見知らぬ島
潮の匂いがした。
遠くで、波の音が聞こえる。
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「……っ」
男はゆっくりと目を開けた。
ぼやけた視界。
知らない天井。
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「……ここは……?」
体を起こそうとした瞬間、鋭い痛みが走る。
「っ……!」
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「無理しないで」
少女の声。
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黒い髪の少女が、こちらを見ていた。
その肩には、黒猫。
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「大丈夫?」
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男は、しばらく言葉が出なかった。
やがて、かすれた声で言う。
「……ここはどこだ」
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「海凪町だよ」
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「……海凪町?」
聞いたことがない。
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記憶を探る。
スタジアム。
歓声。
試合。
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そして――
水。
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男の表情が固まる。
「俺は……海に……」
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「スクリューだな」
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低い声。
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男が顔を上げる。
黒髪の青年が立っていた。
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静かな目。
まるで海そのもののような存在。
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「……誰だ」
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「ポセイドン」
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「海の番人だ」
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「は……?」
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意味がわからない。
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そのとき。
肩の猫が口を開いた。
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「混乱してるな」
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男は固まる。
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「……今、喋ったか?」
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「喋ってる」
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「っ……!」
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「夢か……?」
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「現実だ」
ルカが言う。
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ポセイドンが続ける。
「お前は、海のスクリューに巻き込まれた」
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「スクリュー……?」
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「世界と世界をつなぐ渦だ」
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沈黙。
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男はゆっくりと息を吐く。
「……ここは日本か?」
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澪は少しだけ迷って、答えた。
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「ううん」
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「ここは――島」
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「島?」
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「海の世界と、人間の世界の間にある場所」
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空気が止まる。
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「……は?」
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理解が追いつかない。
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ルカが言う。
「必要なやつしか来れない」
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「必要……?」
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ポセイドンが静かに続ける。
「この場所は、選ばれた者しか辿り着けない」
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男の心臓が強く鳴る。
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「……ふざけるな」
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「俺には家族がいるんだ」
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声が低くなる。
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「帰らなきゃいけない」
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澪の表情が揺れる。
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ポセイドンは、静かに言う。
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「帰れる保証はない」
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沈黙。
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重たい空気。
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男は拳を握る。
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「……俺の名前は」
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顔を上げる。
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「ジェイク・カーターだ」
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ポセイドンが言う。
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「知っている」
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その目が、わずかに鋭くなる。
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「だが――」
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ポセイドンは海のほうを見る。
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「今回のスクリューは、異常だ」
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その言葉が、静かに落ちた。
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蒼猫サンです
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