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リストラヒーロー、仲間と出会う

 謎のコカトリスがエスペル伯爵家マーガレットのお見合いをぶち壊してから一週間が経った。

 その間、悟郎は細々と採集依頼をこなして階級は丁種の五級となり、十万ブレを稼いでいた。

 そのうち五万ブレは市役所に返却したので、手元には最初に借りた金と合わせて二十二万ブレが残っている。

 一見、順調に思えるが悟郎は焦っていた。


(不味いな、受けれそうな採集系の依頼が何もない。需要がなくなりゃ仕事が減るのは当たり前なんだけどキツい)

 これは悟郎の身から出た錆と言っても良い。

 元々、夜光草の需要はそんなに高くなく、悟郎の集めた夜光草のお陰で市場から夜光草の需要がなくなったのだ。

 残っているのは一日中拘束されて四千ブレがもらえる仕事(ざつよう)のみ。

 一日二千ブレの宿代と飯代を払えば手元に残る金は僅かである。

 更に雑用に近い仕事は若い冒険者や怪我をしている冒険者に優先的に回されるので、悟郎が一ブレも稼げない日も出てくる可能性も高い。


(採集と言っても無実の魔物を倒すのは無理だ。そうなると護衛系か…しかし、装備を揃えなきゃ依頼を受けさせてもらえない、そして装備を揃えたら金が減る。依頼の最中に怪我でもしたら、奴隷一直線だぞ)

 護衛中はコカトリスイエローに変身が出来ないから、武器と防具を買う必要が出てくる。

 素手で布の服を着ている冒険者を護衛として雇う物好きはいないだろう。


「オオトリさん丁度良かった。貴方に受けて欲しい依頼があるんですよ」

 悟郎に声を掛けて来たのは、新婚ホヤホヤの中年事務職員セーリオ・アーンスト。


「俺に受けて欲しい依頼ですか?」


「ええ、正確には金属製の武器を使わない冒険者を探していたんです」

 セーリオの話によると依頼主はある宗教のお偉いさんだとの事。

 その宗教はサクレ教と言いにプレーヌ王国において二番目に多くの信徒を有しており、依頼主のレーグル宗はサクレ教の中でも戒律が厳しさで有名である。

 サクレ教では無駄な殺生を禁じており、金属製の武具は命を奪う道具とし忌み嫌うらしい。


「まさか襲ってきた魔物や賊を殺すな、とか言いませんよね」


「自分達の手を穢さない為にギルドに依頼して来たんですよ。王都プレーヌまで護衛をして依頼料は十万ブレとなります」


(どこの世界でも宗教家は教えを都合良く解釈するんだな)

「受けさせてもらいます。移動は自動箱になるんですか?」


「ええ、護衛はセダンタイプの自動箱に便乗するそうですよ。期間は往復で六日かかるそうです」

 宿代は依頼料に含まれているそうだ。


「分かりました、詳しい日付を教えて下さい。それと装備を新しくしたいので武器屋を教えてもらえますか?」


「それならエリタージュ金物店が良いですよ。武器も防具も揃ってますから」



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 悟郎は依頼を申請した足で教えてもらったエリタージュ金物店に向かった。


「えーと、ここだな。マジかよ…」

 そこにあったのはタライや竹製の物干し竿が並べれた木造平屋建ての店。

 店先には蚊遣りオークありますと書かれた紙が張ってある。 


(蚊遣り豚じゃなく蚊遣りオークなのかよ。確かに豚よりオークの方が強そうだけど)

 がたつく木製の扉を開けると、店内は雑然としていた。

 ヤカンや亀の子たわしに混じり槍や斧が普通に置かれていた。


(そういや田舎の金物店にもに鉈とかが普通に置いてたよな)


「いらっしゃいませ。見ない顔だけど何をお探しですか?」

 店の奥からでててきたのはタンクトップに腹巻きという昭和初期の格好をした中年男性。

 団扇を片手に持っており、格好だけなら日本の田舎の軒先で将棋を打っていても誰も疑問に思わないだろう。

 しかし、中年男性は空の様な真っ青な髪をしており顔立ちは欧米タイプであった。


「あの冒険者ギルドのセーリオさんから紹介されて来ましたゴロー・オオトリです。棒術用の棒と防具を探しに来ました」


「セーリオさんですか、懐かしい名前ですね。ご予算はいくらですか?」


「十万か十五万ブレで済ませたいんですが、ありますかね?今度、サクレ教の護衛を受けるのでそこも考慮して頂けたら嬉しいです」

 悟郎は出来るだけ安く済ませたかったが、下手にけちって脆い武器を掴ませられたら目も当てられない。


「これならどうです?ドリアード製の棒ですから、滅多に折れません。これにオークの革鎧で計十六万ブレの所を十五万ブレにお負けします」

 先代のクリプティドファイブにはドリアードグリーンがいたので、悟郎としてはかなり気がひける。


(笹さん、すいません…)

 背には腹は変えられず悟郎は散々世話になったドリアードグリーンに心の中で詫びると装備一式を購入した。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 依頼日、当日集合場所に行くと奇妙な男がいた。

 その男は坊主頭で痩せ型、筋肉質だが顎だけが細く爬虫類を連想させる風貌をしている。


「おっ、お前がオオトリだな。グソウの名前はタイネンだ、頼むぜ」

 これが悟郎の仲間の一人タイネンとの出逢いであった。

グリーンの名前は会社の人から借りました

彼の知人が見てたら面白いなと

三十五才の青森高校卒の方です

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