十二
「確か、ディザスターの襲撃に遭ってだったな」
国王の言葉を、シングは否定する。
「いえ、ランカスター王国が滅んだのは、アルドーク帝国が攻め入って来たからです」
明かされた真実に、国王と宰相は目を丸くする。
「なんと······!?」
宰相は、動揺をあらわに声を上げた。
国王はそれから、一拍置いて言葉を発する。
「······それが本当ならば、平和条約に抵触しているな。なあ、ウォルソン宰相?」
「ええ、そうですとも」
国王の言葉に、宰相は同意した。
続けて宰相は、重い雰囲気で国王に問う。「して、陛下。どのように致しますか?」
「決まっているだろう? アルドーク帝国は、暫く泳がしておく」
「そうですか。······訳を問うても宜しいですかな?」
「今はまだ、復活したディザスターが二体残っているからな。帝国と争っている時ではないのだ」
「では、ディザスターを討伐した後ならば、帝国と決着をつけると?」
「当然だ。アルドーク帝国には密かに監視をつけろ。良いな?」
「了承しました。そのように手配致します」
宰相は軽く頭を垂れる。
「さて、シング・オブ・ランカスター。これで良いか?」
「はい、問題ありません」
「それでは、神聖グラシア国へ出立するまで、王宮でゆるりとするが良い。出立は三日後だ。二日後には、この王都で宴がある」
国王はそこで、機嫌良さそうに口角を上げる。
「良ければ、その宴も楽しむといい」
国王のその言葉を最後に、謁見の時は終わったのだった。
太陽が沈み、まだ間もない時、ミレイは床に就いていた。
不意に、扉をノックする音が響く。
「誰よ?」
「僕だよ。ミレイ」
「なんだ、あんただったのね」
ミレイは、寝台から出て立ち上がる。
「良いわ、入りなさいよ」
「それじゃ、失礼するよ」
シングは、扉を開けて中に入った。
扉が閉められると、ミレイの方から話を切り出す。
「それで何か用なの?」
「うん、話があってさ······。まずはバルコニーに出ようか」
シングは先に歩いていくと、バルコニーに出ていく。
ミレイもその後を付いていき、バルコニーへ出ていった。
ヴァルコニーに出てから、シングは中々話し出そうとしない。
ミレイは、無言で彼方を見つめていたそんな彼を、眺めていた。
すると不意に、「ミレイ······」とシングは声を掛ける。
ミレイは慌てて前を向く。
「な、何よ?」
「ごめんよ······。すぐ、元の姿に戻してあげれなくて······」
「なんだ、そのことね。別に良いわよ。残り二体、ディザスターを倒せば、元に戻れるんだし」
「でも······! 僕は自分自身を許せない······。ミレイが、今の状態になったのだって、僕を庇ったからだ」
シングは暗い面持ちで俯く。
「あんたは昔から変わんないわね。そうゆうところ。あんたが、気にする必要ないのよ。庇ったのだって、あたしがそうしたかったからだし」
「でも!」
シングがそう声を上げると、ミレイは人差し指で彼の口元を抑えた。
「『でも』は無しよ。もう、この話は終りにするわよ」
「分かったよ······。最後に一つ言いたいことがあるんだ」
シングは、ミレイの顔を見据える。
「何?」
「もし、体に変調が現れたら僕に真っ先に言ってほしい。······副指揮官さんも、このままの状態が続く訳はないって言ってたし」
「分かったわ。その時は伝えるわよ」
話が一通り終ったミレイとシングは、室内に入っていく。
「ミレイ、お休み」
シングは、そう言って部屋を後にしていき、その後ミレイは、床に就いて目を閉じた。




