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デイブレイク  作者: うなにゃぎ兄妹
セカンドパンデミア
7/17

崩壊

「んで、どうする?」

アイザックはエーデルヴァイスを握り感染者に向ける

「そーだな、まず地下の格納庫へ行くぞ」

天山が頭をポリポリかきながら答える

「でも地下って逃げ場ないじゃん!」

ロアンが突っ込みながら背中に下げていた人の身長ほどもある長刀を引き抜く

「ああそうさ!でもあそこには」

天山はかつて部下だった骸の首を跳ね鮮血を浴びる

「オレの装騎があるんだ」

「つまり格納庫まで行ってアンタの装騎を取ったらそいつで一掃ってことだな」

アイザックは感染者を足払いし倒れたところをエーデルヴァイスで脳天を貫く

「その通りだ!邪魔なヤツだけ片付けてとっとと行くぞ!」

天山が目の前の感染者5人を一度に斬り伏せ道をあける

「あーもう、待ってよ!」

ロアンが長刀をぶん回すと衝撃波で感染者が吹き飛ぶ

「ロアンやるな」

アイザック褒める

「こう見えても伊達に傭兵やってないからね!」

ロアンは喋りながらも長刀を手足のように扱う


階段を降りると死者と生者が鍔迫り合いをしていた

「皇帝陛下!早く逃げてくださがぁあああ!!」

兵士の一人が感染者に殺される

変わり果てた友に対し戦意を喪失するもの、貪られるもの、忠義を尽くし戦うものもはや地獄となっていた

「お前ら....生きて帰ってこいよ!」

天山は力強くイーストシミターを握るといくぞ!と声をかけ疾走する

廊下を出ると死者が押し寄せていた

「おい天山!こっちはダメだ!」

アイザックが迎撃しながら叫ぶ

「どーすんのよさもう!」

ロアンは狭い空間では扱えない長刀を納めナイフを抜くと逆手に持ち首へと滑り込ませる

「クソ、飛び降りるぞ!」

「「はぁ!?」」

アイザックとロアンが口を揃えて驚く

「だから飛び降りるんだよ!!」

天山は手すりを飛び越えると下に広がる屋根瓦へ着地する

「ロアン、先に行け!」

アイザックはエーデルヴァイスを変形させ銃にすると撃ち抜く

「わかった!」

ロアンが天山に続いて飛び降りる

「アイザック、こいつを使え!」

天山が黒いボールをアイザックに投げる

「なんだこいつは」

アイザックが不思議そうに一瞥する

「そいつから伸びてる紐を引き抜いたら奴らに向けて投げろ!」

「わかった!」

天山の言うとおりに紐を引き抜き投げると床に落ちる

「飛べ!」

アイザックに向けて天山が叫ぶと先へ進む

しかしアイザックは感染者に捕まり動きが取れない

「クソ!」

そのとき何かが閃光を放ちながら爆発し感染者たちが木っ端微塵となる

「ぐあぁああ!!」

爆風でアイザックは吹き飛ばされ下の屋根に落下した

あまりの衝撃に武器が手からこぼれ落ちそして叩きつけられる

とパキッという嫌な音が右腕から響く

「う!がぁ!!」

激痛にアイザックは叫ぶと上を見た

手放したエーデルヴァイスが持ち主の顔面目掛けて飛んでくる

アイザックは咄嗟に右に転がると頭があった場所にエーデルヴァイスの切っ先が刺さった

「あっぶね....」

そう呟くとよろけながら立ち上がる

背後には感染者が獲物を求めてなだれ込んでくる

アイザックは急いでエーデルヴァイスを引き抜くと右腕の激痛をこらえながら天山たちが向かった方向へ走る

「邪魔だ!!」

目の前の感染者の頭蓋骨を陥没させタックルし道を開く

「おらぁ!!」

更に近づく者の背骨を断ちながら進む

ふとアイザックの脳裏には3年前の出来事が走馬灯のようによぎる

自らの手で殺したフィーアのこと、先ほど殺されたシンのこと。己の無力さを恨みながら薙ぎ倒してゆく

その時左の壁が音を上げて穴が空き巨大な腕が伸びてくる

アイザックは咄嗟に前へ飛び出しそれを避ける

巨大な腕はアイザックを追うように向かってくる

「マジかよ!!」

アイザックは更に疾走する、目の前で群れる感染者たちとぶつかる直前に跳躍し頭上を通り抜ける

腕は相変わらず感染者を蹴散らしながら向かってくる

追いかける腕は速度を増して触れるか触れないかのところまで来た

目の前には下へ向かう階段が見えた。幸い感染者はいなかった

「間に合ええええええ!!!」

アイザックは態勢を低くしスライディングすると勢い余って階段を転げ落ち壁に激突する

「がはっ!」

衝撃で息が詰まる

頭上では巨大な腕が通り過ぎる。そして支える力がなくなった城は轟音を立てて崩れ天井がアイザックに向かって中腰でやっと通れる高さにまで落ちた

