表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デイブレイク  作者: うなにゃぎ兄妹
ファーストパンデミア
2/17

出兵

龍の巣

「さぁってついた」

アイザックが洞窟の入り口に辿り着いた

その後ろをフィーアが追う

「んで、なんでフィーアまで来てんだよ」

「私も推薦で選ばれました。それに試練の内容はレッサードラゴンの討伐以外なにも言われていません。一人より二人の方が効率がいいと思います」

「あ、そう。俺バカだからよくわかんねぇけどさ、ちゃっちゃと済ませようぜ」

アイザックはポケットに手を突っ込み前へ進む

道はほぼ一本で迷うことはほぼない、段々暑くなってくる

「ここってこんなに暑かったっけ?」

「おかしい、昨日まではこんなことはなかったのに」

十字路に到達した

フィーアが不意に腰に下げた銃剣を構える

「先輩、何か来ます」

「おうおう、足音からして10匹か」

アイザックは獣のような笑みを浮かべる

左右から魔物の群れに阻まれる

「フィーア、右頼むわ。俺は左をやる」

「わかりました。先輩、行きますよ」

「上等!」

フィーアは右へ疾走し銃剣を銃の形に変えて連射すると的確に魔物の脳天を撃ち抜く

まだ立っている魔物は剣に変形させ首をはねる

「クリア」

「どおおおおおらあああああ!!」

アイザックはスケルトンの頭を拳で粉砕し回し蹴りで背後のリザードマンをなぎ倒す

すぐ横からもう一体リザードマンが斧を振り下ろす

「あっぶね!」

アイザックは白刃取りするとそのまま斧をへし折り刃の部分を奪うと腹を蹴る

残りはサイクロプスと魔術師二体、まずサイクロプスに斧の刃を投げ目を潰し棍棒を奪うと持ち主を殴打した。グシャッという嫌な音を立てて頭蓋骨が砕け同時に棍棒が折れる

「あちゃー、またやっちゃった。武器はなるべく壊さないようにしたいね」

魔術師が炎を放つ

アイザックはそれを後ろへ避けると腰から投げナイフを一本取り出し投げると魔術師の首に刺さった

「ふぅ、いっちょあがり」

「相変わらず乱暴ですね先輩、だから“ウェポンブレイカー”って呼ばれるのですよ」

「へへ、かっこいいだろ?」

アイザックは倒したスケルトンの剣とリザードマンの斧を拾い上げる

「学校の備品を片っ端から壊していい迷惑だと思います」

「うっせぇな、武器が脆すぎるんだよ」

「アダマンタイトの武器でも買えばいいのに」

「はぁ!?あんなの買えたら一生遊んで暮らせるっての!」

「私買えますけど」

「んじゃあこれ終わったら買ってきてくれ」

「だが断ります」

「ちぇ」


道中の敵を蹴散らしながら最深部まで到達したすると目の前にドラゴンの死体が横たわっていた

「これはレッサードラゴンですね。傷口からして人の手のものではありませんね」

「なんでわかるんだよ」

「巨大な高温の何かで叩きつけられた後があります。魔法なら魔力痕が残りますがこれにはありません」

「なるほどな、もしかして」

アイザックは振り返る

「アイツが犯人?」

そこには炎の巨人、イフリートがいた

イフリートは灼熱の火炎を撒き散らしながらこちらへ歩いてくる

「それで間違いないでしょう」

フィーアが銃剣を構える

アイザックは敵から奪った斧を二本担ぐ。背中にはたくさん敵から奪った武器が並んでいた

「いきます」

フィーアが銃剣に込められた魔力弾を冷凍弾に変換し放つ

イフリートは被弾すると悶える

「やはりこういう相手には低温による攻撃がセオリーですね」

続けざまに冷凍弾を放つ

「グオオオオオ!!」

イフリートは怒ったのか雄叫びを上げると更に炎が強まった

「うるせぇ!!」

斧を振り回し傷つけようとするがすぐに燃えてしまう

「おいどうすんだこれ、目的果たしてるんだし逃げてもいいんじゃね?」

「先輩だけでも行ってください。私がここは食い止めますので」

その目は強い意志を宿していた

アイザックはため息をつく

「前言撤回、男の俺が女にしんがりを任せたらアイツに笑われる」

「先輩....」

「おいフィーア、時間かせぎするからあれ出せるか?」

「いけます」

「じゃあ頼んだ!」

アイザックは背中からランスを引き抜き疾走する

「名も無き英霊よ」

フィーアが詠唱する

「うらぁ!」

ランスを投げたて続けに背中の武器をぶつけるとイフリートは動きを止める

追撃しようとするとイフリートの拳が迫る

「あぶね!」

壁を蹴りギリギリで避ける

「次元を超え鎧となりて我が元へ顕現せよ、雪風!!」

巨大な魔法陣からこの世界の物とは思えない黒金の巨人が片膝を立てて姿を現した

胸のカバーが開くとフィーアはそこに飛び乗る

『大丈夫です先輩、任せてください』

立ち上がると背中から大砲のような小銃を抜き連射する

しかしイフリートの炎の壁が雪風の攻撃を遮る

『これはどうですか』

今度は長刀を抜き壁ごと斬り伏せる

イフリートの炎が消えた

『今です先輩』

「まかせときな!」

背中からランスと大剣を抜くと一気に飛び上がると大剣を踏み台にし更に跳躍すると大剣は粉々に砕ける

「じゃあな!」

頭と同じ高さまで到達するとアイザックはランスを投げる

「グアアアアアア!!」

イフリートは音を立てて崩れた


かつて人と魔族は手を取り合って生きてきた

人は自然に恵まれ食料と土地を魔族に分け与え魔族は科学と魔法を人に伝えた

30年前、突如人の世界にいた魔族たちが狂ったように暴れ出す、しかし状況は悪化しついに人と魔族が手を取り合うことはなくなった

その間人は装騎と呼ばれる鋼の巨人など独自の魔法技術や勇者の存在を産んだ

勇者とは特別な才能や技術を持ち更に選ばれた者だけがなれる一騎当千を目的とした特別な兵士の総称である。しかし勇者の供給よりも消費が圧倒的に上回るため人造勇者の開発が急がれているものの発言力の強い教会の圧力が強く難航していた

