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死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


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第061話 極振りヒーラー、スキル交換

イベント終了を告げるメッセージが表示された直後、視界が真っ白に包まれた。

光が収まると、二人は元いた場所――ハネリ村の広場に戻っていた。


「お疲れ様でしたー!冒険者の皆さん!」

突然、明るい声が響いた。

ステラとヒマワリが振り向くと、空中に光の粒が集まり始める。

粒が形を成し――ナビ妖精パルムの姿が現れた。


「第2回イベント『秘境アヴァロンの踏破』、楽しんでくれたかな?

今回、《古の宝石》を10個集められなかった人は、次回イベントへ持ち越し可能だよ。

念のため、もう一度おさらいね。

《古の宝石》10個で、装備かスキルと交換できます!

交換は個別スペースで行われるから、パーティを組んでいた人は、今のうちに分配しておいてね!」


ステラはヒマワリの方を向く。


「えっと……30個を半分ずつだから、15個ずつだよね」

「ううん、ステラに20個あげる」


ヒマワリが首を横に振った。


「え、でも――」

「《陽炎》のスキル、譲ってもらったでしょ?あれ、すごく役に立ったから」


ヒマワリが優しく微笑む。


「だから、ステラに多めに。お礼だよ」

「……ありがとう、ヒマワリちゃん」


ステラは嬉しそうに笑った。

二人は宝石を分配し、それぞれ20個と10個を手にする。


「分配が終わったようですねっ!それでは、転送いたしますー!」


パルムが再び手を振ると、二人の足元に魔法陣が浮かび上がった。

光が二人を包み込む。

視界が真っ白になり――

次の瞬間、ステラは見知らぬ部屋に立っていた。




広い、白い空間。

天井は高く、壁は見えないほど遠い。まるで、無限に広がる倉庫のようだった。


そして――

目の前には、無数の台座が並んでいる。


「うわぁ……」


ステラは思わず声を上げた。


台座の上には、装備やスクロールがずらりと並んでいる。

剣、斧、槍、弓、杖、盾――あらゆる種類の武器。

鎧、ローブ、軽装備――様々な防具。

そして、光り輝くスキルスクロールの数々。


「すごい……全部、交換できるの……?」


ステラは圧倒されながら、ゆっくりと歩き出す。

台座に近づくと、装備の説明が浮かび上がる。

真っ赤な大剣。炎を纏い、禍々しいオーラを放っている。

説明には、高いSTRが必要と書かれていた。


「……STRゼロだから無理だね」


ステラは苦笑して次へ進む。

雷を纏う戦斧、風を切り裂く双剣、破壊の力を秘めた戦槌――

どれも強力な攻撃系装備だが、ステラには全く縁がない。


「攻撃系は全部パスだね……」


次に目に留まったのは、生産系のスキルスクロールだった。

武器や防具を作れる鍛冶スキル、ポーションを作れる錬金術スキル――

どれも高いDEXが必要と書かれている。


「DEXもゼロだから……無理かぁ」


ステラは少し残念そうに呟く。

そして、ある一角に差し掛かった時――


《スイーツクラフト》


料理スキルの上位版。高級なお菓子やスイーツを製作可能


「お、お菓子……!」


ステラの目が輝く。

ケーキ、クッキー、マカロン――美味しそうなスイーツの画像が浮かび上がる。


「これ、いいなぁ……でも、DEX足りないんだよね……」


ステラは名残惜しそうにスクロールから目を離し、さらに奥へ進んだ。


支援系のスキルが並ぶエリアに入る。


《賢者の叡智》

WISが1.5倍になる


「これ、いいかも……」


ステラは立ち止まり、スクロールを見つめる。


《魔力増幅》

全ての魔法ダメージが上昇


「不死鳥のスキルと相性良さそう……」


悩みながら、さらに進む。


そして――

ある一つのスクロールの前で、ステラの足が止まった。


「……これ」


ステラはスクロールに手を伸ばし、説明文をじっと眺める。

目が、真剣な光を宿す。


「……うん」