アイザックは這いつくばって階段を下るとやっと1階までたどり着いた

「天山たちは逃げ切れてるといいけど」

独り言を言っていると上から先ほどの巨大な腕が叩きつけてくる

「しつけぇよ!!」

アイザックは左に転がり避ける

腕は床に叩きつけられると壁のように迫ってくる

咄嗟に辺りを見回すと地下へと続く四角い穴があった

穴に向かって走る。感染者たちが立ちはだかる

「うああああああ!!!」

感染者に拳をぶつけ吹き飛ばすと迷わず落ちたが着地に失敗し転がった

「アイザック様!」

ロアンが駆け寄る

「早くアイザックをこっちに!」

天山が指示するとロアンは力任せに天山のほうへアイザックを投げる

頭上から巨大な腕が迫っていた

ロアンは素早く飛び退くと天山はそれを見計らい鉄の扉を閉めた

「はぁ.....はぁ.....」

「大丈夫かアイザック」

天山が手を差し出す

「なんとか....な」

アイザックが左手でそれを握ると立ち上がり自らのベルトを取り外し口で咥えると右腕を引っ張る

パキリという音を立て位置を整えた

「なんで極東に感染者がいるのさ!」

ロアンが苛立たしく鉄の扉を蹴る

「わからん、恐らく西洋からの渡来人が持ってきたんだろうな」

アイザックが息を整えながら答える

「でも人間まで感染者が出るなんて....」

「俺は一度3年前に見たことがある」

「アイザック....」

天山が静かに名を呼ぶ

「そいつは俺と同じ部隊で訓練兵時代からの相棒だった」

アイザックは静かに言った

「まさか」

「そうだ、そいつは感染した」

あの時の光景を鮮明に思い出しながら続ける

「俺はそいつを殺した」

フィーアを斬った感触がアイザックの腕を侵食する

「あの....なんて言えばいいか」

ロアンが狼狽える

「いいんだ、とにかく今はここを脱出しよう」

アイザックが遮る

「天山、装騎は?」

「あれだ」

天山は黒い装騎を指差した

「行こう、みんな」

アイザックは静かに告げると装騎へ向かった


「やっぱ一人用だから3人はキツいな」

天山は魔力を注ぎながら文句を言う

「動かせるの?」

ロアンが心配そうに言う

「部下たちがいつも整備してくれてるから問題はねぇよ」

黒い装騎は周りに収納された武器を拾い上げ装備する

「さて、素戔嗚出るぜ!」

アイザックたちを乗せた素戔嗚が一歩出ると繋がれていた管が抜かれる

腰の長刀を抜きながら進み防護壁の前に立つとそれを軽々と両断した

「すげぇ....」

アイザックの口から驚きの言葉が漏れる

「当たり前さ」

天山は得意げに言うと両断した防護壁を蹴破った

眼前には感染者の群れが広がっていた

「クソ!城下町も全滅か!」

天山が悔しげに操縦席の壁を殴る

「天山....」

アイザックは燃える街を見下ろす

素戔嗚は感染者を踏み潰しながら進む

「泣いているのか?」

アイザックが天山を見て聞く

「泣いてねぇよ」

天山は呟くように言う

「泣いてるとしたら瑞雲だ、オレじゃねぇ」

「そうか」

「前見て!」

ロアンが前方を指差す

目の前には巨大な鬼が暴れまわっていた

「あいつか、城をメチャクチャにしたのは....!!」

天山が唇から血が流れるほど噛む

鬼は素戔嗚に気づいたのかこちらを見ると雄叫びを上げ突進してきた

「民の仇!とらせてもらうぜ!!」

天山は力を注ぎ長刀を構えると鬼に向かっていった

鬼の棍棒と素戔嗚の長刀が火花を散らす

「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎!!」

鬼が咆哮し素戔嗚を弾き飛ばす

「がああああ!!」

大きく投げ出され家屋を薙ぎ倒しながら素戔嗚は大地を滑る

「くっそおおおおお!!」

素戔嗚は素早く立ち上がり鬼に飛びかかる

振り下ろされた棍棒を長刀で受け流し素早く横へ一閃する

「ざまぁ見ろ....!」

天山はうつむきながら呟く

鬼の上半身と下半身が分かれ崩れる

それを見届けることなく素戔嗚は母国を後にした




「ったく、あの剣抜いてここに来たけど人っ子一人いねぇじゃねぇか」

二振りの剣を背負った少年剣士は街道を歩きながらため息をつく

「たしかに私たちの知っている土地ではない感じがするね」

魔術師と思われる少女は辺りを見回しながら言う

「っていうかマジでみんなどこ行ったんだよ」

共に旅をしていた仲間を探していたがそもそも元いた場所とは大きくかけ離れた景色だったからワープか何かだと思っていたがこれは思ったよりも深刻な状況なのかもしれないと二人は薄々感じていた

