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独裁生徒会長サクラン  作者: 沙φ亜竜
第九話 都知事の訪問、そして会長は……
35/48

-3-

 僕の不安は消えたけど……。

 ふと横目で見てみた会長は、笑ってなどいなかった。

 じっと鋭い視線を都知事に向けている。


 不意に、一瞬だけちらりと、会長が僕に視線を向けた。

 え? 会長……?

 問いかけたい衝動をどうにか堪える。


 そして代わりに、僕は都知事に話しかけた。


「あの……」

「はっはっは……むっ? なんだね?」


 笑い声を止め僕に視線を向ける都知事。

 サングラスの奥の瞳が、ギロリと光ったようにすら感じられた。

 都知事という立場にある人だけあって、その威圧感は相当のものだった。


「今日はなにをしに来られたんですか?」


 僕は臆することなく、質問を繰り出す。

 失礼かもしれないけど、なんとなく、そうしなければならないように思えた。

 会長が無言で僕に指示しているように感じていたからだ。


 僕の言葉に、ピクリと眉をしかめたものの、都知事はすぐに答えを返してくれた。


「今日は建設中の城の様子を見に来たんだ。ここからでもしっかりと見えるね。どうやら心配の必要はなさそうだ」


 都知事はそう言いながら、校庭のさらに奥――木々が青々と生い茂る公園の先に建設されている西洋風の城へと視線を向ける。

 僕はそんな都知事をじっと見据えながらも、会話を続けた。


「お城の建設、順調に進んでいるみたいですよね」

「ああ。ほぼ完成しているとの報告は受けている。もう少しだ……」


 都知事の目が、なぜだか一瞬、鋭く光ったように思えた。

 もっと突っ込んだ話を聞いておきたい。

 そう考え、さらなる質問を続けようとしていた僕より早く、今度は都知事が質問を投げかけてきた。


「キミはどうしてそんなことを訊いてくるんだね?」

「いや、あの、それは……」


 城を目にしているときとは一変、都知事の不機嫌な様子に戸惑い、僕はしどろもどろになる。


「名乗り遅れてしまいましたが、僕は生徒会長の補佐をしている射干玉除夜といいます。あのお城が本当に学園のためになるのか、僕にはどうしても疑問で……」


 話しているあいだにも、都知事の機嫌はさらに悪くなっているようだった。

 それは、見るからに明らかなほど。

 さっきの笑い声で気を緩めていた周囲のSPたちにも、一瞬にして緊張が戻る。


「ちょ……ちょっと除夜ちゃん、どうしちゃったの? さすがに失礼だよ……」


 ちまきが僕の袖を引っ張り、そう小声で耳打ちしてくれたけど。

 僕は都知事に睨みを利かせるような視線を逸らさない。

 同じように、会長も鋭い視線を都知事に向けたままだ。


「学園のシンボルとして、という話はうかがっています。ですが、単なるシンボルにしては規模が大きすぎるような気がします。あの城の建設費用って、税金でまかなわれているんですよね? さすがに少々、行きすぎという感想を持ってしまうのですが」

「……ほう。では、ワシがやっていることは単なる自己満足で、税金の無駄遣いだと、そう言いたいのかね?」


 都知事の不機嫌さは最高潮にまで達しているのか、声も小刻みに震えているようだった。

 マグマがのどもとまで押し寄せ、いつ爆発してもおかしくない状態なのかもしれない。

 だけど……。


 ちらり。

 会長に視線を送る。


 やはり会長は黙したままじっと都知事を見据えるのみ。

 理由はわからないけど、都知事の反応を見ながら様子をうかがっているように思えた。

 だとすれば、会長の補佐である僕がすることは決まっている。

 少しでも都知事と会話を長く続けるだけだ。


「そうではありませんが、そう言われたとしても仕方がないと思います。ですから、納得のいく説明をする必要があるのではないかと、失礼ながら意見させていただきます」

「ほほう、なるほど……」


 サングラス越しでも、睨みつけられているのがわかる。

 すぐにでも逃げ出したいくらいの威圧感だった。

 菱餅先輩と心見先輩は、完全に萎縮してしまっている。まったくの役立たずだ。


「除夜ちゃん……」


 ちまきも僕の袖をぎゅっと握ることしかできない。

 会長は沈黙を崩さない。

 とはいえ、僕もこれ以上は精神的にもたないかもしれない。


 そう思ったそのとき。

 助け舟は別の方向から出された。


「父上、彼に言われたとおり、詳細な説明をされたほうがよろしいのではないですか?」


 これまでずっと黙って状況を見守っていた学園長が、穏やかな口調で言葉を添えてくれたのだ。


「……いや、ワシはこれで失礼する。城の様子は、ここからでも充分に確認することができた。除夜くん……だったかな? 悪かったね、怖い思いをさせてしまって。ワシが大人げなかった」

「い……いえ、そんな……。僕のほうこそ、散々失礼なことを言ってしまって、すみませんでした」


 僕は頭を下げ、素直に謝罪の言葉を述べる。


「純忠、城の建設も含め、学園のことはすべてお前に任せているからな。これからも、よろしく頼むぞ」

「はい」


 続けて、都知事に話しかけられた学園長も静かに頭を下げる。

 それに合わせて、会長を初め、ちまきたちもみんな黙って頭を下げた。


 そんな中、都知事とSPたちは校門の外へと歩み去る。

 そして止めてあった大きな黒いリムジンに乗り込むと、都知事は学園をあとにした。


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