何かを決めたように、ステラは小さく頷いた。

そして再び歩き出し、別のスクロールを探し始める。


「えっと……あれ、どこだっけ……」


台座を一つ一つ確認しながら進み――


「あった」


《賢者の叡智》のスクロールを手に取った。


「これにしよう」


ステラは二つのスクロールを持ち、交換台へと向かう。

光が包み込み――


視界が戻った時、ステラは元の広場に戻っていた。





「おかえり、ステラ」


ヒマワリが笑顔で手を振っている。既に交換を終えていたようだ。


「ヒマワリちゃん、早かったね」

「うん。もう決めてたから」


ヒマワリが嬉しそうに笑う。


「ヒマワリちゃんはどんなスキルを選んだの?」

「いろいろ悩んだけど、《疾風連斬》にした」


ヒマワリが新しいスキルスクロールを見せる。


「前方に5連撃を叩き込むスキルなんだって。しかも、攻撃の度に加速していくらしい」

「すごい!ヒマワリちゃんにぴったりだね!」


ステラが目を輝かせる。

高いAGIで敵に肉薄し、《疾風連斬》で一気に畳みかける――

ヒマワリの戦闘スタイルに、完璧に合っている。


「ステラは何を選んだの?」


ヒマワリが興味津々で尋ねる。


「えっとね……ちゃんと使えるか分からないけど、物を掴めるやつ」

「え……?」


ヒマワリが首を傾げる。


「物を掴める……?どういうこと?」

「うーん、説明より実際に見た方が早いかも」


ステラが笑顔で立ち上がる。


「モンスターと戦いに行ってみよ!」

「え、ちょ、ちょっと待って――」


ヒマワリが慌てるが、ステラは既に駆け出していた。




ハネリ村を出て、少し進んだ草原。

そこには、第二階層のモンスター――《ストーンビースト》が数体、ゆっくりと徘徊していた。

岩のような硬い外殻を持つ、四足歩行の魔獣だ。


「いた!」


ステラが杖を構える。


「《マジック・ハンド》!」


魔力が集まり――

空中に、半透明の巨大な手が現れた。


「え……?」


ヒマワリが目を丸くする。

巨大な手は、まるで意思を持っているかのように動き出す。

ストーンビーストに近づき――


ガシッ!


鷲掴みにした。


「グルルルッ!?」


ストーンビーストが驚いて暴れるが、巨大な手は離さない。

そして――


「えいっ!」


ステラが杖を振り上げると、巨大な手もそれに連動して動く。

ストーンビーストを持ち上げ――

全力で、上空に投げ飛ばした。


「グォォォォォ!?」


ストーンビーストが悲鳴を上げながら、空高く舞い上がる。

そして――


ドガァァァン!


地面に激突。

岩の外殻が砕け散り、落下ダメージでストーンビーストのHPがゼロになった。


「……うわぁ」


ヒマワリが呆然と呟く。


「やった!使えた!」


ステラが嬉しそうに笑う。

魔法の手が消え、静寂が戻った。


「ね、便利でしょ?」

「便利……なのかな……?」


ヒマワリが微妙な表情で答える。


その時――

ガサガサガサッ!


草むらから、大量のモンスターが現れた。

《ストーンビースト》の群れ――20体以上が、一斉に襲いかかってくる。


「うわっ、囲まれた!」

「ヒマワリちゃん、下がってて!《マジック・ハンド》!」


再び、巨大な手が現れる。

だが今度は――

手のひらを上に向け、平らな形を作った。


「え……まさか……」


ヒマワリが何かを悟る。


「乗って!」


ステラが巨大な手に飛び乗る。

まるで、空飛ぶ絨毯のように。


もう一つの手で、ヒマワリを掴んで持ち上げた。


「わっ!?」


ヒマワリが驚く間もなく、二人は上空へと舞い上がる。

地上から10メートル、20メートル――

ストーンビーストたちの攻撃が届かない高さまで上昇した。


「ステラ!?何する気!?」

「フェニックス・フレアで焼き尽くす!」


ステラが杖を掲げる。


「《不死鳥》!」


体が炎に包まれ、不死鳥の力が解放される。

魔力が集まり、杖の先端に巨大な火球が生まれた。


「《フェニックス・フレア》!」

不死鳥の形をした炎が、地上に向かって放たれる。

真っ赤な炎が、隕石のように落下し――


ドゴォォォォォン!


