間抜けな 間抜けな男の話
昔、昔 いまよりかなり昔の話
あるところに二人の兄弟が居ました
兄は頭がよく、弟はすこし間が抜けていました。
ある日二人の親が死んで、二人は財産の土地と家畜を分ける事に
なりました。
兄は間抜けな弟にいいます。
「 弟よ お前には東の土地をやろう あっちは西の土地より
だいぶ広いし、お前が得をするからそれでいいな? 」
間抜けな弟は答えます。
「 ありがとう兄さん ぼくに広い土地をゆずってくれて 」
間抜けな弟は兄にお礼をいいます。
そして続けて、兄は間抜けな弟にこう言います。
「 弟よ お前にはこの小さな子牛をやろう
こいつは子牛だからエサもあんまり食わないぞ 」
間抜けな弟は答えます。
「 ありがとう兄さん ぼくに子牛をゆずってくれて 」
間抜けな弟は兄にお礼をいいます。
土地と子牛をわけてもらった間抜けな弟は、東の土地へ行ってみました。
しかし見てみると畑は雑草や石コロで一杯。子牛も痩せて全然元気がありません。
ところが間抜けな弟は、雑草をどんどん取り始めました。小石もどんどん
取っていきます。
間抜けな弟はこれが普通と考えたのです。
間抜けな男は、荒れてる畑をどんどん耕します。雑草を燃やし、その灰を
畑に振りました。あまった雑草は子牛にあげます。子牛は雑草を美味しそうに
どんどん食べます。子牛が出したフンも畑に振りました。
間抜けな弟は、一生懸命畑を耕し、子牛を愛情をもって育てました。
そして1年も経った頃。
荒れ放題だった畑は、立派な畑になりました。あの子牛も今では
立派な牛になりました。
牛はめ牛だったので牛乳が飲めました。畑も一緒に耕します。
立派になった畑や牛を見て兄は
「 嗚呼、こんな事なら東の畑もあの子牛もやるんじゃなかった 」
そういうと手足をバタバタさせて悔しがります。
それからしばらく経った頃、兄弟に結婚の話がきました。
結婚の相手は姉妹で、姉は美人で綺麗なドレスを着ています。妹は痩せて
ガリガリでゴホゴホ咳をしていました。
兄は間抜けな弟はそっと囁きます。
「 弟よ お前は妹と結婚したらどうだ? 姉は立派なドレスをきてるから
金がかかるに違いない 」
「 そうだね兄さん 兄さんがそう言うなら、僕はそうするよ 」
間抜けな弟は答えます。
兄は綺麗な姉を貰い、弟は病気の妹をお嫁さんに貰いました。
間抜けな弟は、お嫁さんの病気を治そうと一生懸命看病しました。牛の
お乳を飲ませたり、病気に効くという薬草も森から採ってきて飲ませました。
そして1年も経った頃。
痩せてガリガリだったお嫁さんは、すっかり体が良くなりました。
体もふっくらして、顔もツヤツヤ。健康そのもです。
咳だってもう全然しません。
すっかり体がよくなったお嫁さんは、一生懸命働きます。
優しい旦那様のために美味しいご飯を用意して、家の中は
いつも綺麗でピカピカです。そして二人はとっても仲良しです。
いつもニコニコ笑っています。
元気になったお嫁さん見て兄は
「 嗚呼、こんな事なら姉となんか結婚するんじゃなかった
あいつときたら、ドレスばっかり買って、メシも掃除も
しやがらない 」
そういうと手足をバタバタさせて悔しがります。
そしてしばらく経った頃、兄が間抜けな弟に家にきて
こう言いました。
「 畑にまく肥料が足りなくて困ってる お前の家の
肥料を少しわけてくれないか?」
「 そうですか、では好きなだけ肥料を持っていって
ください 」
間抜けな弟は答えます。
兄は肥料を山の様に弟の家から持ち出すと、肥料を畑に
振りました。しかし欲張ってもの凄く一杯肥料をまいたので、
逆に作物が枯れてしまいました。
兄の畑の作物はほとんど枯れてしまって、食べるものがなくなって
しまいました。
兄夫婦が食べるものもなくなって、お腹を空かせて途方に暮れていると
誰かが家の扉を叩く音がしました。
扉を開けると弟夫婦が立っていました。二人は大きな鍋にパンを
一杯抱えています。
「今晩は兄さん 兄さん達が困っていると聞いてシチューとパンを
持ってきました どうぞ食べてくださいな 」
そして私の畑を半分差し上げますので、そこから作物を
とってください」
弟はニコニコした顔で兄に告げます。
それを聞いた兄は
「 弟よ 俺は散々お前に意地悪をしてきたのに
こんな俺を助けてくれた上に、畑まで・・・・・・
すまない 本当にすまない」
兄をおいおい泣き出して、間抜けな弟に謝りだしました。
「 なにを言ってるんだい兄さん? ぼくは兄さんのお陰で
あんな立派な畑や牛をもらって、こんな素敵なお嫁さん
までもらえたんだよ
僕は兄さんに意地悪されたなんで、一度も思ったことは
ありません 」
間抜けな弟は、不思議そうな顔をして答えます。
それを聞いた兄は、またおいおい泣きながら弟の手を握り
謝ります。わけが判らない間抜けな弟はキョトンとした顔で
見ています。
それから兄は、間抜けな弟に意地悪をしなくなり、兄弟仲良く
末永く暮らしまたとさ。
お終い。