カラスの目はね、黒くてきらきらしてるんだよ
カラスの目はね、黒くてきらきらしてるんだよ。
まるで夜の空に浮かぶ、小さな星みたいに。
ある朝、ぼくは公園のベンチにすわって、そのカラスを見ていた。
カラスはとても静かで、ぼくのことをじっと見つめていた。
こわい目じゃない。
むしろ、何かを知っている目だった。
「どうして、そんなにきらきらしてるの?」
ぼくがそう聞くと、カラスは首をかしげた。
そのとき、風がふいて、木の葉がさらさらと音を立てた。
カラスは空を見上げ、黒い羽をひらいた。
――カラスの目はね、
たくさんの悲しみも、
たくさんのやさしさも、
全部見てきたから、きらきらしてるんだよ。
そんな声が、心の中に聞こえた気がした。
カラスは空へ飛び立ち、青い空に小さくなっていった。
でも、ぼくはもう知っている。
黒い目は、こわいから黒いんじゃない。
大切なものを、ちゃんと見逃さないために、
あんなふうに、きらきらしているんだ。
それからぼくは、カラスを見るたびに、
そっと目を合わせて、心の中で言う。
「こんにちは。今日も、きらきらしてるね」




