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死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


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第006話 極振りヒーラー、新しいスキルの発現

奇襲してきたスライムを撃退したあと、ステラは深呼吸をして杖を下ろした。

ほんの数体の相手でも、いまだに気を抜けばやられてしまう。

VITゼロという設定は、やはり洒落にならない。


「でも……これで少しは慣れてきた、かな」


ログウィンドウには小さく「レベルアップ」の文字。

ステラは画面を開き、獲得したステータスポイントを見つめた。


「うーん……VITに振るべきなんだろうけど……」


指先が迷う。だが次の瞬間、彼女はきっぱりと首を振った。


「違う。私は“回復で守る”って決めたんだ」


防御を上げるより、回復量を増やす方が自分の戦い方に合っている。

ヒールの効力を底上げし、少しでも長く立ち続けられるように。

ステラは全ポイントをWISに振り分けた。

WISの数値が上昇し、ステータス画面の「魔法回復量」がじわりと伸びる。


「よし……これで、もう少し戦えるはず」


彼女は杖を握り直し、再び花咲きの草原の方へと歩みを進めた。


昼下がりの草原は、どこまでも穏やかだった。

小花が風にそよぎ、小さなモンスターたちがときおり顔を出す。

だが――その静けさを破るように、突如として大地が震えた。


「な、に……?」


地面の下から膨張するように現れたのは、巨大なスライムだった。

通常のスライムとは違う――その表面は、まるで虹色の膜をまとった宝石のよう。

花咲きの草原を統べる存在、《虹粘体スライム・ロア》。

花咲きの草原に希に出現するネームドモンスターだった。


「うわ……きれい、でも……強そう」


ステラは思わず息をのむ。

体表は虹色に光を反射し、まるで液体そのものが生きているかのようだった。


次の瞬間、スライムが地面を弾け飛ぶように跳躍。

衝撃波が走り、土が舞い上がる。

「――っ!」

ステラはとっさに杖を構え、防御の姿勢を取る。

透明な衝撃が身体を包み、HPバーが半分近くまで削られた。


「……っ、やっぱり普通のスライムとは違う!」

それでも、恐怖で立ち止まることはなかった。

彼女は詠唱に入る。

「《ヒール》!」

光が降り注ぎ、体を包む痛みがすうっと引いていく。


HPが戻る。だが、スライムの動きは止まらない。

高速で跳ね回り、液体の身体から粘弾を飛ばしてくる。

ステラは杖でそれを弾きながら、必死に距離を取った。

「くっ……っ、あたらないで、お願いっ!」

着弾のたびに草花が焼け、地面がじゅうっと音を立てる。


ヒールを唱えるたびにMPが減っていく。

指輪の回復は心強いが、ヒールの消費に追いつかない。

戦闘開始から数分、すでにポーチの中のポーションを二本使い切っていた。


「……これ以上は、持たない……!」

残るは最後の一本。ステラは決意とともにそれを開け、青い液体を一気に飲み干した。

息が荒い。頬には汗が流れ、指輪の光が不規則に点滅している。


それでも――退かない。


スライムが再び跳躍し、地面に叩きつけるように降下してきた。

ステラは杖を構え、衝撃を受け止めた。

その瞬間、スライムの内部にちらりと光る“何か”が見えた。


(……今の、光……!)


もう一度。スライムが跳ねた。

そのたびに、中心部で淡く輝く球体がちらりと姿を見せる。


「核……!」


脳裏によぎるのは、昨日の記憶。

スライムを倒したとき、杖の先で核を貫いた瞬間。

あれが――致命傷だった。


「そうか、そこだったんだね」

ステラは息を整え、詠唱を再開した。

「《ヒール》!」

再び体を光が包む。だが、これは“立て直し”ではなく、“耐えるため”のヒール。


スライムが突進。

(HPが全快だったら、攻撃を受けてもきっと耐えられる)

彼女は前に出た。防御も避けも捨て、タイミングを合わせて杖を突き出す。


――ドンッ!

手に重い手応えが走った。

スライムの核に杖の先が当たった瞬間、眩い光が弾け、通常とは比べものにならないダメージエフェクトが走る。


「……効いてる!」

ステラは確信した。

そこからは、まるで祈るように動いた。

攻撃を受けるたびにヒール。

そして――核が露出するたび、杖を突き立てる。


どれほど時間が経ったのかわからない。

最後の一撃を加えたとき、スライムは虹色の光を散らして弾け飛んだ。

花びらが舞い、草原に静寂が戻る。


ステラはその場に膝をついた。

胸の鼓動がまだ速い。

だが、ウィンドウが彼女の視界を覆う。


《レベルアップ!》

ステータスポイント +5

新スキルを獲得しました!


「……やった、勝てた……!」

小さく笑みを浮かべたステラは、ゆっくりと画面を確認する。


新スキル:《リストア・ヴェール》

習得条件:戦闘中に最大HPを上回る回復を累計20回

効果:回復魔法で最大HP以上を回復した際、超過分をバリアとして展開する。


新スキル:《マナ・サーキュレーション》

習得条件:最大MP200以上で、1度の戦闘でMPを0にする回数が累計3回以上

効果:MPの自然回復速度を2.5倍にする。


《リストア・ヴェール》の習得条件は、まさにステラのビルド、WIS極振りが生んだ必然だった。

最大HPが低い上に回復量だけが異常に高いため、ヒールをつかえば最大HPを超過する回復量となり

習得条件を極めて満たしやすくなっていたのだ。


そして《マナ・サーキュレーション》は、高い最大MPを持つ者が、

その大量のMPを使い切るほどの高消費な戦闘スタイルを繰り返すことで得られるスキルだ。

回復魔法を連打するステラの戦い方は、この条件をクリアするのに最適だった。

指輪とこのスキルがあれば、MP切れの心配は格段に減る。

そして《リストア・ヴェール》があれば、VITゼロの致命的な被弾を一時的に防ぐ手段を手に入れた。


「回復が防御になる……!これなら、ヒーラーでもちゃんと戦えるかも」

ステラは青空を見上げ、そっと杖を握りしめた。

花咲きの草原を渡る風が、彼女の髪を揺らす。


戦いの余韻の中、ステラの胸には、確かな自信が芽生えていた。

“ヒーラーでも、戦える”――そう信じられるだけの一歩を、今日、踏み出せたのだ。


戦いで使い果たしたポーションの瓶を見下ろし、ステラは小さく息をつく。

「……今日は、もう十分だよね」


草原を抜け、街道へと足を進める。

夕暮れに染まりゆく空の下、帰路を歩く彼女の足取りは、どこか軽かった。


やがて、街の門をくぐり、見慣れた石畳の通りに入る。

プレイヤーの姿がちらほらと見え、どこか安心感が胸を満たした。

「ふふっ、ちゃんと生きて帰ってこれた……」


ステラは街の片隅にある噴水広場へ向かい、ログアウトメニューを開いた。

透き通るような水音が耳に心地よく響く。

「次は……もっと強くなって、自分の力を試してみよう――」


そう呟くと、彼女の姿は淡い光の粒となって消えていった。


リフレクト・ヴェールで少しは楽になるといいね。


仕事のトラブルで20日に投稿できなかったので

次の話は少し早めて11/23に投稿する予定です。

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