「そういえばこの前新型の狂魔病が発見されたそうですよ」

狂魔病、それこそが人と魔族を引き裂いた犯人である原因不明の病であり未だに治療法はなく殺すことだけが感染者への救いとなっている

「新型だって?」

アイザックは魔族の遺体が入った棺を丁重に穴へ入れる

「ええ、人に感染するようです」

「!?」

アイザックの手が止まる

「これから人殺しもさせられるのかよ!ただでさえ苦しいってのによ!」

「そう、なりますね」

フィーアが俯きながら棺を埋めて行く

「こんなこと許されるわけねぇよ...!!」

「相手は病です、誰のせいでもありません」

花束を手向ける

「こんないい加減な葬儀で申し訳ありません。女神の祝福があらんことを」

フィーアは埋葬した魔族たちのために祈る

アイザックも黙って目を閉じる

「でもさ、この怒りをどこにぶつけりゃいいんだよ!つい昨日までバカやってた仲間が次の日には襲ってくるなんてひどすぎるっつの!」

「先輩!」

フィーアが怒鳴る

アイザックは黙った

「私だって辛いのは一緒です、みんな辛いんです。だから少しでも多くの人の苦しみを和らげることが私たち仕事なのです。偉そうなことを言いました、すみません」

「いや、俺のほうこそ熱くなっちまってた。すまん」

アイザックはため息をつくと手を叩いた

「おし!もうウジウジすんのやめて喜ぼうぜ!俺たち勇者になったんだしよ」

アイザックはフィーアの頬を引っ張る

「んなシケたツラしてないで笑えっての」

「ひぇんぴゃい、いひゃいれす」

「ははは、何言ってんのかわかんねぇぞフィーア。それにもう俺たち先輩後輩じゃなくて同僚だろ」

フィーアはアイザックの腕を振り払う

「いいんです、私にとってアイザック先輩は先輩なのですから」

「そうかい、まぁいいんだけどさ」

アイザックは笑う

「ありがとうございます」

フィーアはぺこりとお辞儀した

「気にすんなよ、じゃあ帰ろうぜ」

アイザックたちは学校へと帰って行った


「勇者アイザックよ、正義をもって己が命を焼き尽くしてでも弱きものたちを助くことを誓うか?」

「はい、誓います」

アイザックは力強く答えた

「では台座に刺さった剣を抜くが良い」

石で造られた台座には金色の美しい細工が施された剣が刺さっていた

六七式量産型聖剣カリバーン、それがこの剣の名前だ

とても振りやすい上頑丈でデザインも伝統的ながらも斬新さを取り入れた名器でもある

アイザックはカリバーンを握ると一気に引き抜き天へ突き上げる

「おめでとう、これで君は勇者だ!」

みんなが拍手する

ついに勇者になれた、アイツとの約束が果たせる。アイザックの胸の中はそれだけでいっぱいであった


「明日から出兵か」

アイザックは興奮が抑えきれなかった

「先輩はどこに配属ですか?」

「ああ、クレイドル部隊。最前線らしい」

「奇遇ですね、私もです」

「また一緒か、よろしくな」

アイザックはフィーアの頭を乱暴に撫でる

「でも最前線、大丈夫でしょうか?」

最前線とは最も狂魔病の発症が著しい地域のことである。狂魔病の感染拡大を抑える術は皆殺しにすることであった、それも女子供関係なく

「大丈夫だろ。何しろ学校の歴代最強の勇者、シン先輩もいるっていうし」

アイザックとシンは兄弟のような仲でいつも二人で悪さをしたりしていた

去年の夏にシンは勇者となりそのまま出兵、風の噂で無事であることは知っていたものの便りはなく正直不安であった

「!!先輩、巨大ななにかが来ます」

フィーアは銃剣を取り出す

「ったく、今度はなんだよ!」

アイザックも腰からカリバーンを抜いた

「先輩は乱暴なのでカリバーンの使用は控えてください」

「しかたねぇな」

