第4話 かけらの鏡
しばらくして、翔吾は鏡子の手紙を見つける。
それは、翔吾の部屋の本棚に収まっていた一冊の本の中にあった。
失踪する前の鏡子の手紙だと思った。
本はどこか懐かしい感じがした。
表紙には3人の名前が書かれている。
交換日記のようだった。
「あ、あれ?交換日記だよな…。」
なんで自分の部屋に日記があるのか判らなかった。
ページをそっとめくる。
日記には、暗黒時代の思い出が書かれていた。
入院していた頃。
人生のどん底だった。
懐かしさから、翔吾は無心に読み続けた。
苦しいながらも、懸命に生きたあの頃。
流一、鏡子に励まされながら生き抜いた日々。
どうして、一体どうして?
記憶の壷をひっくり返したかのように一気に思い出す。
どうして、今の今まで忘れていたんだろう?
翔吾は鏡子の手紙を開いた。
そして、雨宮鏡子が唯一残した痕跡を、何度も読み返していた。
『こんにちは。
翔吾君、元気ですか。
鏡子がいなくなった事で落ち込みすぎてませんか?
雨宮鏡子は誠に勝手ながら失踪します。
正直私も残念です。
理由については、この手紙が誰に見られるのか判らないので書きません。
もしも、私に会いたくなったたら…
全力で忘れてください。
雨宮鏡子を翔吾君の記憶から消し去ってください。
それが駄目なら、昔書いた交換日記でも読んで気を紛らわせてください。
何をしても、もう鏡子とは会うことができません。
だって、この地球上のどこをみても雨宮鏡子はいないのですから。
それでは、お元気で。
雨宮鏡子
』




