第五章 嫌な予感
「…それより、拓も二人のことについてなんか知ってんの?」
放課後の図書室にて、急に休んだ千春と海が心配になってるのか、みんなの表情も暗い。
「たぶん、俺の知ってんのも琴葉と同じだと思う。蓮も知ってるんだろ?」
「…ああ」
「えーっと、三人だけで分かりあってないで早く教えなさいよ」
亜美がいら立ったようにペンをくるくる回しながら急かす。
「いや実はツイッターで二人のデート写真が拡散されてたんだよ」
「は?」「え?」
「しかも、悪意が感じられるリプライ付きで」
私がため息をつきながら答えると、蓮が付け足した。
「俺の方には、グループLINEで回ってきたぜ。水泳の中総体直後らへんから」
「え?それって7月終わりってこと?まだ付き合う前じゃん!」
「ほんっと、何がしたいんだろうな、あいつら」
「ちょっと待って!LINEってことは、誰が送ってきたかわかるじゃん」
秋実が思いついたように手を挙げる。
「いや、そいつが誰かはわかるんだけど、そいつが撮ったわけじゃないから、写真の出どこはわからん」
「まあ、とりあえずそこじゃなくて、二人をどうするかじゃない?」
亜美がうんざりしたようにペンをカタカタ鳴らした。
「どうする、とは?」
拓が眉を片方上げて、先を促す。
「だって、二人ともこのまま休んでたら、やばくない?」
「それはないだろ。第一俺ら一応受験生だぜ?こんな時期に学校休み続けるのは、頭おかしいだろ」
「受験生なのにこんな時期に図書館でずーっとしゃべっているのは、どこの誰かしら?」
急に後ろから声がして振り返ると、図書室の先生が底冷えする笑顔で立っていた。
「ここは図書室なんだから、静かにしなさい」
「はーい」
なんとなくもやもやした気分のまま、私たちはそれぞれペンを取った。
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「結局、どうなるんだろうね」
帰り道、家が隣である蓮と一緒に帰っていると、不意に後ろから視線を感じて振り返った。
「…どうかした?」
「いや、誰かがじっと見てるような気がしたんだけど、気のせいみたい」
「なんか、嫌な予感がするな」
そう言って、蓮は歩くスピードを速めた。
「そういえば、一緒に帰るの久しぶりだね。1年生の時以来?」
「…たまには家で勉強しようと思って。ほら、ずっと塾にいるのも飽きるから」
「なんだかんだ言っても、蓮は毎日図書室で勉強してその後も直塾して、頑張ってるよね。私は図書室毎日は行ってないし、直塾もしたことないもん」
「オレも図書室は毎日じゃないけどな。…絶対に受かりたいから」
「県で1番の第一高校だもんね。さすが蓮だわ」
「そういう琴葉は?」
「私は…」
正直、まだ決まってない。夏休みに何校かオープンスクールは行ってみたけど、どこの高校ががいいのかあんまりわからなかった。
そして、もう少し歩いた後に事件が起こった。