第七章 結末
「確かに撮ったのは私ですけど、ツイッターに載せたのは私じゃないですよ?どうして私だけが…」
そこまで言うと、キッと強くにらんで敵対心を露わにした。
「…まあ、それもそうだな」
後輩に噛みつかれても動揺しない元部長サマはいいコト思いついたという風にニヤっと笑った。
「顧問を通して部で話し合ってもらう」
「…え?」
「だって、紅羽の言う通り、紅羽だけに言ってもどうしようもないし。水泳部のLINEグループに送ったんだろ?じゃあ拡散したのは水泳部の連中ってわけだ。一件落着じゃないか?」
「それ以上に広範囲に広まった可能性はあるけど、そうしてもらったほうがいいかもね」
「じゃ、そういうことで。オレらはもう受験勉強しなきゃいけないから」
「あ、紅羽ちゃん。誤解しないようにハッキリ言っとくけど、私と蓮はただの幼馴染で付き合ってないから」
こうして私たちは言いたいだけ言った後、茫然と立っている紅羽ちゃんを置いて、何度目かの青に変わった信号をわたった。
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その後。昨日に引き続き、ピアノの個人レッスンを終えた私は一人で家に帰っていると、近くの公園のブランコに座っている見知った人影が見えた。
「…千春?」
思わずつぶやくと聞こえてしまったのか、千春はゆっくり顔を上げた。
「琴葉」
その眼には、今にもこぼれそうな涙が浮かんでいた。
「千春っ…!」
私は乗っていた自転車を乱暴にとめると、千春の細い身体に抱きついた。
「琴葉…」
もう、千春の目から涙が止まらない。
なにか慰める言葉をかけてあげたいけれど、何も言葉が浮かんでこない。
-私にもっと語彙力があったら。
軽く自己嫌悪に陥りながらも千春の背中をやさしくさすり続けた。
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「海と別れた」
「え?」
ようやく泣き止んで口を開いたと思ったら、急な告発に私のほうが驚いた。
「今日ね、二人でちゃんと話したんだ。誰にも見られたくなかったから、みんなが学校に行ってる間に」
暗くて表情がよく見えないけれど、ぽつりぽつりと少しさびしそうに続ける。
「琴葉も知ってるでしょ?ツイッターのこと。割と前からあったんだけど、だんだん耐え切れなくなってきて。もういいやって思って、私から言ったんだ」
「…海はなんて?」
「一旦戻ってもいいかもねって。お互い受験が終わったらやり直そうって言われたけど、どうするかまだ分からない。
もう疲れたんだよ。初めは爆ぜろとかリア充め~みたいな感じでふざけが入っているのがわかってたからまだ大丈夫だった。でも最近は『海には千春じゃ釣り合わないじゃん』とか『なんでこいつら付き合ってんの?』みたいなマジなツイートとかリプを見るようになって」