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魔法学校

作者: yudy

数年ぶりの新作です。今まで放置で申し訳ありませんでした。

m(_ _)m



――それは、十月中旬の事だった。



ここはとある県立の魔法高等学校の教室。



俺はこの学校の生徒で二年生のアギト。



今日は二学期中間試験の最後の科目、薬理学?のテストがあるのだが。テストの内容は事前に知らされておらず、教室中戦々恐々としている。



ここまでのテストで俺は懸命な努力(一夜漬け)で平均点よりいっている(…筈だ)だけに最後の最後で落としたくない……とにかく必死なのだ。



「――何、神妙な顔してるのよ」



そんな事を考えてると、隣の席から聞こえてくる女子の声。


その声の方を見ると、俺のクラスメイトで隣の席でもある、スティアがこっちを見下ろしていた。


こいつは、二年間ずっと同じクラスのずっと隣の席で、何かとつけてくれば一瞬で口喧嘩になってしまう腐れ縁の女子。


ちなみに認めたくないが、かなりの美人で成績もすげぇ良い。


……絶対、神をペテンにかけて生まれてきたに違いないような詐欺師である。


その代わり、上記のように性格は悪い。何かにつけては俺をからかってくる……天敵だ。



「どーせあんた程度の脳みそじゃ、何をやっても完璧に赤点ね」

「この野郎……!」

「野郎は女の子には使わないのよ、お・馬・鹿・さ・ん♪」



憎たらしい笑顔と言葉で俺を馬鹿にしてくる。



こいつ……許せねー!!



「てめぇー…!!」



そう言って、立ち上がろうとした――




ガラガラガラガラ――!!




――――が。



「ほれっ、早く席に着くんじゃ!!テストが始まらんぞい!?」



――運が良いのか悪いのか、先生が教室に入ってきたので、立ち上がるタイミングを失ってしまった。


余談だが、その先生の格好はとんがり帽子に真っ黒のローブ、どこからどう見ても魔女にしか見えない。あの姿だけでも天職だと思う(良い意味で)。



「残念でした」



再び憎たらしい笑顔でぼそっと憎たらしい言葉を言ってくるスティア。



「ち……」



本当は反論したいところだが、先生の稲妻鉄拳(魔女のくせに)が飛んでくるのを一瞬考え、浮かした腰を椅子に戻し、先生の方に身体を向ける。



「――はい。知ってのとおり今日はテストじゃ。今からこの封筒を渡すが、絶対自分の名前の書いてある封筒を取るんじゃ。それと、配り終えたら決して他の人に見せるんじゃないぞい」



そう言いながら手に持っていた茶色の封筒を前の席の生徒に列分配り出す。他の人に見せぬようって事はそれぞれ違うってわけだ。


そして、そんなに時間も掛からずに封筒がまわされてくる。


俺の名前が書いてある封筒を取り、残りの封筒を後ろの奴に渡す。



「……全員行き渡ったようじゃな…では、封筒を開けて中を確認するんじゃ」



そう言われ、封筒の口を破り開ける。


中には一枚の白いカードが入っていた。



「そのカードにはそれぞれ違う薬草の名前が書いてあるはずじゃ」



封筒から白いカードを取り出す。


俺のカードには“デレデレ草”と書いてあった。


デレデレ草といえば、一時的に性格をデレッとした、あま〜い感じの性格になる薬効がある薬草だったはずだ。


再び余談だが、我が世界では炎や氷といった魔法もあるんだが…こういったよく分からん物もある。こういうのがフィク…いや、なんでもない。



「名前は確認できたか?……では、それを採取してきてもらう」



えーっという声がクラス中に響き渡った。だが、先生はどこ吹く風だった。



「これっ!静かにせんかい!!……そして、隣の席の者にそれを使う事。先に使った者は100点、負けた者は……0点で追試じゃ。まぁ、頑張りなはれ」

「……」



最後のはどこ弁だよ?と突っ込みたがったが(雰囲気的に)恐くて突っ込めなかった。




・・・・・・・・・・・




――ここは校舎裏の山。学校所有の採取場で二年生専用の場所でもある。ちなみに敷地面積は……とにかく何処の金持ちだよって思う位の広さである。



今現在、あちらこちらで沢山の生徒が薬草を求め、ひしめいている。相手に負けまいと必死だ。


ちなみに俺の相手は……勿論、スティアだ。絶対に負けられない。いや、負けられるはずがない。



もう一度言うが俺が探す薬草は“デレデレ草”だ……丁度いい、あの生意気な性格もこれを使えばマシになるってもんだ。そしたら美人なんだから……って、いかんいかん。何を考えてるんだ。俺は。



……と、とにかく。デレデレ草を見つけなければ――



「ん?」



――とはいえ、そう難しい事ではない。今は秋で、山の木々は紅葉している……だが、デレデレ草の木は一年中緑色の木だ。真っ赤な木々の中に緑だからすぐに見つかるはずなのだ。



