私
「もし、俺がお前で、お前が俺だったならば、俺は真っ先にお前を殺すだろう」
わかっている
その選択肢が最も簡単な方法
そして、最も確実な方法
でも、これを私は選択しない、いや、選択しないのが私なのだ
別に人間社会におけるタブーだからというわけではない。
そもそも私たちは"法律"などのいわゆるものすごく人間的な、しかし機械的な不思議なものとは遠い存在。
そこに生きる自分たちにはあらゆる価値観が他の"人間"からは理解されない。
だからこそ、殺しという恐ろしいものも私たちにとっては数ある選択肢の1つでしかないのだ。
別に倫理的な観点からでもない。
私たちの倫理的観点はそもそも一般に言う倫理的観点ではない。
別に恐怖からでもない。
そう、私たちの恐怖とは彼を殺さなかったときに起こるかもしれないこと。
だからこそ、彼は真っ先にあんなことを言った。
私たちの中では、あれが最も正しい選択。
私が異端者。
でも
元々私たちは異端者
では
異端者の異端者である私はなんだろう
なんでもないのかもしれない
でも、なんでもないものが異端者になるはずがない
なにかが、違うってことは、それはつまりなにかがあるということではないのか
私はなぜその選択をしないのか
それは、最も人間的な理由なのかもしれない
人間的で機械的なものが通用しない世界にいる私たち
その中の私は最も人間的で人間的なのかもしれない