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4/1~4/9

「ねぇ皆、話があるんだけどさ……」

 朝食の時間。

 私が口を開く。

「ん?なんだ?」

 勇者がイノシシのスープを飲みながらどうでもよさそうに返事だけした。

「やっぱり引き返さない?おかしいよ、ここ」

「……どういうことですか?」

 僧侶が不思議そうに聞く。

「だって冷静に考えてみてよ。魔族領は奥に行けば奥に行くほど強い魔族……人型の魔族が居るはずでしょ?でも、草原を通り過ぎても山を通り過ぎても同じような魔族しかいないじゃない。まるで配置されてるみたいに」

「だから……多分、これらは全部罠なのよ!魔王に動きがばれてるのかもしれないし、いったん引き返して……」

「魔法使い殿」

 剣士が口を開く。

「その話、一部我も同意する。魔族領に入りたくさんの魔族を倒してきたのに魔王はおろか、負王角の誰かが対応をしないのはおかしいということだろう?我もそれには違和感を覚えている」

「じゃ、じゃあ!」

「だが……我らはやるしかないのだ」

「我らは勇者一行。聖剣に選ばれた勇者と、最強の戦士たち。我らはたとえ茶番だろうと罠だろうと、やるしかないのだよ」

 剣士の覚悟は決まっていた。

「わ、私も剣士さんに同意です。危険かもしれませんけど、頑張りましょ!」

「…………」

 分かってる。

 私が心配しすぎなのかもしれないことも、私たちにしかできない任務であることも。

 でも、でも……

「私、死にたくないよ……」

 目に涙が溜まる。

 怖い。

 あの日、強い魔族に出会った時から。

 魔族が怖い。魔王が怖い。

 私は、とうに心が折れていた。

「魔法使い……」

 勇者がため息をついた。

 なに?またガタガタ文句を言うつもり?

 好きに言いなさいよ。もう私は気にしないから。

「分かるぜ、その気持ち」

 ……え?

「馬鹿みたいに罠に突っ込むのがこえーっていうのも、死ぬのがこえーのも分かる。てか、人間なら当然の反応だ」

「でも剣士が言った通り、俺はそれでも進む。馬鹿みたいに罠に突っ込んで、死ぬ気で頑張って、死んでも魔王を倒す。それが勇者なんだよ」

「俺は聖剣を引き抜いた時から腹は決めてる。選ばれちまったからな。でもお前はちげぇ。悪いこと言うと、代わりが利く。全員で引き返して、別の魔法使い連れてくんのも俺はありだと思うぜ」

「……」

「どうする?お前が引き返すんなら俺たちはついてくし、お前が頑張るんなら俺らも頑張るぜ」

 私は。

 私は……。

「もうちょっと、頑張ってみる」

「そうか。じゃあ飯食って出発だな」

 勇者の言葉に、少し勇気が持てた。


 3457/4/1


 今日はメンバーで引き返すかどうかを話した。

 正直、まだ怖い……けど行くって決めたからには行く。

 大丈夫、私たちは強い。

 きっと魔王だって倒せるはずだ。


 3457/4/5


 今日は、野営の痕跡を見た。

 当然、私たちのものではない。

 つまり……

 近くに、知能を持った魔族がいる。

 気を付けなければ。

 私たちは人型の魔族との戦闘経験が一回しかない。

 正直、不安だ。

 しかし、不安を吐露できるところはここしかない。

 頑張れ、私。




「ここら辺伐採された木もあるな。やっぱりここら辺まで来たら……」


 ザッ


 私たちの視界に、一人の男が写った。

「こんにちはー!」

 男は仁王立ちのまま挨拶をする。

「どーも」

 勇者が挨拶を返すが、顔には冷や汗が浮かんでいた。

「俺は然の王アベッキ。引き返したら許してやるぜ」

 然の王……負王角か!

 しかもこの魔族……強い。かなり。

 見た目がほとんど人間なのもそうだが、体から溢れ出る魔力量が尋常じゃない。

「……分かった。帰るから許してくれ」

 勇者が選んだ選択は、”引き返す”ことだった。

「そうか。ならよかった。気を付けて帰るんだな!」

 私たちがアベッキに警戒をしながら引き返す。

 そして、アベッキの姿が見えなくなった頃。

「よし、別ルートから行くぜ」

 勇者がそう言った。

 やっぱり。

 こんだけ一緒に居るとなんとなく考えてることがわかる。

「そうか。残念だ」

 私たちの目の前には、アベッキの姿があった。

「然の王アベッキ。行くぜ」




 3457/4/9


 剣士が死んだ。

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