「おっ!あったあった!!」



案の定あっさり見つけ、薬草を採取する……が、問題なのは調合の方だ。薬草のままじゃ勿論意味がないので、手持ちの調合キッド(いや、実際は魔法とかで作りたいけどな…)で粉末薬にしなくてはならない。……が、俺は調合が大の苦手だ。


案の定、やはりかなり手間取ってしまった。



折角簡単なお題だったのに、これじゃスティアの方も調合が終えてるかも――



「見つけたわよ、アギト!覚悟しなさい!!」



――いや、もう終えてやがった。



いつの間にかスティアが十メートル前方に立っていて、その手には小瓶が握られており、中には粉末が入っている。



「その言葉、そっくりそのまんまそっちに返すぜ!!」



――だが、俺もたった今粉末を瓶に詰め終え、そう返しながら立ち上がる。



――ということは、どちらが先に使うかだ。



「……」

「……」



ジリジリと互いに間を詰める。一瞬でも気を抜いたらそれこそ――ジ・エンド…だ。



「……」

「……」




バッ――――!!




――そして、俺とスティアは走り出した。



スティアが小瓶を振りかぶる――


それにともない、俺も足を止め、避ける体勢に入る――



「きゃっ!!」



――が。突然スティアが驚いた声をあげた。


どうやらどっかから生えたんだか分からん木の根に引っ掛かっておもいっきりこけたようだ。


更に、こけたおかげで小瓶から中身が盛大にぶちまけられ、スティアが攻撃する手段が無くなった。



「……俺の勝ちだ……スティア!!」



そんなスティアに俺は難なく粉末薬を掛ける事に成功した。


残念な事に他の生徒達は薬草探しに必死で誰一人俺が優等生のスティアに勝つ瞬間を見ていなかった。


それはまぁ…ともかくとして……さて、“あの”スティアにデレデレの薬をかけたら、どうなることやら……



「……」

「 ? ……スティア?」



返事がない。やはり、俺に負けた事が相当悔しいのだろう。



そう思っていた矢先――



「……あ〜あ…」

「 ? 」

「負けちゃったな……でも…あんたにならいいかも…なんてね。きゃ♪恥ずかしい♪」

「……」




――どきゅ〜ん!!




――や、やべぇ……い、今のは滅茶苦茶ツボに入った……って、何考えてんだ!!俺は!!いくら俺の好みのタイプだからって……だ、だから違うってば!!



……試験。そ、そうだ。今は試験中なんだ。と、とにかく試験は俺の勝ちなんだ。とりあえず、この事を教室にいる先生に報告するとしよう――



「ねぇ、アギト…」



――とするが。何故か俺の制服の裾を引っ張ってくるスティア。


そんな行動にも思わずドキッと、俺の胸が高鳴った。



「ど、どうした?」



平常心を保ちながらもスティアに聞き返す。



「あの……手繋がない?その…帰り道が…なんだか怖いの」

「……はい?」



何言ってるんだ、こいつは。二十分位前まではひょいひょいと登ってたくせに――



「……駄目?」

「う……」



……可愛い。その上目遣いは反則だろ…



“この勝負”は一瞬で決まった。



「……俺でよければ」

「……ありがとう」




俺がそう言い、右手を差し出すと、スティアは珍しすぎる感謝の言葉を述べ、俺の右手に左手を絡ませた。



「…暖かいね…」

「…あ、あぁ…」

「……」

「……」



周りが白熱している雰囲気の中、俺達のところだけ青春が流れていた。


今現在は逆に誰一人この光景を見ていなくて、正直助かった気分であった。




・・・・・・・・・・・




「お前達二人共0点……追試じゃな」

「……はい?」



山を降りて先生の所へ向かった矢先。先生から意外過ぎる言葉を告げられた。



「そんな!!スティアはデレッてしているじゃないですか!!」



思わず反論する。ちなみに現に今現在も……さすがに手を繋いだままなのは恥ずかしいので俺の制服の裾に掴まってもらっているが、何故かスティアは離さないし。



「ほほっ。残念じゃがスティアは惚れ薬をひっかぶったからじゃ。アギトに使うはずだった、な。アギトのは調合失敗で効いとらん」

「え?」



ま、待てよ。確かにスティアは転んだ時、小瓶を“上に”飛ばして……あ、本当だ。



「あ、それとな。あのカードに書いてある薬草は自分が相手に望んでいるものじゃ。ほほっ。お前達、案外お似合いかもしれんのう」



先生はニヤッと笑いながらそう言った。



「……」

「……」



俺とスティアは顔を見合わせた。



『――――っ!?』



そして、一瞬の間の後、俺達の顔は紅葉した木々よりも真っ赤になった。



「ほほっ。秋なのにここは青春…じゃのう……じゃが、それは追試が終わってからじゃぞ?ほっほっほ…」




―――fin



ニヤニヤする短編いかがだったでしょうか?(笑)


二人がどうなったのかは…皆さんのご想像にお任せします。(笑)


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