選ばれた理由
潮風が、静かに吹いていた。
海守の家の外。
ジェイクは、ひとりで立っていた。
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目の前には、海。
どこまでも続く、青。
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「……」
言葉が出ない。
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「現実じゃない」
小さくつぶやく。
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後ろから足音がした。
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「少しは落ち着いた?」
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振り向くと、澪が立っていた。
肩には黒猫。
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「……ああ」
ジェイクは答える。
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「でも、理解はできてない」
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澪は少し困ったように笑う。
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「だよね」
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沈黙。
波の音だけが響く。
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ジェイクが言う。
「ここは……本当に日本じゃないのか」
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澪は、少しだけ考えてから答える。
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「うん」
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「ここはね――」
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「海の世界と、人間の世界の“間”にある島」
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ジェイクは眉をひそめる。
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「間……?」
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「普通の人は来れないの」
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ルカが口を挟む。
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「必要なやつだけだ」
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ジェイクが見る。
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「必要……?」
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澪は少しだけ目を伏せる。
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「理由は……わからない」
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「でも」
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「ここに来る人には、何か意味があるって言われてる」
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風が吹く。
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ジェイクは海を見る。
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「……俺に、何の意味がある」
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その声は、低かった。
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「ただの野球選手だぞ」
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澪は答えられない。
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そのとき。
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「意味はある」
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低い声。
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ポセイドンが、いつの間にか立っていた。
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「すべては流れではない」
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「スクリューは、“選ぶ”」
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ジェイクの目が揺れる。
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「選ぶ……?」
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ポセイドンは海を見る。
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「今回のスクリューは異常だ」
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「本来、こんなに人は流れてこない」
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空気が変わる。
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「……じゃあ俺は」
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ジェイクが言う。
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「何かに巻き込まれてるってことか」
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沈黙。
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ポセイドンは答えない。
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代わりに、ルカが言う。
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「もう始まってるってことだ」
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その言葉が、重く落ちる。
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澪が小さくつぶやく。
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「……また、なのかな」
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ジェイクが見る。
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「また?」
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澪は、何も言わない。
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ただ、首元のネックレスに触れる。
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蒼海の真珠。
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そのとき。
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一瞬だけ。
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真珠が、淡く光った。
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ポセイドンの目が鋭くなる。
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「……やはり」
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ルカが低く言う。
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「来るな」
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風が止まる。
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海が、わずかに揺れる。
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何かが近づいている。
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ジェイクはまだ知らない。
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この島に来た理由も。
この海に隠された秘密も。
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そして――
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自分が巻き込まれる戦いのことも。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
蒼猫サンです
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