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4-3 Iと犬の絶叫
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青い空を背に、掲げられた二人の顔は晴れやかで無垢だ。
まるで神の使徒に救われた二匹の子羊のように。
だが私には彼らの末路が一つしか想像できない。
窮地を救われたからといって、その先には供物として捧げられる末路しか見えない。
群れる人々もまるで羊だ。
同じ表情で、同じ言葉を発するだけの人々。
自分たちの状況をまったく理解していない。
先導しているのは明らかに太陽仮面――私の息子だ。
息子の前に立ち尽くしていた孫も、今や群衆に飲まれている。
(これは正しいことなのか……?)
いや、確かに息子は正しいことをした。
炎の吹き出すビルから二人の泣き叫ぶ人物を救ってみせた。
それに歓喜する人々――それも至極普通のこと。
だが今。
この場で起こっているこの現象はいったい――?
「にゃあああ!」
ポチが一際甲高い声で鳴いた。
「け……健一い! 美緒お!」
私も腹の底からその名を呼んでいた。
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