3/1~3/30
3457/3/1
今日は魔族に出会った。
鹿型の魔族であんまり強くなかったけど、勇者がまたうだうだ文句言っている。
けど別になんも思わなかった。
そういう人なんだと納得してしまえばもうどうでもいいことだ。
でもこのどうしようもない勇者、大事な時はちゃんとしてるのよね。
野営の時……
「日が出るまで寝んぞ。まず俺が一時間起きる。次に剣士が、次に僧侶。そんで魔法使いが一時間起きてそしたら次は俺を起こしてくれ。んじゃ、お前ら寝ろ」
私は、勇者が絶対さぼって寝ると思ってた。
だから監視して寝たら起こしてやろうと思ってたの。
でも、夜の一時間勇者はずっと起きてて……
「起きろ剣士。交代だ」
「む……了解」
なんていうんだろうなー。
ダメな奴が真面目にやってると感心しちゃうのよね。私。
一時間余計に起きちゃったから少し寝不足だったけど、今日は安心して寝れそう。
3457/3/2
今日も魔族に出会った。しかも二体。
今のところ人間の形に近い魔族がいないから楽勝だけど、奥に行けば行くほど強い魔族が多くなるそうだから、気を引き締めないと。
地図によると、あと一週間ほどで森を抜けられるらしい。
まぁ道中森ばっかだけど。
人型の魔族は文明を形成してるっていう噂があるけど、実際はどうなんだろうね?
そんなことより、今日の料理当番は僧侶だったんだけど、めちゃくちゃおいしかった。
「……僧侶。あんたのご飯おいしいわね」
「え?そうですか?えへへ」
「何入れたのよ。すごいじゃない」
「えっと……愛情?なんちゃって……」
料理のコツを聞くと、”愛情”らしい。
明日の料理当番は私だ。
面倒くさいなぁ。毎日僧侶のご飯が食べたい。
3457/3/3
今日も魔族が出た。これから魔族と出会うことは日常になるだろう。無駄に記さなくてもいいかな。
今日は根っこに足を取られて怪我をしてしまったけど、僧侶が直してくれた。
回復魔法……怪我を治すイメージなんて、私にできるはずがない。
すごいなぁって純粋に思った。
最近僧侶への好感度が右肩上がりだ。
思えば、この子はあざといだけでずっといい子である。
初対面の時の悪い先入観が強いのかな。
3457/3/10
今日は森を抜けだし、草原に出た。
久々に太陽を見た気がする。
草原にはそこら中に魔族がいるわけではないが、ところどころ魔族が見えている。
私たちが小さいから遠巻きに見つけることができればバレないし、魔族がいるルートは迂回できる。
そして、暑苦しいだけと思っていた剣士の良いところも見えてきた。
こいつはうるさいが、勇者のせいですぐ険悪になる雰囲気を和ませてくれている。
それだけじゃない。森で危険そうな道を見分けるのも、草原で魔族を真っ先に見つけるのも剣士だった。
案外、私たちは良いパーティーなのかもしれない。
……。
そんなことはないか。
3457/3/12
明日からは山だ……。
最悪最悪最悪。
山なんて疲れるし足場も悪いしで最悪じゃない?本当に。
僧侶の魔法は疲れを癒すこともできるらしいけど、それをすると僧侶が疲れちゃうらしい。
まぁ無理はさせられないよね。
あー山かー。いやだ。いやだなー。
でもまぁ仕方ない。
山を抜ければあと半分だ。
そろそろ強い魔物に気を付けないといけない場所になってきた。
魔族は夜目が利くやつもいる。
夜は特に警戒だ。
のんびり日記を書く暇もなくなるかもしれない。
でも、僥倖もある。
最近、勇者の愚痴が減ってきたのだ。
減ってきたっていうか、チームとしてもまとまってきている気がする。
良いことだ。
3457/3/18
山に入った時から、魔族が多すぎる。全然抜け出せない。
魔族は倒すことはできるレベルだし、強くなってる感じはしないけど、怪我を負ったり、疲れたりで全然前に進めない。
仕方ないことではある。それに、体力面では私が完全に足を引っ張っていた。
これじゃ魔王討伐なんてかなり先のお話だ。
それにしても、今日は剣士が不穏なことを口にしていた。
「うーむ、おかしいな……」
「ん?どうした、剣士」
「魔族の強さに変化がないのだ。最初に入った森も、草原も、この山も。魔族領の奥に向かえば向かうほど魔族は強くなるのではないのか?」
「ん-……まぁいいじゃねぇか。弱いのに越したことはねぇぜ」
「うむ。そうではあるのだが……」
私の人生経験上、こういう違和感は致命傷になりかねない。
魔族の強さが変わらない……ね。
確かに、魔族領の奥に行けば行くほど魔族が強くなるという話がある以上、それはおかしいことではあるわ。
もしかして、嘘の情報を掴まされてるんじゃないでしょうね?
もしくは…………
いや、まさか。
流石にあり得ないか。
3457/3/20
今日もまぞくにあった。
つよかった。
今でもてがふるえている。
こわい。
つよかった。いたかった。つらかった。
でも、だれもわたしをしんぱいしくれない。
がんばったのに。がんばったのに。
なんで?どうして?
わたし、つらいよ。
だれか
「おい魔法使い」
ガラガラな勇者の声がした。
「……な、なによ」
私は震える声を必死に抑えて返事をする。
「さっきは助かった。ナイスだ」
「……ありがと」
「そろそろ交代だな。それ書き終わったら寝ろよ」
今日は、少しだけ泣いた。
3457/3/26
今日は、やっと山を抜け出せた。
これで半分。折り返し地点だ。
今度は相変わらず森だけど、山と比べたら平坦な道で歩きやすい。
魔族もあの日に強い奴が偶然いただけで、弱い魔族ばっかりだ。
……流石に、私もおかしいと思った。
私の一つの仮説が立証されるかも……
…………
まさかね。
まさかまさかまさか。
ありえない。
はず。
3457/3/30
月のはじめと月の終わりには日記を必ず書こうと思う。
道中は弱い魔物しか現れない。
きな臭くなってきた。
おかしい、明らかに。
これはもうきっと確定だ。
明日の朝、全員を説得して引き返そうと思う。
じゃないと多分、全員死ぬ。




