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デイブレイク  作者: うなにゃぎ兄妹
ファーストパンデミア
3/17

襲撃

「あー退屈だ!」

アイザックは自室で腹筋をして時間を潰していた

「君はもう少しじっとすることを学んだ方がいいな」

エレンは相変わらずス魔〜トフォンで情報を漁っている

「エレンはその変な機械をいじってないで鍛えたらどうだ」

「君は女性になにをさせるつもりだ?それに私は恐れ多くも神と崇められることもあるマスタードラゴンだぞ?」

「神様なのか」

「ああ、私も若い頃は特別な力があると思い込んでいろいろやったもんだ」

「実際力があるじゃん」

エレンは鼻で笑う

「高々知れている。人を蘇らせることもできなければ未来なども予知できん、どこまでいっても所詮は翼の生えたただのトカゲさ」

エレンは皮肉っぽく自嘲する

「それに私は人間のほうが羨ましいと思うがね」

「どこが?」

「人間は確かに無力だ、しかし団結することによって我々魔族を凌駕するほどの力を発揮する。装騎の技術とかな、あれはとても興味深いな。魔族の技術をもってしてもあと20年はかかるだろう」

エレンはフィーアが召喚した雪風の画像を見る

「でも魔界のほうが文明が進歩しているって聞いたけど」

「魔界の場合魔法が少々廃れてしまってな。どんなに便利な魔法が発明されても結局は使用者の力量が釣り合わなければ無用の長物だ、ならば知識さえあれば誰でも扱える科学に移行したわけだ」

「まぁたしかに、俺も魔法が使えないし機械のほうがあると助かるな。人間界の道具ってほとんど魔力依存だし」

「そうだな、魔界は魔法動力から燃料や電気に変えられだいぶ楽にはなったな。反面職を失った魔族もいるがな」

「動力を変えるってのも大変なんだな」

「コストもかかるしな、変革に犠牲は付き物なのだろう」

「違いねぇ」

アイザックは腹筋を続ける

窓の外は吹雪が舞っており船は風に煽られて少し揺れている

「ういっす、生きてるかー?」

男が入ってきた

少し前に仲良くなった勇者、ウォンである

「生きてるっての」

「その割りに死にそうな顔してんじゃん」

「退屈なんだよ」

「確かになー」

ウォンは龍の雛に化けているエレンに向かうと撫で回す

「でもいいよなぁ、こんなかっこいい相棒がいてさー」

「かっこいいってのは失礼だぞ、そいつ女の子だし」

『ザック、大人の女性にかっこいいは失礼だぞ。それとそこの少年をなんとかしてくれ、猥褻行為だ』

「別に抵抗してもいいが本当の姿にはなるなよ」

「それはないにしてもなんとかしてくれザック」

「しゃあねぇな」

アイザックは頭をかく

「おいウォン、エレンが嫌がってるからあんまり撫で回すな」

「エレンっていうのか、こりゃでかくなったらいい女になるな」

「つべこべ言わずにやめてやれよ痴漢野郎」

「ちぇ」

ウォンはベッドの上に腰をかける

「それにしても吹雪すげぇなぁ」

「そりゃここら辺一帯豪雪地だからな」

「落ちたりしないよなこれ」

「さぁな」

アイザックが外を見ると赤い小型の飛空挺が見える

「小型の飛空挺が飛んでるが大丈夫なのかあれ?」

「おいおいマジかよ」

ウォンが覗き込む

飛空挺から何かが光った

「マズイ!伏せろ!」

窓が割れ冷たい暴風が入り込む

ウォンを見ると頭を撃ち抜かれ動かなくなっていた

「チッ、感染者か!」

アイザックは考える。相手は遠距離から狙撃してくる、しかしこちらは対抗できる手段はない

「エレン!」

「わかっている、ただあの距離では私の魔法でも届かないぞ」

「じゃあどうすりゃいいんだ!」


「なぁ瑞雲、どこ打ってるんだ?」

「可能な限り数を減らそうと思いまして。どうせ貴女のことですから突撃するでしょう」

「なぜわかったし」

「貴女は単純すぎるんですよ」

話し声が聞こえるが女は一人だった

女は狙撃型魔導銃を構えると次々と勇者たちを撃ち抜く

「何人か生き残りがいるみたいですね」

「ある程度でいいさ、残りはオレが切り伏せりゃあいい」

「気をつけてくださいね。相手は一騎当千の勇者、それが束にかかってきては貴女でも勝てませんから」

「わかってるさ、フィーアってヤツを殺したらそれで用事は終わりだ」

女は飛空挺を戦艦に近づけた


「近づいてきているぞ!」

「ザック、伏せろ」

エレンが指示する間も無くアイザックは伏せると飛空挺がぶつかる衝撃が襲う

ようやく鳴り始めた警報が耳障りだった

「フィーアは大丈夫か」

立ち上がると小振りなメイスを取り出しフィーアの元へ向かった


「おのれ侵入者!」

勇者の一人が剣で斬りかかる

「ほらよ」

女は回し蹴りで勇者の顔面を蹴り飛ばし倒れた勇者の胸をイーストシミターで貫くと後ろから他の勇者が魔導銃を撃ちながら突撃する

女は僅かに状態を逸らしイーストシミターで弾きそのまま疾走し袈裟斬りで両断した

「おいおいおい、こんな素人軍団が一騎当千だって?笑わせんじゃねぇよ」

次に魔法で作られた雷撃が飛ばされる。女はそれを研ぎ澄まされた一振りで消滅させ一度イーストシミターを鞘に戻し構えると瞬間移動の如く魔法を放った勇者を通り過ぎる

カシャン!

