安定
いつか見た世界はあまりに美しく
ただそれだけだと分かっていながら
私は静かに涙した
自分が如何に幸福な人間であるか
最近頻繁に痛感する
画面越しの世界は
温室にいる私には
あまりにも怖い
世界のどこかには必ずいる
自殺志願者たちに
思い出したように
生きていればいいことがあると
嘯くことに慣れている自分に
狂気を感じることに
まだ大丈夫だと
安心する
自分が満たされているとは
考えないようにしている
それは私の可能性を摘む行為だから
けれど客観的に見れば
概ねの当たり前を損なうことなく
生きていくことを許された
私は間違いなく満たされているだろう
結局その時にならなければ
分からないのだろう
今できることは
思考実験くらいだ
想像力の絶えた頭脳では
その試行すらも
意味ないことかもしれないけれど
どうなってもいい
強くありたいと
ひたむきにそれだけを願っている
罵倒されようと
軽蔑されようと
嘲笑されようと
それでも構わないと
笑顔でいられる強さがほしい
理不尽でも無遠慮でも不条理でも
そのただ中で
静謐でありたい
いつか見た世界はあまりに醜く
ただそれだけだと理解しながら
私は憚りなく呵った