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独裁生徒会長サクラン  作者: 沙φ亜竜
第三話 デュエルは補佐の大仕事?
12/48

-4-

『しょ……勝者、生徒会長代理、射干玉除夜! 今回の生徒会戦挙デュエルは、現生徒会長の防衛成功という結果になりました!』


 思い出したかのように、放送部員が実況で結果報告をすると、静まり返っていた会場に一気に歓声が轟く。

 その瞬間、擬似空間が消え、僕の精神はもとの体の中へと戻った。


「除夜、よくやったな」


 真っ先に駆けつけ労いの言葉をかけてくれたのは会長だった。

 だけど僕は首を横に振る。


「いえ……会長のおかげです」


 自分の力ではない。

 会長の与えてくれた力のおかげで勝てた。

 だから、僕には労いの言葉を受ける資格なんてないと考えたのだ。


「ん? 私はなにもしていないぞ?」

「キスしてくれたじゃないですか」

「キ……キスぅ~!?」


 僕の言葉に驚きの声を割り込ませてきたのは、会長に続いて駆け寄ってきていた、ちまきだった。


「ちょっと除夜ちゃん、どういうことよ!?」

「どういうことって、言葉どおり……」

「か……会長さんと、キスしたのっ!?」


 どうしてそんなに目を血走らせて、怒鳴りつけるように声を荒げているのだろうか?


「うん、まぁ。僕の額に……」

「あ……なんだ。額、なのね……」


 ちまきは、なぜだかほっと安堵の息をつく。


「ああ、なるほど。あの額へのキスのことを言っていたのか」

「ええ。そのおかげで会長の力が僕に宿って、それであんな大男の先輩にも勝てたんですよね?」

「いや、違うぞ。あんなの、単なる嘘に決まっているじゃないか」

「え?」

「口からでまかせ、そう言ったまでだ。私はあんな脂ぎったデブなんかと戦いたくなかったからな。いくら精神体でニオイなども感じないとはいえ、目の前にあの巨体があるというだけで嫌気が差すだろう?」

「そんな理由で僕に戦わせるなんて! 勝ったからいいようなものの、負けてたらどうする気だったんですか!?」

「まぁ、負けたら負けたでべつにいいだろう。世の中、なるようにしかならないからな」


 なんだか、ちょっとカッコいい、と思ってしまった自分は、少々感覚がズレているのだろうか。

 と、突然会長が僕をぎゅっと抱きしめる。


「つまり、私とお前は一心同体ということだ」

「会長……」

「ちょ……っ!? なにやってんのよ、ふたりとも! 離れなさい!」


 ちまきが僕と会長を引き剥がそうと躍起になるけど、会長は面白がってさらに強くひっついてくる。


「もう! さっきみたいに、また燃やすよ!?」


 どうやら勝てないと悟ったのか、一旦距離を取り、ちまきは両手でなにかを握って目の前にかざした。


「また燃やす……って、どういう……ああっ!?」


 ちまきが目の前にかざしているのは、虫眼鏡だった。

 その虫眼鏡に、地平線近くまで下がってきている太陽の光を集め、僕の額へと向けてくる。


「熱ちちちちちっ! やめてよ、ちまき!」


 そして僕の額からは、さっきと同じように煙が上がる。

 さっきと違うのは、精神体ではなく実体だから、その熱さが尋常じゃないということだけだ。

 つまり、デュエル中に感じた額の熱さは、僕に宿った会長の力ではなく、ちまきのイタズラだったということに……。


「そんな危険なこと、しちゃダメだってば!」

「されたくなかったら、会長さんから離れなさい!」

「そんなこと言ったって……」

「ふっふっふ、除夜は私のものだからな。離したりはしない」

「だったら、今度は会長さんのほうに光を……」

「それはもっとダメだってば!」

「あ~~~~っ! 除夜ちゃん、こんな女の肩を持つっていうの!?」

「お前、先輩に向かって、こんな女呼ばわりか?」

「む~、なんでこんなことになってるんだ……」


 このときになって、僕はようやく思い出した。

 デュエルを観戦するため、ほぼ全校生徒と言っていいほど多くの生徒たちが、今僕たちのいる校庭に集まっていたということを。


『おお~~~っと! これは面白いことになっております! 射干玉除夜を巡って、生徒会長ともうひとりの女子生徒――ふむふむ、一年生の柏葉ちまきという名前の生徒ですか、彼女との三角関係愛憎劇が繰り広げられている模様です!』


 おおおおおお~~~~~~~!

 放送部員の実況に合わせて、デュエルのときよりも大きな歓声が沸き起こる。


『ここから先も、完全実況生中継でお送りさせていただきたいと思います!』

「やめてくださいっ!」


 僕は会長とちまきのそばからどうにか離れ、意気揚々と実況を続ける放送部員にツッコミを入れたのだった。



 ★★★★★



 春といえば桜! 桜といえばお花見!

 その思考回路は、オッサン化してませんか?

 ……痛たたたっ、殴らないでください、会長!


 次回、第四話、全校お花見大会!


 え? 会長……? ちょ、ちょっとなにしてるんですか!? う、うわぁ~っ!!


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