第六章 意外な犯人と反論
蓮との帰り道。学校を出たところで後ろから視線を感じたけど、私の気のせいだったみたい。
少し歩いて、家の前の横断歩道まで来ると、蓮はバッと後ろを振り向いた。
私もつられて後ろを見ると、そこにはスマホを構えた女の子が電柱の影に立っていた。
「おいっ!」
まさか後ろを振り返って見つかるとは思わなかったのか、女の子はおろおろしながら逃げた。
しかし、水泳で鍛えた脅威の瞬発力を持つ蓮に敵うはずもなく。50メートルも走らないうちに追いつき、片手でスマホを持った手をつかみ、もう片方の手でスマホをすばやく取り上げた。
「何してんだよ、紅羽!」
「え?紅羽ちゃん?」
最近会ってなかったのと、髪型がいつもおだんごに結んでいたのをおろしているっていうので分からなかった。よく見れば水泳部の1つ下の学年の後輩、高峰紅羽だった。
「どうしてお前がこんなことしてるんだよ!」
蓮が問い詰めても、紅羽ちゃんは口を噤んでうつむいていた。
蓮が困ったように目線をこっちにやると、お手上げ、と言うように首を横に振った。
「紅羽ちゃん」
私はできるだけ重々しくならないように、でもしっかり伝えなくちゃいけないから、口を開いた。
「海と千春のも、紅羽ちゃんが撮ったの?」
何も反応がない。これは肯定とみなして良いんだろうか。
「私と蓮のやつも、ツイッターに載せるの?」
すると、紅羽ちゃんは驚いたように顔を上げた。
「ツイッター?」
「千春と海のデート写真、載せたでしょ?」
「私、ツイッターはやってないです」
「じゃ、何やったんだよ!!」
強い口調で蓮が割り込んできた。
「ちょ、蓮は黙っ「私はただ、水泳部2年のLINEのグループに載せただけです!」
「え?」
「私はツイッターのアプリもアカウントも持っていません!!」
「なんだって⁈」
てっきり、この流れで紅羽ちゃんが全部の原因だと思ってた蓮はあっけにとられた顔で呆然としていた。
でも、私は知っている。LINEのトークに送られてきた写真は、簡単に保存できるということを。
「たぶん、そのグループの中の誰かが保存してツイッターに挙げちゃったんでしょ」
「ごめんなさい。こんなことになるとは思ってなかったんです…」
「じゃあ、なんでまたオレらのことを撮ってたんだよ!」
それについては私も同意見だ。ごめんなさいと言っている割にあんまり申し訳ないと思ってなさそうだし、また撮っていたのはグループに載せるためだろう。
「…」
また黙り込んでしまった。そりゃそうだろう。私だったら先輩たちの前で盗撮の理由なんて絶対話せない。もっとも、それ以前に先輩たちのラブラブショットを撮ったりしないが。
「紅羽ちゃん。もうこんなことは止めてほしい。紅羽ちゃんが撮った写真がツイッターに挙げられたせいで、千春も海もこんな大事な時期に苦しんでる。だから「なんで私だけがこんなに言われなきゃいけないんですか⁈」
「え?」
予想外の反論に、私も蓮も驚いた。
「確かに撮ったのは私ですけど、ツイッターに挙げたのは私じゃないですよ⁈どうして私だけが…」