地面に激突した瞬間、炎の嵐が吹き荒れた。


「グォォォォ!?」


ストーンビーストたちが悲鳴を上げる。

炎が地面を這い、草原を焼き尽くす。

岩の外殻も炎に耐えきれず、ストーンビーストたちは次々と光の粒となって消えていった。


炎が収まった後――

地面には、焼け焦げた跡だけが残っていた。


「やった!うまくいった!」


ステラが嬉しそうに笑う。


「……そのスキルを取った理由は?」


ヒマワリが、やや疲れた声で尋ねる。


「いろいろ掴めて便利だと思ったから!」


ステラが無邪気に答える。

ヒマワリは、小さくため息をついた。


ステラは、いつもこうだ。

有利不利を考えず、楽しいと思ったことを直感で選ぶ。

効率や戦略ではなく、面白そうかどうかで判断する。


だが――

その選択が、時々想定外の現象を引き起こす。


今回も、そうだった。

《マジック・ハンド》は、本来は物を運んだり、罠を解除したりするための補助スキルだ。

戦闘に使うことは、想定されていない。

だがステラは、それを移動手段として使い、さらに高所からの爆撃に利用した。


「……まあ、ステラらしいけど」


ヒマワリは苦笑し、空中から地上へと降りる。

ステラも、魔法の手を消して着地した。


「次は、どこ行こうか?」

「……とりあえず、村に戻ろう」


ヒマワリが肩を竦める。


「うん!」


ステラは嬉しそうに笑い、二人はハネリ村へと戻っていった。






少し時をさかのぼって――

運営本部。


「対象者のスキル交換は終わったな」


一人のスタッフが、モニターを確認しながら呟く。


「ステラは何を選んだんだ?」


別のスタッフが尋ねる。


「ステラなら《賢者の叡智》あたりがいいところだろう」

「頼むからこれ以上変なことをしないでくれ……」


スタッフたちが祈るような表情で、取得スキルを調べる。


「ああ、やっぱり《賢者の叡智》を取ってるよ……」


一人が安堵のため息をつく。


「よかった……普通の選択だ……」

「……え、マジック…ハン…ド?」


別のスタッフが、画面を凝視する。


「は?」

「二つ目のスキル……《マジック・ハンド》を取ってる……」

「……なんかすごく嫌な予感が」

「奇遇だな、俺もだ」


スタッフたちの表情が、一斉に曇る。


その時――


「ステラを探してモニターに映してくれ」


プロジェクトマネージャーの桐谷が、低い声で指示を出す。


「了解です」


スタッフが操作し、ステラの映像をメインモニターに映し出す。


そして――

画面に映ったのは、

半透明な巨大な手に乗って、空中を飛び回るステラ。

地上では、炎の嵐が吹き荒れ、ストーンビーストたちが次々と消滅していく。


「……あ、あかん」


一人のスタッフが、力なく呟く。


「フルグラウスの時にスキルを再チェックしろって言ったよな」


桐谷が、静かに、だが鋭い声で言う。


「は、はい……」

「《マジック・ハンド》の効果はちゃんと再確認したのか?」

「あ、あれは補助スキルで戦闘には使えないはずで――」

「使ってるじゃないか」


桐谷がモニターを指差す。

画面の中では、ステラが楽しそうに笑いながら、さらに炎を降らせていた。


「…………」

スタッフたちは、言葉を失う。

そして――


「ああああああああああああああああ!!」

「またかよおおおおおおおおおお!!」

「誰だよこのスキル入れたの!!」


運営本部に、スタッフたちの絶叫が響き渡った。


こうして――

ステラの新たな戦法が、また一つ誕生した。

次は3/9 21時投稿予定

お楽しみに!

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