「もしかしたら私たちは本当に違う世界に迷い込んだのかも」

「そんなことってあるのか?」

少年は少女のほうを振り向く

「タクトが私たちの世界に来たことを考えれば充分あり得るかと」

「うああああああ!!ただでさえ一度違う世界に迷い込んでまた違う世界とか脱出できる気がしねぇえええ!!俺こんな世界で一生を過ごすとか嫌だぞ!」

少年は頭を掻き毟りながら叫ぶ

「とにかく今は少しでもこの世界を知る手がかりを得ないと」

「つっても手がかりはこれだしなぁ」

少年は引き抜いた純白の剣を眺める

「ん?なんか彫られてる」

少年の言葉に少女は駆け寄り見つめる

「この文字はなんか古代文字にも似ているような....でも違う。ごめんわからない」

「仕方ない、まずは人を探そう」


1時間後

「やっぱ誰もいねぇ....どうなってるんだよここ。街並みはなんか昔の日本みたいな感じだけど」

「それってタクトがいた世界の国の文化だよね?」

少女は興味津々に聞く

「そうだな、ただここまで古い作りの家は俺も初めて見たけど....ん?」

少年は家の陰に何かが動くのを見逃さなかった

「誰かいるみたいだ、すみませーん!」

少年が駆け寄る

「タクト待って!」

少女は少年を追いかける


「あのちょっといいですか?」

角を曲がると一人の男が障子に寄りかかって座っているのを見つけた

男は痩せ細り虚ろな目で少年たちのほうを見上げた

「あ....あ.....」

男の口からうめき声にも似た声が漏れる

「大丈夫ですか?」

少女は男に水の入った水筒を手渡す

男は少女の手から水筒をひったくると落ち着きなく飲み干す

「お前ら....感染者か?」

男は落ち着きを取り戻し少年たちに尋ねる

「感染者?なんのことだ?」

「早くここから出て行け、とはいえ俺たちに逃げ場なんてないけどな」

「あの、感染者ってどういうことですか?疫病かなにかですか?」

少女が尋ねるも男は突然乾いた笑い声を上げる

「そうだ、逃げられない。俺の嫁もせがれもみんな、みんな!きははははははははははははは.....ははは」

ドサリ

男は糸が切れた人形のように力なく倒れる

「なんなんだよ、ここ.....」

少年の心に恐怖を覚える

「わからない、一体ここで何が起きているのかな」

少女は横たわる男も首筋に手を当てると静かに首を横に振った

「行こう、カノン」

少年は立ち上がるとあることに気づいた

人間に囲まれている

その人間たちはどれも生気がなく虚ろな目をしている。中には死んでもおかしくない傷を受けながらもよろよろと動く者さえいる

気がつくと空気は生温かく生理的な不快感を与える臭いを漂わせていた

「なんなんだよ?」

「ここの人たちだよね?」

二人は後ずさると横たわる男にぶつかった

「ひっ!」

少女の足に何かが絡みつく

それはつい先ほど息絶えた男の腕だった

少女は驚きのあまりその手を振りほどく

「あの、みなさんどうしたんですか?」

少年が声をかけるも誰も答えない

「言葉通じないのかな」

そう少年が考える

「タクト行こう。なんか怖い」

少女に言われるがまま少年は立ち去ろうとすると人の群れはまるで雪崩のように少年たちに襲いかかってきた

「うわあああああ!!」

少年と少女は驚きのあまり尻餅をつく

俺たちはこんな知らないところで死ぬんだ

そう思った時だった

「うおらあああああ!!」

男の雄叫びが上がる

何か液体のようなものが少年に付着した

「うわぁ!」

驚き少年は振り払おうとする

「立てるか?」

男が手を伸ばす。その手には少年が引き抜いた純白の剣が握られていた

「ありがとう」

少年は男の手を握り立ち上がった

「アンタらも運がないな。勇者か?」

男が問いかける

「この世界にも勇者がいるのか?」

少年が少し希望を持った眼差しをする

「この世界?よくわからねぇが勇者ならちょうどいい。付き合え」

男は肉食獣のような目を向ける

「一つ聞いていいか?」

「なんだ」

「何者なんだ?」

男はフンと鼻で笑う

「俺はアイザック、“元”勇者だ」



どうも、お久しぶりですうなにゃぎ兄妹です(≧∇≦)

ぶっちゃけ兄妹共々最近は不燃気味でしたがようやく復帰した感じですw

6話があまりにもめちゃくちゃすぎてこれひどすぎじゃね?みたいな感じでしたがそれでも頑張ろうという感じになりました

今回の最後と次回は親愛なる友人であるコネクト様の作品である門前払いからタクトとカノンを使わせて頂きました(彼からクロスの話を持ち出してくれたときは自分たちもやろうとなったのは内緒

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