転換期【オリジナル同】
丁度こちらの季節で
一年半を過ぎたくらいのある日を境に
オルガの俺への態度が変わった。
キジやシカなどの獣を弓で仕留められるようになったせいか。。。?
少しは認められたかな?
何が変わったかと言うと
食事の一品が増えるようになったり、(肉が俺にもでるようになった‼︎)
ねぎらいの言葉をかけてくれるようになったり。。。
「もう立派な相棒だね」
言われた時の嬉しかったこと。
キタキタキタ〜
明けない夜もないし、実らない努力もないのだ。
オルガとの関係が改善し、
生活が安定したのを見計らい
俺は動く事にした。
【俺】「ここら辺で、俺の一族がいる土地を知っていたら教えて欲しい。」
【オルガ】「森を抜け、赤土の丘を越え、太陽が沈む方に2日ばかり歩いた所にあんたの一族の町があるよ。ただ、あんたの一族と、魔軍の一軍が少し前だがぶつかったそうだから、充分用意してから行くのをオススメするよ。」
(こんな所に一人で住んでいた割に
意外とオルガは情報通だな。
近所に俺達以外見かけた事は無いのに。。)
『なぜ?』と聞いたところ、意外な回答だった。
なんでも、この森の近くにも交易商人が来ることがあり、つい数週間前にも住処の近くを通過して行ったと。
ちょうど俺が狩りに出かけている時でもあり俺は会えなかったが、その時、幾ばくかの蓄えと塩を交換したんだそうだ。
やっぱり、こういう僻地を旅するキャラバンは貴重なニュースソースなんだな。
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一族の町へ向けて、旅立つ話をしてから数日後、オルガより提案があった。
【オルガ】「一緒にパーティ組んで村まで行こう。」
パーティを組む事により、連携がスムーズになり、また、全体攻撃の能力も底上げされるらしい。
願っても無いことなので、お願いする事にした。
パーティか。。冒険者らしくなってきたなあ。
パーティを組むにあたっては、オルガより『魔法本による誓約』が必要と言われたので
誓約することとした。
古代ドワーフ語の呪文を唱え、
その後お互いの名前を呼び
本の上に手を重ねるだけだと。
オルガが呪文を唱えると
本が赤く光始めた。
その後、光が溢れ出し、オルガが自分の名前を名乗り、俺も名前を名乗った。手を重ねると光が急速に消えた。。
失敗したらしい。。
オルガが落ち込んでいた。
どうやら、この魔術に自信があったらしい。
失敗はありえない
呪文は間違いないと彼女はいった。
ん?
呪文は?間違いない?
若しかして?
名前に問題?
『仮名』ではダメなのか?
『真名』じゃないとダメ??
どうやら意外な事にドワーフ族には
一種類しか名前はないらしい。
他者との区別は住んでいる地名+名前ですると聞いた事がある。
名前の事を言うと、無茶苦茶怒られた。
『偽物の名前』を使うのは信頼関係が無いからだ、などなど。
【俺】(何故ここまで言われなきゃいけないんだ。別に騙そうとした訳じゃないのに。。
本当に親切なんだよな?)
【オルガ】「『真名』を使ってさっさとパーティー登録するよ」
そう言われた時、冷めた自分がいた。
『玄野 翔太』ではなく
『クロノス ヨタ』で誓約する
そう決めていた。
もし反応しなかったら?
また考えれば良い。
どうせまたなじられるだけだ。
哀しくなった。
因みに偽名で契約は起動した。
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翌日からオルガが倒れた。
若しかして、俺の為に精一杯魔力を使って倒れた?
オルガを信じれ無かった自分の愚かさを呪った。
考えてみればオルガも元々『真名』を名乗っていたのに。。。
罪滅ぼしに精一杯看病することとした。
村に行くのが、数日遅れても変わりないしな。。。
だが、看病2日目にして事態は動いた。
前回通ったというキャラバンが
帰りがけにこの家に寄ったのだ。
【オルガ】「私の事は置いてゆき。どうせ、片道3日の距離だ。『パーティ』を私と組まなくとも、キャラバンと行けば村までの安全も確保できる。
着いたら村の東側にドワーフの商館がある。
その商館の『タクルート』という館長に
この『本』を見せれば、いろいろ便宜を
図ってくれるだろう。
一週間後に無事に帰って来たら土産話でも、聞かせておくれ。」
確かに3日の距離だし、オルガも心なしか元気そうだ。すぐ行って様子だけ見て帰ってこよう。
キャラバンと一緒に村へ向かった。
キャラバンのトップは
『アクス』といって
人族で歳のころは30代半ば
いかにも旅慣れた商人といった感じだった。
【俺】「『ショウ』と言います。
町まで同行させて、もらってすみません。
こちらの地方のお金もってないので
雑用でも、見張りでも出来る事をさせて
もらいます。」
【アクス】「『アクス』だ。短い間だがよろしくな。しかし、驚いた。まだここいらにもデューパ族が残っていたんだな。。。
金は前金でオルガから貰ってる。
馬車だと、『ホーバル』まで 一日半ってとこだ。
短い旅だがよろしくな 。
しかし、養い親の為と言っても偉いもんだなあ」
【俺】( 前金?護衛代か。なんだかんだ言ってもオルガは心配してくれているんだな。感謝感謝。
町の名は『ホーバル』か。覚えておこう。
養い親の為?なんか誤解があるようだが。
どんな話をオルガはしたんだろう?
魔族と交戦関係にあるらしいから、不要な不安を抱かせない様、適当な作り話でも聞かせてるんだろうか。
後は、向こうの一族。果たして俺を受け入れ、バックアップしてくれるんだろうか。。)
不安と期待を乗せ一夜は過ぎた。
『ホーバル』へ向かう道中、空いた時間を利用していくつか疑問に思う事を聞くことにした。
この世界に住むものにとって
おそらく常識的なことも多分に含まれていたと思うが、『アクス』は気さくに答えてくれた。
【アクス】「森の引きこもりドワーフの
とこじゃまともな教育なんていうもんは
受けられんかっただろうしな。
何でも聞いてきな。着くまであとちょっと
だが知っている限り教えたるぜ。」
こんな感じでだ。
【俺】 (ならまずは、風の一族と魔族との戦についてだ。)
「『アクスさん』、魔族は頻繁に出没するもんですか?」
【アクス】「『アクス』で良い。それと、もう少しくだけた口調で良いぞ。
魔族なんてもんは、『ノルン』や、『ガリア』などの辺境や『カラリア洋』などの一部海域じゃなきゃほとんど見かけるもんじゃないぜ。
ここら辺じゃ、よほどのことじゃ無い限り
ま、会う事も無いだろうな。
モチロン例外って言うのはいくらでもあるもんだが。」
思えばここでもう少し詳しく聞いておけば、後で後悔しないで済んだのかもしれない。
ただ、この時はこの話題は流してしまった。
【俺】「ノルン?ガリア?それはどこに?」
【アクス】「『ノルン』はここ『ゴラン高原』を北に抜けたまだまだ先だ。
歩いて行くつもりなら止めておけ。
途中に『ゴス大砂漠』がある。
砂漠越え出来る装備があるのなら、3か月といったところだが、西の海を通って迂回するなら、ま、約1年だな。
『ガリア』はお前が住んでいた、大森林をまだ越え、『ラネニア山脈』を越えた先にある。
いずれにせよ、人境をはるかに越えた先だ。
」
【俺】(ここは『ゴラン高原』と呼ばれるところなんだな。)