アイザックの頭上に魔法陣が浮かび上がると地面からバトルアックスやグレートソード、ランスやイーストシミターなどありとあらゆる武器が生えてくる

アイザックは適当にランスとバトルアックスを抜くと飛んでくる影と対峙した

「あれは、マスタードラゴン!?」

フィーアが驚愕する

「知ってるのか!?」

フィーアが頷く

月明かりに照らされたその姿はとても美しく鱗の一つ一つが金剛石のように輝いていた

「マスタードだかなんだかしらねぇがこんな人がいっぱいいるとこに来てるんだ、感染してるんだろ!」

アイザックが飛び上がる

「いってはだめです!」

フィーアが止めるが遅かった

マスタードラゴンが光を放つとアイザックは地面に叩きつけられた

「がぁっ!」

口から血反吐が出る

マスタードラゴンは大地に降り立ちアイザックに近づく

「おいおい、せっかく勇者になれたってのにここで終わりだってのかよ」

マスタードラゴンが光に包まれる

アイザックは諦めたのか目を閉じた

「まったく、君はアイツに似て乱暴だな」

冷たくも優しい声がアイザックの耳に入る

「その声」

アイザックは飛び起きる

「エレン、久しぶりだな」

「久しぶり、ザック。大きくなったな」

エレンはふと笑う

「エレンこそ元気そうじゃないか」

「.....負けました」

フィーアが呟く

「どうした少女」

「紹介する。こっちはフィーア、俺の相棒だ。そんでエレン、俺のその...」

「母親と言ったところかな。フィーアよ、胸の大きさが女の良さを計る絶対条件ではないぞ」

「貴女に言われても説得力がありません」

フィーアは無表情でしょんぼりする

「まぁそれはともかく」

「良くないぞ、ザック」

エレンが突っ込む

「あ、はい」

さすがのアイザックでも勝てない

「でもエレンが来たってことは」

「そうだ、ついにスタートと言ったところだな」

「これでアイツをブッ飛ばせられる!」

アイザックは拳に力を入れる

「エレンさん、アイツとは?」

フィーアの問いにエレンは鼻で笑うと口を開く

「魔王ヘマタイト、アイザックの育ての親さ」


次の日

「なぁエレン、これでバレないのか?」

『問題ない、ドラゴンの雛だとみんな思うだろう』

エレンは小さなドラゴンの姿になってアイザックの肩に乗っていた

「だといいけど」

勇者たちは師匠や親に別れの言葉を伝える、中には泣くものもいた

『ザックには別れの言葉を伝える相手はいないのか?』

「いないしいたとしてもさよならなんていわねぇよ」

『フッ、つくづくアイツに似たな』

「あのバカは関係ないだろ!」

『すまなかった、君が逞しくなったのが嬉しくてな』

エレンはイタズラっぽく笑う

「ったく、食えない人だよアンタは」

勇者たちの出兵パレードが始まる

「前へ、進め!」

代表者が合図を送ると勇者たちは行進してゆく、アイザックも足並みを揃えながら前へ進む

目の前には巨大な飛空戦艦ラファエルが停泊している。アイザックたちはこれで戦場へと送られるのだ

「さぁいくぜ、待ってろよ」

アイザックは決意の眼差しで乗船した


「さぁって、お仕事終わり!」

「お疲れ様です」

二人の女の声が響く、しかし影は一つだけだった

髪は黒く赤いドレスを来た女が血のように赤い刀身のイーストシミターを鞘に納める

傷ついた左目は赤く光っている

「そういやもう一つ依頼があったんだな」

「もう一つあったのですか?」

乱暴な口調から一気に物腰が柔らかいものになり今度は右目が蒼く光る

独り言というより本当に誰かと話しているようだった

「忘れてたよ、フィーアとかいう女の暗殺だってよ。父親が殺し屋に娘を殺してだなんて物騒な世の中だねぇ」

女はそう言って歩き出した




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