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死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


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第008話 極振りヒーラー、蒼の深淵の前で

リーベルの広場。ステラは工房を出た後、すぐに露店へと向かった。


所持金は、ロア戦で得たゴルドと合わせてようやく3,000ゴルド。

その全てを使って、MPポーションを補充する。


「これで、持てるだけ買ったから……」


指輪と新スキルのおかげで、MP切れの心配は格段に減った。それでも、ポーションは命綱だ。


《アクア・リングレット》をつけた手首に、ふと目をやる。

VITが+10になったからといって、ステータス画面のHPバーに大きな変化はない。

しかし、装備した瞬間から、わずかに体が軽いような――地面を踏みしめる感覚が、確かに自分のものになった気がした。


「よし……行こう」

リーベルを出たステラは、ノエルに教えてもらった方角――《花咲きの草原》の北を目指した。


草原を抜けると、風景は徐々に変化していく。花畑は岩がちになり、低い茂みが目立つようになる。現れるモンスターも、単なるスライムではなく、硬い甲羅を持つ《ロック・クラブ》や、石を纏った《アース・エレメント》といった、防御力の高い敵ばかりだ。


ステラはなるべく戦闘を避けようとした。

攻撃手段に乏しい自分が、スライムより遥かに頑丈そうな相手に挑むのは得策ではない。

だが――ダンジョンへの道は一本道。逃げ場はない。


曲がり角を曲がった瞬間、岩の塊のようなアース・エレメントと鉢合わせになる。


「ひっ……!」


巨体が動いた。鈍重な拳が、空気を押しつぶすような音を立てて迫る。

ステラは咄嗟に杖をクロスさせて防御の姿勢を取った。


――ゴツッ!


鈍い衝撃が腕を通じて全身を揺らす。HPが一気に削られ、視界が赤く点滅する。

だが、ステラの口が反射的に動いた。


「《ヒール》!」


光がほとばしり、WIS極振りの《ヒール》が炸裂。回復量は最大HPをはるかに超えた。

その瞬間、体表に淡い水色の光の膜が一瞬張る。


(これが、《リストア・ヴェール》!)


光の膜は、HPバーの上にもう一つの青いゲージを生み出す。

次の瞬間、エレメントが投げつけた石弾がステラに直撃

――だがダメージは青いゲージを削るだけで、HPはびくともしなかった。


「すごい……!本当に、もう一つHPが増えたみたい!」


回復魔法がダメージを相殺するだけでなく、超過回復分を“疑似HP”として蓄積する。

VITゼロという致命的な弱点を、WISの極振りで補っている。


だが、敵も容赦しない。岩の拳が続けざまに襲いかかる。

リストア・ヴェールで弾くたびに、バリアの耐久力を示すゲージが削られる。


(まずい……!)

バリアが尽きれば、今度こそ直撃だ。ステラは後退しながら、再び詠唱を開始する。


「《ヒール》!」

再び青い光が広がり、超過回復分で再びゲージが回復していく。


「っはぁ……!間に合った……!」


無限に再生するバリア、絶え間なく循環する魔力。

これが、《蒼流の指輪》と《マナ・サーキュレーション》の真価だった。


だが、エレメント本体はまだほとんど傷ついていない。

(攻撃……しなきゃ!スライムと同じように、どこかに核があるはず)


ステラはバリアを盾に距離を詰め、杖を構えた。

半透明の身体の奥で、ひときわ淡く揺らめく箇所が目に留まる。


(あそこ……少し柔らかそう)


思いきり杖を振り下ろす。

手に伝わったのは、水を押しのけたような抵抗と、その奥にある柔らかい感触。

命中の瞬間、青白い光が弾け、エレメントが苦悶するように震えた。


「よしっ……効いてる!」


ステラはもう一撃。杖の先が核らしき部分を捉えるたび、敵の身体がどろりと崩れ、光を失っていく。

そして、最後の一撃が命中した瞬間、エレメントは淡い粒子となって霧散した。


静寂が戻り、視界の端にシステムメッセージが浮かぶ。


《レベルアップ!》

ステータスポイント +5

『スキル《回復の心得Ⅰ》を習得しました』


「レベルアップ……!やった……!えっと、スキルはっと…」

ひと息ついて、ステータスウィンドウを開く。


新スキル:《回復の心得Ⅰ》

 習得条件:回復魔法を合計で100回使用する。

 効果:回復魔法の回復量が1%上昇。


「回復量が上がるんだね。Ⅰってことはヒールをもっと使えば進化するのかな?」

ステラの予想は実際にあたっている。

〇〇の心得はいわゆる熟練度システムのようなもので、対応するスキルの使用回数に応じて、効果が少し強化される。


「あとはステータスポイント……どうしようかな」


一瞬だけ考える素振りを見せて、すぐに首を振る。


「ううん、やっぱりWIS極振りでいいや。

ノエルさんからもらったアクア・リングレットがあるし、

《リストア・ヴェール》もあるから、多少攻撃を受けても大丈夫なはず」


そう呟きながら、すべてのポイントを迷いなくWISへと割り振る。

ウィンドウに表示された知恵の数値が、ひときわ眩しく輝いた。


「……よし、これで準備完了。あとは、蒼の深淵洞へ――!」


ステラは杖を握り直し、風に揺れる髪を払いのけながら、

遠くに霞む青い洞窟の入口へと足を踏み出した。


先輩ヒーラーリリスさんのアドバイスをガン無視するステラちゃんであった(笑)


次は11/27日に投稿する予定です。


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