5.しなしなキャベツ
「おばさん!新太ってもう帰ってきましたか?」
「まだよー。テストだけだから、お昼ごはんはうちで食べると思ったのにねぇ。すっかり冷めちゃったわ。」
おばさんは悲しそうに焼きそばを見つめた。
「わたしが焼きそば食べてもいいですか?」
「ええ!もちろんよ。あの子、きっとどっかで食べてきてるんだわ。連絡もしないで…」
おばさんは私に麦茶と箸を渡す。
机にコトンと置いた麦茶がゆらゆらと揺れる。
「いただきます!」
「全部食べちゃって構わないからね!」
おばさんの手料理は、もう10年以上食べている。いつも味が濃くて、見た目が少し残念。でも、美味しい。
「お夕飯、手軽なものにしようと思ってるんだけど、英玲奈ちゃんも食べにおいでよ。おばさん、用意しておくわよ」
「ほんとですか?やった!晩御飯楽しみにしてまーす!」
英玲奈は黙々と焼きそばを食べる。しなしなになったキャベツと時計を交互に見ながら、新太の帰りを待つ。
「おばさん」
「なぁに?」
「新太はお家でたくさん家族としゃべりますか?」
「そうねぇ…多分普通の子と同じくらいはしゃべってると思うわ。反抗期もきてなくてよく家族と話すほうかもね。」
「…もぐもぐ…そうですかぁ」
「一人っ子だから。明るい雰囲気にしようと必死に話してくれてるのかもしれないわ。昨日もね、クラスの男の子が静かになってる時にオナラしちゃって すいませーん僕です今の なんて言って大爆笑だった、なぁんて話してたわよ。」
英玲奈はニコッと笑って「新太楽しそうだなぁー」とつぶやいてから焼きそばを平らげた。
「ごちそうさまでした!じゃあ、お家でテスト勉強して、また夜に来まーす!」
「用意しておくわね。頑張ってね!」
英玲奈はいつものように玄関まで小走りし、スリッパを履いて斜め向かいの自宅に向かって帰る。
「あっ」
忘れていたものを思い出したかのように、ポケットからスマートフォンを取り出し 吉村くん に電話をかけた。
『もしもし?どした?』
「あの、吉村くん。あのね。私、前からずっと気になっててたの。その…付き合ってもらえますか?」
電話さきで唾をゴクリと飲む音がする。
『ほんとに英玲奈だよね?ドッキリとかじゃないよな?』
「もちろん、ドッキリでもないし、英玲奈だよ」
『うわ、嬉しいな。俺もずっと好きだった。両思いだったなんて信じらんねぇ…嬉しい。』
「私たち、カップル?」
『えっ?』
「私たちって、カップルって言えるよね?」
『俺ももちろん返事オッケーだし…絶対カップルだよ!』
「そっか!じゃあまたね」
英玲奈はブチっと通信をとぎると大きく背伸びをして よし!テスト勉強ー! と気合をいれて自宅の扉を開けた。
更新遅れました。取り戻します。つたない文章ですいません。初めての小説…どうぞ温かい目で見てやってください。
読んでくれてる方ありがとうございます。