プロローグ
はじめまして。蒼猫サンです。
この物語は、海と人をつなぐ少女の物語です。
ゆっくり楽しんでいただけたら嬉しいです。
海が、泣いていた。
月の光に照らされた海は、静かなはずなのに――
その夜だけは違った。
波が荒れ、
水が渦を巻き、
まるで何かを拒むようにうねっている。
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その海の奥。
誰も知らない王国がある。
アクアリア王国。
人魚たちが暮らす、青い海の国。
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「見つけたぞ」
低い声が、海を震わせた。
巨大な影。
鋭い牙。
そして、サメのような目を持つ男。
ゼルガ。
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「海の秘宝――」
その視線の先にいるのは、
ひとりの人魚。
長い髪を揺らし、
赤ん坊を抱いている。
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その隣に、男が立つ。
海を渡る者。
船乗り。
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「この子には、触れさせない」
男は前に出る。
だが――
ゼルガは笑った。
「人間ごときが」
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次の瞬間。
海が裂けた。
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衝撃。
波。
そして、静寂。
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男は倒れ、
海の中に沈んでいく。
赤い色が、ゆっくりと広がった。
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人魚は、震える手で赤ん坊を抱く。
そして、ひとつの真珠を取り出す。
淡く光る、青い宝石。
蒼海の真珠。
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「ルカ」
足元に、小さな黒猫が現れる。
青い瞳。
震えるほど小さな体。
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人魚は、優しく撫でる。
「この子を守って」
その声は、とても静かだった。
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光があふれる。
真珠の力が、猫へと流れ込む。
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そして人魚は、
赤ん坊を強く抱きしめる。
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「澪」
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その名前を、
最後に呼んだ。
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海が、大きく揺れる。
すべてが、飲み込まれていく。
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そして――
静寂。
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それから、十六年。
海凪町。
小さな黒猫が、少女の肩に乗っていた。
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物語は、ここから始まる。




