第060話 極振りヒーラー、第2回イベントの振り返り
第2回イベント「秘境アヴァロンの踏破」終了から一夜明け――。
プレイヤーたちの間では、早くもイベントの話題で持ちきりだった。
宝石集めに苦戦した者。
PKで奪われ、すべてを失った者。
強敵に挑み、文字通り瞬殺された者――。
それぞれの体験談が、掲示板に次々と書き込まれていく。
34 名前:名無しの冒険者さん
イベントお疲れ!
宝石10個以上いけた人、どれくらいいる?
35 名前:名無しの冒険者さん
8個で終了
最後の2個が見つからなくてタイムアップ
36 名前:名無しの冒険者さん
ソロで12個
スクロールと交換できたから個人的には満足
37 名前:名無しの冒険者さん
フレンドと2人で回って11個
パーティ組んで正解だった
38 名前:名無しの冒険者さん
11個はすげぇ
後半、PK怖すぎて動けなかったわ
39 名前:名無しの冒険者さん
PKありのイベントだったから、後半はマジで修羅場だったな
ソロプレイヤーは狩られまくってたし
40 名前:名無しの冒険者さん
俺もPKされた
宝石9個持ってたのに、8人パーティに囲まれて瞬殺された
泣きたい
41 名前:名無しの冒険者さん
8人はえぐい
さすがに勝てん
42 名前:名無しの冒険者さん
ルール上は問題ないからな
文句言えないのが辛いところ
ソロはきつかったな
43 名前:名無しの冒険者さん
逆にPKして宝石20個以上集めたわ
ソロプレイヤー狙えば楽勝だった
44 名前:名無しの冒険者さん
>>43
お前みたいなやつがいるから、ソロがつらいんだよ
45 名前:名無しの冒険者さん
まあ、それもゲームの一部だからな
嫌ならパーティ組めってことだろ
46 名前:名無しの冒険者さん
それはそうと、今回ボス強すぎじゃなかった?
山の頂上から転移した先にいたボスに瞬殺された
47 名前:名無しの冒険者さん
あー、フルグラウスか
あれ、マジで強かったな
48 名前:名無しの冒険者さん
フルグラウス、勝てる気がしなかった
うちのパーティ、全滅したわ
49 名前:名無しの冒険者さん
雷の範囲攻撃が鬼畜すぎる
回避不可能だし、ダメージもえぐい
50 名前:名無しの冒険者さん
動き早すぎなんだよな
近接とか魔法とか関係なく、まとめて薙ぎ払われる
51 名前:名無しの冒険者さん
知り合い同士で構成かなり考えて挑んだって話は聞いたけど
結局、誰も倒せてないらしい
52 名前:名無しの冒険者さん
マジで?
じゃあ討伐報告ゼロ?
53 名前:名無しの冒険者さん
少なくとも俺の周りでは聞いてない
完全に挑戦用ボスだと思う
54 名前:名無しの冒険者さん
俺も3回挑戦して諦めた
55 名前:名無しの冒険者さん
フルグラウスもやばいけど
ベルゼノアも大概じゃなかった?
56 名前:名無しの冒険者さん
ベルゼノア?
そんなのいたの?
57 名前:名無しの冒険者さん
隠しボスっぽいやつ
洞窟奥の転送陣から行ける
58 名前:名無しの冒険者さん
マジか
俺、そんなの見つけられなかったわ
59 名前:名無しの冒険者さん
ベルゼノア、状態異常がきつすぎる
視線合わせただけで
呪い・麻痺・毒・混乱フルコース、考えたやつ出てこいやw
60 名前:名無しの冒険者さん
マジで?
それ、どうやって倒すの?
61 名前:名無しの冒険者さん
状態異常の耐性持ってないと無理じゃね?
俺は開始数秒で瞬殺された
62 名前:名無しの冒険者さん
俺も同じ
視線攻撃も痛いし、解除してる間に次が来る
63 名前:名無しの冒険者さん
状態異常解除スキル持ってないと、まず勝てないと思う
64 名前:名無しの冒険者さん
クリーンセンス持ってたけど、連続で状態異常付与されるから追いつかなかった
65 名前:名無しの冒険者さん
しかもHPめっちゃ高いし、防御力も高い
攻撃しても全然削れない
66 名前:名無しの冒険者さん
あれ、倒した人いるの?
67 名前:名無しの冒険者さん
いるらしい
宝石落とすって話は聞いた
68 名前:名無しの冒険者さん
マジか
でも命かけて挑む相手じゃねぇ……
69 名前:名無しの冒険者さん
そもそもどうやって倒すんだよ
正攻法じゃ無理だろ
70 名前:名無しの冒険者さん
相当尖ったビルドじゃないと無理そう
71 名前:名無しの冒険者さん
フルグラウスもベルゼノアも
難易度設定おかしくない?
