開幕、歌舞伎サッカー 3
6月5日、日曜日。
ついに風吹ふれあいまつりの日がやってきた。
おまつり会場である風吹スポーツセンターは、さまざまなスポーツの練習場がそろっているだけでなく、広場には出店をたくさんならべることもできるので、おまつりをするにはうってつけの場所なのだ。
「いまに、ここにいる全員がびっくりするだろうな」
ほかのチームのテントをみながら、陽介がわらった。
おまつりの開会式がおわると、それぞれのチームが試合にそなえて練習をはじめた。
中浦FCもパスやドリブルの練習をおこない、そのあと、ポジションべつに練習をおこなった。
サッカーには、おおきくわけて4つのポジションがある。
攻撃役のフォワード。
チームの司令塔となるミッドフィールダー。
守備役のディフェンダー。
そして、ゴールをまもるゴールキーパーだ。
中浦FCのフォワードは陽介と美羽だ。
はしるスピードならだれにも負けない美羽と、力のつよい陽介は、フォワードにぴったりの選手である。
ディフェンダーをつとめるのは5年生の男子3人組。
ときどきミスもするが、積極的にショルダーチャージをしかけるプレーで、ゴールキーパーの八雲とともにゴールをまもる。
ミッドフィールダーはボールコントロールの上手な翔真と天音がつとめている。
ミッドフィールダーがサッカーで重要なポジションといわれるのは、攻撃にも守備にも参加しながら、味方に指示をあたえなければいけないからだ。
なので、このポジションには、チームのキャプテンがえらばれることが多い。
* * * * *
午前10時。
いよいよ『ふれあいカップ』がはじまった。
1回戦は王川ファイターズと杉本シューターズの試合だった。
試合結果は0―2で、杉本シューターズが勝利。
最後は選手たちが握手をして、きもちよく試合がおわった。
そして2回戦。
いよいよ中浦FCの試合だ。
たいする相手チームは岩木スポーツ少年団。
強力なシュートをうつ選手が何人もいる、てごわいチームである。
試合まえに両チーム、10分間の練習時間がもうけられた。
だが中浦FCは練習をせず、マスクとサングラスで顔をかくして作戦会議をしている。
「中浦のやつら、なんで顔をかくしてるんだ?」
「さあ。風邪でもひいたんじゃないか」
「風邪なら、サングラスをかけるひつようないだろ」
「そういやそうだな」
試合がはじまる時間になり、岩木の選手がフィールドにはいろうとすると、
カンカンカン
会場のスピーカーから、木をうちあわせる音が聞こえてきた。
「なんだ?」
「なにかのショーかな?」
あたりをキョロキョロとみまわす岩木の選手たち。
「歌舞伎サッカーのはじまりぃ~、はじまりぃ~」
中浦FCの選手が、いっせいにマスクとサングラスをとった。
「ああぁ!」
岩木の選手が大声であえぐ。
まっしろな顔。
色あざやかな隈取。
みどり色のシャツに黒いショーツ。
そして柿色のソックス。
全身に歌舞伎のイメージをまとったすがたは、まさに歌舞伎サッカー選手だ。
「岩木のしょくん~、おたがい、がんばろうな~」
顔に隈をとった陽介が、岩木の選手に手をふった。
「ええと、これはいったいどういうことなの?」
とまどう審判に、
「ちゃんと許可をとっています。おまつりの委員長からも、やるようにおねがいされたんです」
翔真が歌舞伎サッカーのことを説明した。
「わかった。そういうことなら、すぐに試合の準備をはじめよう」
事情を知り、審判が試合の準備をはじめる。
「これより、中浦FCと岩木スポーツ少年団の試合をはじめます」
両チームの選手が、たがいに礼をする。
つづいて、チームべつにわかれての円陣。
「あっ、われら中浦えふしぃ~」
「ふぁいと~、おぉ~」
元気いっぱいのかけごえに、みどりの芝生がゆらりとそよぐ。
いよいよ、歌舞伎サッカーのキックオフ!!
(つづく)
更新は毎日おこなう予定です。
※ちなみにわたしの小・中学時代のポジションはフォワードでした。




