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一日の始まり
男が一人、沼地を歩いていた。沼地といっても、特に変わった所はない。
ただ、常に毒の雲が覆い、毒霧が立ちこめ、底なし沼が無数に存在し、いかなる生物も五分と生存できないだけだ。
そう、ちょっと暗くて広いだけの、ただの沼地だった。――彼にとっては。
男の容姿についてだが、人間の成人男性にしては背丈が低く、顔に包帯のようなものを巻き、黒のローブを身に纏い、黒手袋に黒のブーツと、まるで暗殺者のような出で立ちであった。
「……今日は、いい天気だな」
自宅を出て、少し散歩してから沼地を出て、それから街へ向かう。
男の一日は、概ねこのように始まるのだった。