(だんま)りだったミレイは声を上げる。

 「さっきから聞いてれば、あんた何なのよ! 困ってるじゃない!」

 リアは、その言葉でミレイに気付く。

 一瞬、間が空いた。だが、すぐに言葉を返す。

 「あなたは、誰ですか? それに、これはリアとシングさんの問題です!」


 「あたしは、ミレイ・リィンザーよ! それと、あんた達だけの問題じゃないわ!」

 「何かあるって言うんですか?」

 リアは、ミレイに問う。

 「(おお)ありよ! あたしとこいつは、幼なじみで許嫁(いいなずけ)なんだから!」

 「許嫁······二人が······?」

 リアは、顔を俯かせる。

 「そうよ! 何か文句あるっていうの!?」


 ミレイの言葉に、リアは黙ってしまう。




 暫くして、リアは顔を上げると声を発した。

 「そんなの関係ありません! 恋というのは、障害があって熱く燃えるものです! ねっ、シングさん?」

 「それはそうだけど······僕には······」

 シングが言い切る前に、ミレイが割って入る。

 「なっ!? 関係あるわよ! それより、さっきから近いのよ、あんた!」

 ミレイは、シングの手からリアの手を、引き離そうとする。


 「痛いですっ!」

 リアは声を上げつつ、抵抗した。

 ミレイも更に、力強く二人を離そうとする。

 が、そこでリアの背後にいたレナードが、彼女の頭に向かって手刀をかました。

 「いたっ! 魔法使団長、何するんですか~!」

 リアは、両手で頭を押さえる。

 「リア、あなたは、やり過ぎです」

 レナードは、あきれ顔で溜め息をついた。


 「お二方、申し訳ありません······。(わたくし)の弟子が······」

 レナードは、頭を下げる。

 「いえ、気にしないで下さい。只、突然の事で驚いただけで」

 シングはそう言うが、表情が苦笑いだ。


 ミレイはミレイで、リアを見据えていた。

 (これだから、嫌な予感がしたのよ······。リア······。あいつ、油断出来ないわ······)

 ミレイは、胸中穏やかでなかった。



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