鍔と鞘がぶつかる音を立てると勇者は静かに倒れた

辛うじて生きていた勇者が僅かに動く

「おっと、生き残りがいたか」

女は生き残りの勇者を蹴り上げるとイーストシミターを一振りする

斬られた勇者は空中で四散した

「お前さんは....見つけたぜ!」

目の前の獲物を見つけ女はゆっくり近づいた

フィーアは銃剣を構える

「待てやおい!」

アイザックが飛び蹴りをする、女は少し体をずらすと飛んできたアイザックの足を掴み高速で魔導銃を抜き放ち撃った

「ったく、驚かせやがって」

「甘いです」

女が気をそらした瞬間フィーアが斬りかかる

しかし女は二本の指で刃を受け止めるとフィーアの腕を軽くひねり武器を取り上げる

「悪い子にはおもちゃ没収な」

女の赤い凶刃が光り振りかざされる

ザクッ

女は後ろから巨大な刃で貫かれる

「ゲームオーバーだクソッタレ!」

アイザックが勝ち誇るように言う

「先輩、生きていたのですか?」

「まぁな、運良く武器に当たってなんとかな」

アイザックはフィーアに親指を立てて見せる

「あーあ、瑞雲のヤツ肝心なところで甘いんだからなぁ」

女は呆れたように独り言を言うと顔色一つ変えずに腹に刺さった大剣を抜く

「なんで死なないんだよ....!?」

「さぁ、なんでだろうねぇ!」

致命傷を受けた人間とは思えない動きでアイザックに飛びつく

「クッ!」

アイザックは武器を召喚し壁にする

床から突き上げられた武器たちが女を襲う、女は後方に飛び退く

「ヤツとはまともにやりあうな」

エレンが引き止める

「なんでだよ!」

「見てわかるだろ、これだけの兵をもってしても傷一つ、疲れすら感じさせることもなく鮮やかに殺してきている。これは下手したらヘマタイトすら命が危ういレベルだ」

魔王すら超える実力者、それを聞くとアイザックは武者震いをした

「召喚された武器に結界とは厄介だねぇ」

そう言って刀を納めた

「じゃあ....選手交代ですね」

女の雰囲気が変わった

顔つきがもはや別人であった

先ほど赤く光っていた左目は黒くなり代わりに右目が深い蒼に染まっていた

「いきます」

腰から2丁拳銃を抜くと左右の壁を後ろから前へ向かって撃つ

「!?」

アイザックは即座に武器を召喚し壁にするが弾丸は前方ではなく左右、後方から飛んできた

辛うじてメイスで防ぐ

「今の...なんだ!?」

「先輩、気をつけてください。あの人の射撃技術は人外レベルです」

フィーアは女を見たまま動かない。いや動けないのだろう

「人外は私でも傷つきます。私は瑞雲、さっき貴方たちが戦っていたのはもう一人の私の天山ですね」

瑞雲と名乗る女は状況に不釣り合いなほど落ち着いていて丁寧に一礼した

「自己紹介どうも、アンタとは会話できそうだし聞くけど。なんでこんなことするんだ?」

アイザックは時間を稼ぎフィーアに“やれ”と目配せする

「仕事です、そこにいらっしゃるフィーアさんを殺せという依頼を受けていますので。正直私は誰も殺したくはないのですが不殺を貫いていては殺し屋失格なので」

「消えていただきますね!」

瑞雲が走ってくる

「クソッ!」

思ったより気づかれるのが早くアイザックはナイフを投げて牽制するが瑞雲は飛び上がり飛んできたナイフを踏み台にし体を捻るとアイザックの頭上に逆立ちする体制となりながら銃を連射する

アイザックは素早く武器で防ごうとするが間に合わず肩を撃ち抜かれる

「がぁ!?」

「先輩!」

フィーアは近づきアイザックを治療する

「勝ち目はありません、逃げましょう」

フィーアがアイザックを引っ張る

「どこへだよ!」

アイザックは壁のスイッチを押して防護壁を下ろす

瑞雲は追ってこない

「ザック、落ち着くんだ。今は彼女の言う通りにして体制を立て直すんだ。とはいえ生き残りはどれくらいだろうな」

「チッ!」

エレンの意見にアイザックは苦々しく舌打ちをする

「操縦室へ向かいましょう」

フィーアは顔色一つ変えない

「はぁ!?なんでだよ!」

「わかりませんか?高度が落ちてきているんですよ?」

「でも操縦できるのかよ!」

「できます、気合いと根性で」

「心配になってきた」

バババババババッ!

