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リストラヒーロー出会う?

 吾郎達が指定された待ち合わせ場所に着くと、既に何十台もの自動箱が停められていた。

 どの自動箱も綺羅びやかに飾り立てられ、猫人達のケルベロスの爪への信仰心を伺い知る事が出来る。

 猫人達も名一杯のお洒落をしており、晴れやかな表情を浮かべていた。

 その為か、待ち合わせ場所は祭りの前の様な高揚感に溢れていた。

 ただ一人吾郎だけは憮然とした表情を浮かべている。


「ゴロー、何かあったのか?」 

 

「タイネン、猫人ってのは、みんなああなのか?」

 吾郎は憮然とした表情のまま猫人を見つめていた。

 何故なら、この世界の猫人が期待していた猫人とちょっと違っていたのだ。

 確かに姿形は人と似ているし、お約束の猫耳も着いている。

 しかし、目は吊り上がっており、口は耳まで割けていた。

 まるで、怪談や怪奇漫画に出てくる化け猫その物で萌え等微塵も感じさせない。


「ああ、あれが猫人だ。お前の世界は違うのか?」


「いや、マイさんみたく人にそっくりかと思ってたんだよ」

 少し、本の少しだけ吾郎は出会いに期待していたのだ。


「人?人は二本足で歩く生き物の事だろ。ほれ、そこに蜥蜴人もいる」


「蜥蜴人?あのグレイみたいのがか?」

 蜥蜴人はツルツルとした質感の皮膚を持っており、日本に現れたら宇宙人と騒がれるかも知れない。

 吾郎が異世界の現実を嘆いていると、猫人の男が近付いて来た。


「タイネンパーティーだな。お前達には右翼を護衛してもらう」

 言葉こそ事務的であるが、猫人は優しげな笑顔を浮かべている。

 

(流石に語尾にニャーは着けないか。まっ、この見た目でニャーを着けられた殴ってたかもな)

 何とも身勝手感想を思う吾郎であった。


「分かりました。セッソウ達は三人一組で動けば良いんですか?」


「いや、もう一人単独で来た冒険者を加えて四人パーティーになってもらう。馬人の女が、もう少しで来るだろうから、上手くやってくれ」

 猫人が去って、少しすると一人の女性が近付いて来た。


「あんた等がタイネンパーティーかい。あたいの名前はサクラ・ブライアン。乙一六級で剣士をしてる、短い間だけど頼むよ」 

 年の頃、二十代半ば位だろうか。

 身長は170㎝位で引き締まった体をしており、茶色い髪はポニーテールにしていた。

 サクラは美女の部類に入る顔立ちをしているが、人懐っこい笑顔の為か親しみを感じさせる。


「セッソウはタイネン、乙種三類四級の神官だ。セッソウの隣にいるのが狼人のマイ。最近、冒険者になった狼人でスカウトを目指している。そしてそこにいるのはゴロー、丙種一類八級の…変わり者だ」


「変わり者ってなんだよ」

 異世界から来た猿人で変身をするとなると、文字通り吾郎は変わり者なのだが。


「狼人の身体能力の高さは有名だし、ゴローか。…あんた強いね、戦い慣れてる。どうだい、あたいと、模擬戦をしてみないかい?」

 挑発的な顔で吾郎に話し掛けてくるサクラ。

 その顔にはゾクリとする色気がある。


「パスだ…周りが、敵か味方か分からないうちは手の内を晒す気はないんでね」


「ゴロー、どう言う事だ?」

 付き合いは短いが吾郎がこういう言い方をする時には、何かがある事をタイネンは知っていた。

  

「周りに人がいなくなったら説明するよ」


「そうかい、残念だね。それじゃ、自動箱に案内するよ。運転はあたいに任せておきな」

 サクラは残念と言った割にはさっぱりした笑顔を見せている。


(タイネン、馬人の女ってのはみんなあんな感じなのか?)


(馬人の特徴は後ろ髪から背中まで続くタテガミがある事。男女共に走る事が得意で、昔は多くの馬人が飛脚をしていたそうだ。その所為か今でも運転を得意とする者が多いな。性格は人による…お主、惚れたのか?)

 タイネンは吾郎と目を合わせるとニヤリと微笑んだ。


(どこかのエロ坊主と一緒にするんじゃねえよ。第一、相手に旦那や男がいるかも知れないのに惚れるも何もねえよ)


「なんだい、男同士で密談をして…まさか、あんた等そう言う関係だって言うんじゃないだろうね?」

 神官は異性との付き合いが禁止されているので、同性を好む者が少なからずいる。

 それ故に、サクラの問い掛けは吾郎に有らぬ疑いを掛ける物であった。


「ちょっと待て…」

「冗談は止めて下さい。タイネンは私の彼氏です!!」

 マイは大声で吾郎の声を遮ったかと思うと、タイネンと腕を組んで歩き出した。


「おやおや、お熱い事で…ゴロ、彼氏を取られたけど良いのかい?」


「俺は男色の気なんざねえよ。まっ、独り者の男が、あのバカップルといるのはキツいから道中頼むぜ」

 何しろわだかまりが溶けてからのタイネンとマイの熱々振りは、日増しに強まっており、あらゆる意味で一人の吾郎には少し辛いのである。


「確かにあの二人とパーティーを組むのはキツいね。男女のあたいで良けりゃ話相手になるよ」


「それは助かるよ。俺も一人で膝を抱えてるより美人と話してる方が嬉しいからな」

 吾郎の話し方は、厭らしさを微塵も感じさせないサバサバした物であった。


「なっ、アタイが美人?冗談は止しておくれよ」

 サクラは顔を赤く染めながらプッと頬を膨らませる。


「美人ってより、良い女って方がしっくり来るな。旦那さんが羨ましいよ」

 吾郎は大袈裟に肩を竦めながら、溜め息を着いてみせた。


「はんっ、私は独り者で恋人もいないよ。アタイが良い女って、馬鹿じゃないの?」


「へー、馬人には鏡もまともな男もいないんだな…まっ、道中頼むよ」 

 

「か、鏡位あるっての…やりにくい奴だね」

 サクラは猿人と組むと聞かされて依頼を断ろうと思っていた。

 猿人には他の人種を見下す者が少なくないからだ。

 しかし、実際に会ってみると一人は狼人の女と熱々で、もう一人は同じ馬人にも言われた事が様な事を平気で言ってきた。

 とりあえ今回の依頼をこなしてみようと思うサクラであった。


――――――――――――――


 吾郎達に宛がわれたのは四人乗りの自動箱。

 タイネンとマイが後部座席に座るので、吾郎は必然的に助手席となった。


「ゴロー、さっきのはどう言う事だ?」


「猫人の数が多いし、装備が整い過ぎてる…わざわざ、冒険者を頼む必要が感じられないんだよ」

 吾郎は、この依頼が一筋縄ではいない予感がしていた。 



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