72 名前:名無しの冒険者さん
まあ、挑戦用のボスっぽいし、難しくて当然なんじゃない?
全員が倒せたら、それはそれでつまらないし
73 名前:名無しの冒険者さん
確かに
でも、もうちょっと倒せる可能性が欲しかったな
74 名前:名無しの冒険者さん
次のイベントに期待するしかないか
75 名前:名無しの冒険者さん
ところで、砂漠で魔王像見つけた人いる?
76 名前:名無しの冒険者さん
あー、あれな
めちゃくちゃ不気味だった
77 名前:名無しの冒険者さん
何のイベントなのか、まだ解明されてないんだよな
78 名前:名無しの冒険者さん
砂嵐の後に出現するらしいけど、条件が不明
79 名前:名無しの冒険者さん
あれ、ただの落書きなんじゃね?
80 名前:名無しの冒険者さん
いや、あんな精巧な落書きを誰がするんだよ
81 名前:名無しの冒険者さん
謎だな
次のイベントで何か分かるかもしれない
82 名前:名無しの冒険者さん
とりあえず、第2回イベントお疲れ様でした
次も頑張ろう
83 名前:名無しの冒険者さん
お疲れ様ー
次は何のイベントなんだろうな
84 名前:名無しの冒険者さん
次はもう少し平和なのがいいな……
85 名前:名無しの冒険者さん
どうせまた地獄だぞ
86 名前:名無しの冒険者さん
それでも参加するんだけどな
87 名前:名無しの冒険者さん
次も頑張ろうぜ
スレッドが大きな盛り上がりを見せる、その裏側――
運営サイドでも、第2回イベントの振り返りが行われていた。
「……とりあえず、第2回イベントが無事に終わってよかったですね」
若い女性スタッフそう言って、コーヒーを置いた。
「お疲れ様。大きなトラブルもなく終われて良かったよ」
プロジェクトマネージャーの桐谷が、椅子に深く座り込みながら答える。
だが、その表情は晴れない。眉間に深い皺が刻まれたままだ。
「……桐谷さん、顔色悪いですよ?」
別のスタッフが心配そうに声をかける。
「ああ……ちょっとな」
桐谷が大きく息を吐く。そして、手元の資料に視線を落とした。
「第2回イベント、無事に終わったのはいいんだが……フルグラウスに続いて、ベルゼノアまで倒されるとは思わなかった」
室内が、一瞬静まり返る。
「ベルゼノアって……あの、視線だけで状態異常を付与する化け物ですよね?」
若いスタッフが恐る恐る尋ねる。
「ああ。普通のプレイヤーなら、視線を受けた瞬間に詰むように設計したんだが」
「それが……倒されたんですか。誰です?」
「……ステラだ」
「またあのヒーラーか!」
スタッフの一人が思わず声を上げた。
桐谷は戦闘ログを読み進める。目を細め、データを一つ一つ確認していく。
「なるほどな……フルグラウスと同じパターンか」
桐谷が呟く。
「ヒール連打でバリアを限界まで積み上げて、敵の攻撃を受け止める。そして反射ダメージで倒す」
「WIS極振りだから、ヒールの回復量が異常に高い。バリアの上限が……青天井になってますね」
オペレーターが指摘する。
「ああ。それが問題だ」
桐谷が額を押さえる。
「バリアに上限がないから、理論上は無限にバリアを積める。そして高火力の攻撃を受ければ受けるほど、反射ダメージも増える」
「完全に仕様の穴ですね……」
「想定外だったな。ヒーラーが前衛を張って、攻撃を全て受け止めるなんて」
桐谷が深く息を吐く。
「で……どうします?」
若いスタッフが恐る恐る尋ねる。
「ヒール連打のバリア、強すぎますよね。次のメンテで修正入れます?」
「……ああ」
桐谷が頷く。
「何らかの形でバリアに上限を設けることにしよう」
「了解しました」
「それと、バリアに関連するスキルもいくつか検討が必要かもな」
スタッフが頷く。
「……やること、増えるなぁ」
桐谷が疲れたように呟いた。
「でも、プレイヤーが楽しんでくれてるなら、それでいいか」
モニターには、イベント終了後のプレイヤーたちの喜びの声が流れている。
桐谷は小さく笑い、再び仕事へと戻った。
ステラとヒマワリの冒険は、運営側にとっても予想外の挑戦を生み出していた。
――そしてその挑戦は、次の調整という形で、静かに牙を剥こうとしていた。
次は3/8 21時投稿予定
お楽しみに!