右の壁を貫通し弾丸は左の壁を叩く

おそらく瑞雲の仕業だろう

「ったく、どんなとこから撃ってるんだよ!」

「狙撃に加え跳弾で追い詰めるとは恐ろしいですね、場所の特定も困難な上に隠れる場所がないという意味です」

「冷静に分析している場合じゃねぇ!」

あらゆる角度から弾丸の雨が襲ってくる

「埒があかねぇ!」

アイザックが壁に背をつける

ガッ!

後ろから赤い刃が突き出され右の頬から血がこぼれる

慌てて伏せると刃は鮫の背びれのように壁を割ってゆく

「先輩!」

「大丈夫だ!いけ!」

戦艦が大きく揺れる

「ザック、ここは私が食い止めよう」

エレンは人の姿になり魔法陣を展開する

「バカ言ってんじゃねぇ!」

アイザックは怒鳴る

「私の魔力でなら時間稼ぎになるはずだ。その間にフィーアのカバーを頼む」

「こんなときにカッコつけるなよ!」

アイザックはエレンを抱え込み走る

「まったく、君ってヤツはどうしてそういうところまでヘマタイトに似ているんだか」

「アイツは関係ねぇよ」

エレンはフンと笑うと後ろに向かって魔法を放ち壁や天井を崩し道を塞ぐ

ようやく操縦室が見えてきた

背後から弾丸のカーテンが襲ってくる

「チックショーーーーーー!!」

アイザックはエレンを抱えて操縦室へ滑り込むと扉を閉めた

「はぁ...はぁ....」

座り込み息を整える

「先輩、やられました」

フィーアは動揺を隠せずにいる

「今度はなんだよ」

もうなにがあっても驚かない自信があった

「制御装置が破壊されています」

「どんな手を使ってでもお前さんを始末したいってことか」

アイザックはため息をつく

「仕方がない、脱出しよう」

エレンが提案する

「どうやってだよ。エレンは次の満月まであの姿に戻れないだろ」

「大丈夫です、雪風を使いましょう」

確かに装騎であればここから飛べば助かる

「でも雪風は飛べないだろ」

「はい、だから着地寸前で召喚すれば助かるはずです」

「おし、やってみよう」

「作戦会議はもういいか?」

女は操縦室を切り開き侵入してきた

「ああ、なら次はどうするかわかるだろ?エレン!」

「了解した」

エレンの掌から炎が飛び出す

「はぁ!」

女は気合いとともにそれを切り払う

「いい魔力してんじゃん、女ぁ!!」

女の注意はエレンに向けられる

アイザックは操縦室と外を結ぶドアを開く

エレンは咄嗟に防護壁を形成するが紙のように切り裂かれる

「いくぞ!」

フィーアが外へ向かって走りながら召喚魔法の詠唱を始めて飛び出す

エレンは斬撃を避けると強烈な光を放ち離脱する

最後にアイザックが飛び降りた

「じゃあな殺し屋!地獄で会おうぜ!」

弾丸の雨がアイザックたちを執拗に追いかける

「ぐっ!」

それがアイザックの腹部をえぐる

「先輩!」

「ザック!」

アイザックは意識を失い力なく地上へ吸い込まれてゆく

戦艦は近くの山に直撃し炎をあげて砕け散った

フィーアは装騎「雪風」を召喚すると素早く乗り込みアイザックたちを手でキャッチすると見事に着地をした

「フィーア、周囲を警戒していてくれ。私はザックを治療する」

「わかりました」

雪風でエレンたちから風を遮るよう立つ

エレンは魔法で冷気を遮断し負傷したアイザックの体温を奪わないようにする

「これは厄介だな」

エレンはアイザックの傷口を見て呟く

「弾を取り除けばザックは死ぬ。まったくとんでもない置き土産をしてくれたものだ」

エレンはヘマタイトとの約束を果たすと改めて決意した


北方最前線

「んでマナちゃん。敵さんいつになったら全滅すんのかなぁ」

男は椅子に座りながら魔力で作られた無数の糸を操る

目の前には1万を超える感染者の群れが迫っていた

「どう見ても今日中は無理でしょこれ」

マナと呼ばれた少女は大鎌を振り回し感染者の首をはねる

「シン、いくらこっちの方が単体の戦力が高いとはいってもみんな疲労している。全滅は時間の問題だろう」

レイは巨大な斧を振り回し一掃する

「そうだよなぁ〜レイ、お疲れ様」

「真面目に仕事しろ」

「やってるっての、寧ろ俺が一番の功労者だと思うんだよね」

シンは幾千にも渡る人形の軍勢を操っていた

「隊長、E-4地点の人形の一体の服が破れましたよ」

ハクが後ろから報告する

「おいこらビックリしたじゃねぇか!え?うあああああ!!数量限定のカフェマリポーサのウェイトレスコスがあああああ!!」

「心配するとこそこ!?」

マナがツッコミを入れる

「久々にキレちまったぜ」

シンは立ち上がる

「お前らが泣いて謝るまで俺は殴るのをやめねぇ!!」

シンが叫ぶと白い騎士のような鎧に包まれる

腰から折れたカリバーンを抜くと前へと走っていった

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